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1. 出会いは不法侵入

 突如として思いつき、投稿。

 色々忙しいのに、何やってるんでしょうか僕は。


 今夜も哀れな罪人の魂が、輪廻の淵よりこぼれ落ちる。



「待ってくれ、悪気はなかったんだ! 本当なんだよ、信じてくれ!」


 長身の男の前でそう無様に喚き散らすは、窃盗59件、恐喝74件、強盗17件、婦女暴行28件、殺人未遂16件、殺人25件の大犯罪者。


 21世紀の日本において、よくぞそこまで犯罪を起こして捕まらなかったな、と逆に感嘆されるくらいの極悪人だ。


 もちろん、無関係な他人の視点からすると、という話だが。

 被害にあった者、その家族・親類・友人からしてみれば、その罪を償うに足ると感じる死刑の回数は、片手の指くらいでは収まらないだろう。


「ちっくしょう! なんでお前は!? なんでお前は死なないんだ!??」


 どこかの倉庫の片隅で、積み上げられたダンボールの側まで追い込まれた男は、欠けたナイフをブンブン振り回しながら、嘆く。


「そんなチャチな刃物如きで、俺を殺せるはずがない。一部の界隈なら、誰でも知っている有名な話なのだがな」


 どんなに欠陥を抱えたナイフだろうが、かの大犯罪者に掛かれば一流の警察官に対しても致死的な凶器、となるはずだったが。


 長身の男は恐れることなく、犯罪者に向かって淡々と歩みよる。


「来るな・・・。来るなあああああアァァァァ!!!!」


 最後の足掻きとばかりに叫び声をあげながら、ガムシャラに突進する、犯罪者。

 幾多もの犯罪を成功させてきた、卓越した彼の体捌きは、今や見る影もない。


「つい今しがた、悪気はなかったとか呻いていたな。貴様は」


 迫り来るナイフの刃を左手で握りつぶし、右手では犯罪者の頭を軽く押さえて。


「信頼出来る俺のビッグデータによるとだな。悪気のない奴は、追い詰められたときには基本的にナイフなんか持ってない」


 ふぅっと右手を引いて、ボワァッとした白い何かを、犯罪者の頭から抜き出した。


「グガアアッッッ!!? ヤメロオオオオッォォォ!!??? ヤメテクレェエエエエエエェェェ!????? オレニワマダ、オカシタイオンナガイルンダァァァァ!!!!」


 金切り声を上げるのは、犯罪者の体の方ではなく、長身の男に引き抜かれた白い何か。



 魂。



「見下げ果てた遺言だな。特級神罰(・・・・)の依頼が為されるのも頷ける」


 聞くに堪えない言葉を発し続ける犯罪者の魂に対し、長身の男は冷たく言い放った。


「さて、時間ももったいない。手早く処理するとしよう」


 長身の男の足元から、ブオンと光る魔法陣が、展開される。



「イ、イヤダアアアアアアアァァァ、オワリワイヤダアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!????????」



「貴様の罪は、償うことすら赦されぬ。輪廻の輪より、一片も残さず消滅するがいい。『永劫破滅』」



「グ、グゲオバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァ・・・・・・・・・」



 犯罪者の魂は青白い炎に焼かれ、何も残さず消えてゆく。


 同時に、白目を剥いて倒れていた肉体の方も、さらさらと、灰となって崩れていった。

 もうあの犯罪者の影も、形もない。


「ああ、咎人よ」


 汚い色をした灰から身を翻す長身の男が、この場で最後に言い残すは。



「お前が消えても、失われた心と命は、帰ってこないのだぞ・・・」





×××××××××




 東京某所、夜間。

 とある賃貸アパートの一室。


「ンク、ンク・・・・・・、プハァー・・・」


 安い缶ビールを勢い良く飲んだ後、酒臭い息を吐く若い(?)女。


「あぁ〜、貝ワサビおいしい〜・・・」


 近所のスーパーで購入してきた酒のつまみらしきものを、酔っていると評するに相応な箸裁きで掴み、口に入れる。


 狭い部屋は洗濯していない服や読みもしないのにもらったチラシで溢れかえり、まさにゴミ屋敷の様相を呈していた。


「えーと、リモコンどこー・・・」


 テレビを見ようと思い立ったのか、女はリモコンを探す、が。


 散らかりまくりの部屋は、いざ必要なときに必要なものを覆い隠すもの。

 身の回りのガラクタをひっくり返して探索するが、リモコンはどこにも見当たらず。


 徒らに自らのお部屋を、さらなる汚部屋へと仕立て上げるのみだった。


「あー、コノヤロー」


 唐突に立ち上がってグイッと背伸びし。

 ドタッとベットに倒れこむ。


 そのまま、女の体はピクリとも動かなくなった。



 五分経つ。



「あーあー・・・ゲップ」


 モゾモゾと体を動かし大きな溜息をついたと思えば、盛大にゲップをかましやがる。

 そして。


「夫のいる生活に、戻りたい・・・」


 愚痴るような一言が、女の口から漏れ出た。




「ふむ。こんな女に夫どころか、彼氏すら出来るとも思えないが。虚言癖があるのかとも思ってしまったが、データによると確かに結婚歴があるみたいだな。お前の主張するところは、『夫の存在さえあれば、こんなだらけ切った生活なんかしないで、もっとメリハリのある、立派な出来る女として暮らしていけるのに!』という辺りか? 下らない妄想であるな」




