表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/12

聖女への風評被害

 あの女が、俺やイクセルに付きまとうようになってしばらくがたった頃、昔からの仲であり、護衛対象でもあるルンガーラに、よからぬ噂が出回るようになっていた。

 その頃、何故だか不明だが、あの女が嫌がらせをされるようになっていたそうだ。寧ろ、今まで婚約者のいる相手をはべらせておきながらそういうことが起こらなかったのが不思議だが。

 そして、俺とイクセルに向かって、「もしかしたら……ルンガーラさんが」とかいってきていたが、そんなわけがないことを俺たちは知っている。そもそも聖女として、監視の目の中にいるルンガーラがもし仮にあの女に嫌がらせでもしたというのならばすぐに露見する。

 そのことも分からずにルンガーラがなどといっている段階で、馬鹿だと思う。そしてなぜか俺やイクセルがルンがーラではなく、あの女を庇うと思っているのか意味が分からない。

「……表向きには私に対する敵対心はないみたいだけど、ソニアさんは私のことを貶めようとはしているようね」

 表向きは仲良くしながらも、貶めようとする。

 そんな性格が悪いことを、姉さんの姿でやっているあの女への好感度は益々下がっていく。

 そもそも、ルンガーラのことを貶めようとしている奴になんで俺が好いていくと思うのだろうか。

「俺の過去も知っているみたいだしな……というか、何で護衛の俺たちがルンガーラの味方をしないと考えているのか」

 イクセルのいうとおり、本当にそうだよ。なんで護衛の俺たちが昔からの仲であるルンガーラより優先しようと思うのか。本当意味が分からない。

「……ルンガーラよりも、ソニア・カーヴァンクルの方が学園内では人気があるわ。ソニア・カーヴァンクルがルンガーラがやっているかもしれないとほのめかしているから、ルンガーラへの評判が少し下がっているわ。あの馬鹿たちが騒ぎ立てているからもあるけど」

 シェニーが不機嫌そうな顔をしている。確かに、あの女はこの学園内で人気者だ。生徒会としての実績もある。だからこそ、学園内での地位は高い。信頼もされている。今までこんな風に人を貶めようとあの女はしていなかった、いや、おそらくしていたとしても露見していなかったのではないかという調べはついている。

 あの女の周りで少しだけ不自然なことは調べたら起きていた。自分で貶めるように行動しながら、貶めた相手を救うような行動をしていたのは調べた結果確認出来た。ルンガーラ相手にもそういう手を行おうとしているのか、それとも、本当にルンガーラを貶めようとしているのか、どちらにせよ、放っておけることではない。


 俺たちがそんな会話をした翌日。


 あの女が階段から落とされたらしい。そして、怪我をしたそうだ。そして、その階段から落とした女子生徒は捕まり、ルンガーラの指示で落としたなどといっているらしい。

 いやいや、ルンガーラが何をどう、行動したかは全部監視されている。聖女として相応しくならなければならない。その重圧がルンガーラには常にかかっている。

 あの女は何をどう考えて、ルンガーラに罪をきせようとしたのだろうか。そもそもルンガーラがそんなことをする意味はない。そして、あの女は俺が弟であることも気づかず、俺のことを落とそうとしている。俺のことを恋愛的な意味で落とそうと考えているらしいあの女は、カーヴァンクル公爵から何とも言えない目で見られているだろう。というか、公爵家のものが気づいて、実の姉が気づかないというだけでもアレなことだしな。

「――――聖女・ルンガーラ、貴様はソニアのことをねたんでいた。そうだろう、だからこそ、逆らえない一般生徒に対し、脅しをかけてソニアのことを突き落した!!」

 何だか高らかに宣言をしている生徒会長には、正直呆れる。そして、どんな証拠があってルンガーラにそんなことを言い張っているのだろうか。階段からあの女のことを落とした女子生徒の供述だけ? だとしたら馬鹿だろう。

 ちなみにここは、講堂だ。急に全校生徒が集められた講堂。正直何かやらかすだろうなと思いながらここまでやってきたわけだが、いきなり全校生徒集まった瞬間、声をあげた生徒会長。

 というか、急に生徒会が全校生徒集めたり勝手にやって、聖女を断罪とかし始めているから、教師たちが慌ただしくしている。青ざめているものが多く居るけど、それは無視か。生徒たちもざわざわしている。

 ルンガーラは、平然とした態度で前を見ている。

「私は、そのような事をしておりません。そもそも、どうして私か、ソニアさんをねたむのでしょうか?」

 心の底から不思議だとでもいうように、ルンガーラは言った。

「ソニアが美しく人気者だからに決まっているだろう!! 自身の護衛である二人がソニアに惹かれているのが許せなかったのであろう!! 聖女とは名ばかりでなんという性悪か」

「いやいや、ソニア・カーヴァンクルに俺は惹かれてねーよ」

 生徒会長の言葉に、ぼそっと隣でイクセルが突込みを入れていた。

「そもそも聖女などという崇高な存在にはソニアの方が相応しい。ソニアの心は美しい。ソニアは治癒魔法の特性があるのだ。カーヴァンクル公爵家は治癒魔法の特性が高い家であるし、ソニアの方が相応しいに決まっている。少なくとも、誰かを貶めるために行動するものが聖女であるのは認めるべきではない!!」

 その言葉そっくりそのまま返したい。

 後ろ見てみろ、椅子に座らされ、甲斐甲斐しく面倒を見られているあの女笑ってるからな?

 

 そんなことを考えながら、俺は立ち上がった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