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第13話 彼はスーパーマン?

 わたしを助けにきた“正義のヒーロー”…!


 …らしくはぜんぜんない、まるんとした坊主頭に、ちっちゃなシルエット。


 それは、『チビ蔵くん』でした。


「モブ子さん!!! こっちへ!!!」


 チビ蔵くんがジェシカの後方、袋小路の入り口のあたりで叫びます。


「チビ蔵くん!!?」


 今度は本物でしょうか。

まさかここにきての登場とは!?


「チビゾォ〜〜…!!」


 体から煙をふくジェシカが憎々しげにチビ蔵くんをにらみつけます。


「早く!!! モブ子さん!!! そいつ復活する!!!」


「う、うん!!」


 わたしはジェシカの横をぬけ、チビ蔵くんに駆けよりました。


「逃すな!!!! 殺せ!!!!」


 ジェシカが叫ぶと、ヤンキー女たちが迫ってきます。

あのジェシカの姿をみても平然としているということは、この人たちもマトモな人間ではないんでしょうね。


「逃げますよ!!!」


 チビ蔵くんがわたしの手をとって駆けだします。

ヒョオ〜!!ってこんなちまっとした子に手つながれても全然ときめかないけど。

これが王子だったらなあ〜(失礼)。


「『ノア・ポイント』は近い…!

誰も逃げきれやしないのよッ!!!!」


 ノア・ポイント?

ジェシカのクセに妙にむずかしい言葉使ってますね。

まあとりあえず逃げるとしましょう。



 で、逃げているんですが。


 ヤンキー女たち、意外と足速いですね。

ていうか速いとかいうレベルじゃないですね。オリンピック出た方がいいんじゃというレベルです。

なんか4本足になって走ってくる奴までいますね。

人間じゃないですね。


 このままでは早晩追いつかれそうです。


「…モブ子さん、ごめんなさい」


「ふえ?」


 いうと、チビ蔵くんはわたしをひょいっと持ちあげて、“お姫様だっこ”状態になりました。


「わわわ」


 キミの体格でこれはムリでしょ!?

と言おうとしましたが、意外に軽々と持っていますね。

わたし55kgくらいはあるんですが。


「捕まってください!!」


 わたしを抱えたまま、チビ蔵くんが加速します。

加速、さらに加速。もうギューンと。

気づけば、人間の走れる速度じゃないですね。

まわりの景色が飛ぶように後ろへ流れていきます。

新幹線より速いくらいじゃないでしょうか。


 チビ蔵くんは、“スーパーマン”だったんでしょうか?