 非常に軽くではあるが、女の心を推察してみる。



「・・・え?」


 女が、非常にぎこちない動きで、突っ伏す体を起き上がらせた。

 彼女の顏が、漸くこちらを向いて。



 目が、合った。



「ぎ、ぎぃやああああああああ!」


 驚愕するような叫び声を上げて、床に散らかった下着や何やらを無遠慮に踏みつけながら、ドタドタと玄関に向かって走る。


「侵入者ああああ! 不審者ああああああっっ!!???」


 ドアを開け、近所の人にも聞こえるようにか、うるさい騒音を出す女。

 まったく、失礼な奴である。


「なんだなんだ」

「うるさいな、こんな夜更けに」


 ぞろぞろと、隣室の住民たちが部屋から出てくる音がする。

 無駄なこと(・・・・・)をするものだ。


「私の、私の部屋に、侵入者が・・・・・・」

「あん?」


 五、六人ほどが、女の部屋を覗き込み、声に出すは。


「誰もいねえじゃねえか」

「え・・・、いや、そんなはずは・・・」


 女も、自分の部屋をジロジロと眺めて。


 またもや俺と、目が合った。


「ひっ! そこに、そこにいるじゃない!? なんなのあなたたちの目は!? 節穴なの!?」


 怒りながら、自分の方が正しいと、そう主張する。

 けれども。


「なんだとアマ? 幻覚でも見てんのか? 病院で診てもらえ。お大事にな」

「ふぁーぁ、俺は眠いし、明日も仕事があるんだ。寝かせてくれ」


 興味を失ったように、フラフラと解散していく隣人たち。


「ちょ、ちょっと待ってよ! 何で嘘、本気で見えてないの・・・?」

「そうだ女。本気で見えてない」


 優しい俺は、見捨てられたように悲しげな女をフォローすべく、声を掛けてやる。

 ホント何て優しい俺。


「ヒィッ!? 喋った!?」


 いや、さっきも喋っただろう?


「な、何なのあんた!? はっ! ひょっとして死神? 私の命を刈りに来たって言うの!?」


 ジリジリと後退りながら、何とも蒙昧なことを()かす女。


 何を言っているのか?

 この俺の洗練されたフォルムが、あの低俗な死神どもと一緒に見えるというのか?


「それは失礼というものだぞ、女。まぁいい、寛大でありかつ至高の存在である俺は、貴様の言葉、許してやろう」

「はい? 頭イってるの?」


 訳が分からない。

 俺の言葉を聞き、そんな顔をする女は、益々失礼な奴である。



 バツイチ(・・・・)なのも納得だ。



 まあいい。さっさと用向きを告げるとするか。


「頭はイってないぞ。むしろ俺ほど頭の完成している存在はこの世、どころか神界含めているだろうか、いやいまぁい!!」


 ビシィッと最高のポーズを決めて、俺は宣言する。

 おい女、何故そんな呆気に取られた顔をするのだ。

 そこは拍手喝采で迎えるところだろうが。


「悦べ、歓喜せよ、女! そんな素晴らしい俺が、貴様の願い、叶えに来てやったのだぞ!!」

「ね、願い・・・?」


 戸惑うように返してくる女に、俺はフッと神々しい微笑を浮かべる。


「そうだ、貴様は言っていたではないか。『夫のいる生活に、戻りたい・・・』、と」


 女は、顔をカァッと赤くした。


「なんなら録音もしたぞ」

「フザケんなぁ!!」


 ガアッと、歯を剥き出しにされてもな。

 品性が足りてないと憐れむばかりである。


 よし、俺のザ・品性という奴を、見せてやろうか!!



「さて、録音も高音質バッチリで、いつでも全国ネットにバラまける貴様の願い、確かに聞き届けたぞ!」

「待て、ちょっ、マジでフザケんな、録音レコーダーどこだぁぁぁ!」


 そう、夜更けにもかかわらず、周囲を憚らぬ勢いの大声製造機に対し。

 とりあえずの礼儀として、俺の、仮初めの(・・・・)正体を名乗ることにしよう。



「この俺、『再婚(・・)』の天使様がなぁ!」



 この名乗り、実は非常に遺憾ではあるが。

 とにかく俺の初仕事の火蓋は、これで切って落とされたことになろう!







 因みに、録音したというのは嘘だ!


 勢いで小説って書くもんじゃないね。

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