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第6話 ミズガミ様の巫女

 朝になりました。


 一晩寝ると、不思議なモノですね。

昨日のことは夢だったんだ!と大変明るい気分になりましたが。


 例の青い靴をみて現実に引きもどされました。


「ハァ…」


 そんなうまい話はないですよね〜。


 この靴は捨てましょう。

正直、洗っても二度と履きたくありません。


 家の中で捨てるのもイヤです。

これはわたしのテリトリー内に置いておきたくない。


 ゴミ収集車に持っていってほしいところですが、残念ながら今日はゴミの日ではありません。


「うーむ」


 途方にくれていたところ、向かいの家をみて閃きました。


 お向かいのご近所さんは、今どきめずらしい雷オヤジというべき嫌な人です。


 わたしも何度か意味不明なことで怒鳴られましたからね。


 わたしはおもむろに、雷オヤジの庭に向かってポイーッと青い靴を投げ捨てました。


 これで汚染物質の始末と日頃の復讐が同時に果たせました。

気分爽快です。


 学校にいきましょう。





 それにしても、憂鬱です。


 本当に憂鬱です。


 昨夜の“かたつむり”が現実のことだとすると…

ルト子がとんでもないことに首をつっこんでるのは間違いありません。


 問いたださなければならないでしょう。


 チビ蔵くんのことも気になりますしね。 


 それが、憂鬱なんです。



 わたしは、“脇役的存在”なんですよ。 


 脇役とはなにか?


 “やるべきことがない”人のことです。


 主役というのは、使命とか、目標とか、やるべきことにあふれているでしょう?


 でも、脇役にそれはありません。


 脇役は、“自由”で、“気楽”なんです。


 脇役にゃ学校も〜、試験もなんにもない!♪ってか(違うか)。


 その、わたしが…


 ルト子を問いつめねばならないなんてッ!!


 チビ蔵くんの(童貞の)無事を確かめねばならないなんてッ!!!


 死ぬほど面倒です。


 まあ、いっさいがっさい無視を決めこめばいいっちゃいいんですが。


 でも、気になるんだよなあ。





────────





「ルト子」


 朝のホームルーム前。

わたしはさっそく、ルト子に話しかけました。

あまり気は進みませんがね。


 幸い、今日はジェシカら取り巻きはいないようです。


 ルト子は机に座っていて、ジロリとわたしを見上げてきます。


「アンタ、なにやってんの」


 単刀直入に切りこみます。


「なにって?」


「アンタの“お家”、ヤバいじゃん」


「なにがヤバいの?」


 しらばっくれてるんですかね?


 昨夜のこと、言っていいものかどうか…


 ──いや、ここまで足を突っ込んだんです。

正面突破だ!!



「──あの洋館、“動く”じゃん」



 ……………


 ルト子が、ニヤリと笑います。


「…見たんだ?」


「見たよ」


「モブ子にしてはめずらしい」


 ルト子が立ち上がりました。


「美しいでしょう?」


「美しい?」


「あのお方は何よりも美しい…」


 ルト子が歓喜にふるえるように両腕を広げます。


「わたしは、『ミズガミ様』の“巫女”になったのよ!!!!」


「…ミズガミ様?」


 あの“かたつむり”のことでしょうか?


「そこまでは見ていないんだね。

でも、きっと魅せられるわよ。

モブ子も、あの方の美しい“青”を見たら…」


 青…


 なんだか宗教にハマっている馬鹿女のようになっているルト子ですが、ここは釘をさしておかねばなりません。


「やめときなって。

あんなヤバげなのに関わるのは」


「ヤバくないわよ。

そりゃあ、あの方に歯向かうモブ子のような下等生物にとってはヤバいのかもしれないけど?

ミズガミ様に“選ばれた”わたしにとってはヤバくない」


 一拍


「むしろ“福音”なのよ!!!!」


 ウーンこれはダメですね。

のれんに腕押ししてる気がしてきました。


 洗脳されてる人は自分が洗脳されてることに決して気づかないといいます。

ここは話をかえましょう。



「ところで、チビ蔵くんはどうしたの」


「…チビ蔵くん?

ああ…」


 ルト子は一瞬、考えるようにして。


「モチロン、あたしと結ばれたわよ❤︎

モブ子なんかよりあたしの方が100倍イイですう〜って!!

今は、もう帰りたくないってあたしの家にいるわあ〜」


「つまらんウソをつかないで」


「ウソじゃないわよ。なんなら確認してみたら?

彼、今日は学校休んでるから」


 なに、この自信…

十中八九ウソだとは思うのですが、少しゆらぎます。


「チビ蔵くん、隣のクラスだから」


「そうだったの!!!?」


 そんなに近くだったとは…

ていうか同学年だったとは!!!?


 見た目小学生ですからね。

あれほど学生服が似合わない人もいない。


「じゃあ、確認してくる。

すぐにアンタの苦しまぎれのウソなんか暴いてやるから」


「ふふ…

チビ蔵くんにフラれた事実を認めたくないのねえ〜。

でも、現実は過酷よ」


 いちいちイラッとさせる女ですねえ。

ていうかわたしはチビ蔵くんに恋なんかしてないっつーの。


 わたしはルト子に捨てガン飛ばして、隣のクラスに向かいました。





 とはいえ。


 よそのクラスって入りづらいですよねー。

友達でもいればいいんですが、無論いないし。


「うーん…」


 チラチラと教室をのぞきこみます。

チビ蔵くんの姿はみえないようですが…

こうしてるだけじゃわかりませんね。


 ていうかこれじゃ挙動不審者です。

早くなんとかしないと…


「どうしたの?」


 背後から声。


 わたしは挙動不審者的にビクリと体をふるわせ、振り返りました。


 そこにいたのは───


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