鋼鉄の肉体とジェット機のごときスピードをもつという。


 ずいぶん見た目パッとしないスーパーマンもいたモノですね。




──────




 駅前のあたりまで戻ってきました。

さすがのジェシカ達も、ここまでは追ってこないでしょう。


 わたしは、ひと息つきました。


 さて。


「チビ蔵くん…」


 彼は思った以上に謎の人物のようですね。

ききたいことは山ほどあります。


 チビ蔵くんもそれは承知のようで。


「あ〜…とりあえずどっか店に入って落ち着きましょう」


 そうですね。立っているのも疲れましたし。


 長くなりそうですしね。





 わたしとチビ蔵くんは、ファミレス(ゲニーズ)に入りました。


 そういえば、マック食ったあとデザート食べてませんでしたね。

なので、わたしはホットケーキを注文しようとしたのですが。


 重大な事実に気づきました。


 明らかに炭水化物とりすぎですね。

わたしはこれで健康は気にする方なのです。

なので。


「あ、注文お願いします。

ホットケーキと、ビーフステーキ300g、それにシーザーサラダで

あ、あと鶏のから揚げも」


 これでタンパク質やビタミンもとれて栄養バランスもバッチリというモノです。

わたしの健康は安泰ですね。


「ずいぶん食べますね。

おなかすいてたんですか?」


「いや全然。さっきマック食ったし」


「ハァ」


 さて、詰問を始めましょうか。




「まず、最近の方から始めましょうか。

さっきの攻撃は何? こう光の線がキューンってやつ」


「ああ、アレですか。

これです」


 チビ蔵くんが銃を取りだし、テーブルに置きました。


 いけません!!! 銃刀法違反です。

こんなのを警察に見られたらどうなるか。


 ──と、思いましたが大丈夫そうですね。

たぶんオモチャか何かにしかみられないでしょうから。


 その銃は、全体がシンプルな銀色で。

全体に丸みをおびた独特の形状をしています。

尖っている部分や角ばっている部分がひとつもない感じ。

そして小さいですね。女子として一般的なサイズであるわたしの手のひらにもスッポリと入りそうです。


「持ってみてもいい?」


「いいですよ。あ、でも、あまり強く握らないでください。

持ち手の部分を強く握ると発射されるようになっているんです。

もっとも今は安全装置がかかっているので撃てないでしょうが、一応ね」


「ふむ」


 持ちました。


 見た目はオモチャでも、持ってみれば本物らしい“重み”がある。

──のかと思ったのですが、まったくそんなことはなく。

軽いですね。まるで発砲スチロールでも持っているようです。

持っている気がしません。


「本物なの?」


「本物ですよ。さっきみたでしょ?」


 この軽さで、あの威力か──

本当なら、明らかに現代科学の域ではないですね。


「それは『1兆度熱線銃』といいましてね。

フル出力で撃てば山ひとつくらいなら蒸発させられます」


「ゼットンかな?」


 山ひとつって、さりげにとんでもないこと言ってますね。

まあ、この武器のことについてはよくわかりました。

次いきましょう。



「さっきわたしを軽々と持ち上げたりジェット機みたいに走ったりしてたけど、チビ蔵くんはスーパーマンなの?」


「ああ、アレですか。

それはコレです」


 チビ蔵くんが自分の胸をバンと叩きました。


「いや、コレといわれても」


「見えないでしょうが強化スーツを着てるんですよ。

『戦闘力1万倍スーツ』といいましてね。

筋力や頑丈さ、走力等が約1万倍になるんです」


「パーマンかな?」


 またトンでもないモノがでてきました。


「ボクがスーパーマンかといえば“ノー”ですね。

ボク自身はてんで弱っちいので。

同じ武器を使って戦えば、モブ子さんの方がずっと強いと思いますよ」


「ふーん…」


 どうやら彼が謎アイテムの数々を持っていることはわかりました。

ドラえもんか何かがついているんでしょうか?

次いきましょう。



「チビ蔵くんはここ数日どこに行っていたの?

ルト子とはどうなったの?」


「………

ルト子さんですか…」


 チビ蔵くんが苦い顔になりました。


「もう4日くらい前ですか。

モブ子さんに告白したあと──」




〜〜〜〜〜〜



「チ〜ビ蔵くんっ❤︎」


 女の人の声。


 モブ子さんかな?と思って振り返ったが、違った。


 もっとハデな感じの人だった。

うっすらと茶色に染めて、くるんと巻いた感じの髪の毛がなかなかかわいい。

その頰は桃色に染まり、唇は淫美な笑みをたたえている。


 この人は──実は、知らないでもない。

『ルト子さん』だ。モブ子さんの親友の。


 ボクはこの恋を確実に成就させるため、モブ子さんの身辺調査をしていたからね(断じてストーカーではない)。

彼女のまわりの人間については把握しているのだ。


 しかしルト子さんといえば、こんな普通にかわいい感じじゃなくて、もっと根暗そうでマニアックな感じの人だった気がするのだが。


 ルト子さんが、にゅるりとボクの左腕に両腕を絡めて、カラダを密着させてくる。


「わわわ」


 おっぱい当たってるよ〜。


「あたしィ、チビ蔵クンのこと、ずっとかわいくてイイなって思ってたの。

これからあたしの家にこない?」


 ムムムッ!! これは…!!


 ボクにもついに、“モテ期到来”であろうかッ!!!?


 無論、ボクの本命はモブ子さんなのだが、しかしせっかくお家にお誘いしてくれてるのを断るのもワルいなあ〜、なんて。

デヘヘ。



 ──その瞬間。“匂い”がした。



 この、匂いは──

“ヤツ”の──!!?


 ボクは跳ねるようにルト子さんから離れる。

間違いないぞ、ルト子さんからかすかに“ヤツ”の匂いがする──!!


「ルト子さん、アナタは──!」


 ルト子さんは、突然離れたボクにとまどっているようだ。

そんな彼女に、ボクは突きつける。


「──“何”に、取り憑かれているんですか…!!?」


 ──ルト子さんの表情が変わった。


「オマエ…!!!」


 ──斬撃。


 ルト子さんが下から上へと、“爪”でボクを斬り上げる。


 バックステップ。

紙一重でかわすことはできたが、ボクの制服の一部がちぎれ飛んだ。


 危ない…!

一応、強化スーツを着ていなければ、今ごろボクは体が6つに分かれていただろう。


 ルト子さんの右手には、凶悪な爪が5本、ギラリとぬらっている。

いや、爪だけではない。手自体が倍以上の大きさになっているような…?


「何者だ!!!? あの方のことを知っているとは…!!!」


 さけぶルト子さんの瞳は爬虫類のそれのようで。

さっきまでボクを誘惑してきた美少女の面影はない。


 しかし、この化け物ぶり…

ボクは、確信した。

この人の背後にいるのは、まちがいなく“ヤツ”だ。

 

 “ヤツ”は、生きていたんだ──!!!


 だとすれば、こんなことしてる場合じゃない。

ボクは、逃げ出した。


「待て!!!!」


 待たない。

ボクが戦うべきは彼女じゃない。“ヤツ”だからだ。

ルト子さんも“ヤツ”の被害者なんだろうから。


 ルト子さんが地を這うような姿勢になり、人間とは思えないスピードで追いかけてくるが、さすがに強化スーツを着たボクには追いつけないだろう。


 こうなった以上、ボクが“ヤツ”を倒さなければならない。

──倒せるだろうか? “ヤツ”は想像を絶する怪物だ。


 …いや、やるしかないんだ。モブ子さんを守るためにも。

──『ネルネーさん』達のためにも…!!


 戦うには、武器が必要だ。

まずは、武器を準備しないと───



〜〜〜〜〜〜




「それから、ボクは“船”に戻って──

今日まで“ヤツ”と戦うための武器を修理したり、メンテナンスしてたワケです」


「“船”?」


「ああ、こっちの話です」


「ふーん…」


 まあそれはおいおい。


「“ヤツ”っていうのは?」


「ここまで巻き込まれたならモブ子さんも知ってるでしょ?

あの“忌まわしきブルー”ですよ」


「“かたつむり”のこと?」


「“かたつむり”?

…ああ、たしかにそんな感じはあるかもしれませんね。

じゃあこれからはそう呼びましょうか」


「うん」


 さて。




「いよいよ最後の質問というか、むしろ本題に入ろうと思うんだけど」


「はい…」


「さっきの回想でルト子も言ってたけど。

チビ蔵くん。キミは結局───

“何者”なワケ?」


「………

それは───」


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