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気づかない姉と勘付く者

 ルンガーラとシェニーと合流してから、俺とイクセルは、先ほどの件を告げた。ルンガーラとシェニーは何とも言えない顔をして、警戒したほうがいいかもしれないとも言っていた。

 さて、俺をイクセルと思って近づいてきた近づいてきたあの女は、神殿の諜報機関が動いてくれていたようだが、ソニア・カーヴァンクルは「まさか隠しキャラ?」などとよくわからないことを言っていたそうだ。よくわからない。というか、俺の名前を知ったようだが、それでも弟かもしれないなどと考えていない様子に少しだけがっかりした。そのがっかりした気持ちに、俺はなんだかんだで、もしかしたらあの女が俺の大好きだった姉さんに戻ってくれないかと期待していたんだろう。

 ああ、あれは、やっぱり姉ではない。俺の大好きだった姉さんは、やっぱりもういないのだ。それをまた実感して、少しだけ胸が痛んだ。

 そして相変わらず意味が分からないあの女は、俺とイクセルに目を付けたのか、俺達によく話しかけてくるようになった。

 あれだけ男に囲まれているというのに、満足していないのだろうか。俺やイクセルに媚びたような態度を取るあの女を見ると、俺の大好きだった姉が貶められていくようで何だか嫌だと思ってしまう。俺の大好きだった姉さんは、あんな風な存在ではなかった。優しくて、俺の事を大事にしてくれていた。

 あの女を見ていると無償に苛々してくる。そんな俺の態度に、俺があの女を好いてきているのではないかと、噂をするものもいるらしい。どこが、好いている態度に見えるんだ。

 世の中には、好きな人間に意地悪をしたりするものもいる事は知っているが、俺は好きな相手にそのような態度はしない。

 あの女、俺にいつも話しかけてきて、俺のことを知ろうとしてくる。俺に触れようとしてきたりもする。仮にも貴族令嬢が、異性に不用心に触ろうとするのはどうかと思ってならない。貴族令嬢ではなくてもはしたないといわれるのに十分な態度だ。ソニア・カーヴァンクルは確かに人気者で、心やさしい少女として知られているらしい。しかし、一部の者からはよく思われていない。―――それは当然、ソニア・カーヴァンクルの周りに侍っている連中の婚約者だとか、そういうものたちだ。というか、婚約者がいながらも、一人の女性に愛をささやくとか、いろんな意味でやばい。普通に考えて、正気でない。

 色々と問題のある生活を送っているので、行動を監視されているとの情報も入ってきているが、やつらは監視されていることなど、一切考えていないようだ。あの女に愛をささやいている様を見せ続ければそのうち、婚約破棄とかされるのではないかとかは思っている。あの女に真実の愛というよく分からないものを、抱いているらしい。真実の愛なのよ、ソニア様は愛されて当然の方なのなどと、あの女の信奉者はいっていたが、正直そんな風な愛情ならさっさと婚約者を解放して、あの女と向き合えよと思う。

「……ニールの姉ちゃん、本当にニールに気づかねぇんだな」

「ああ……」

 気づかない、あの女。弟であるかもしれないなどと思わずに、よくわからない隠しキャラがどうたら口にして、俺を口説こうとし来るあの女。まず、姉さんならこんな風に複数の男を囲おうとはしないだろう。例えば、男に大勢に告白されたとしても一人一人と向き合って、一人を選ぶだろう。こんな風に複数の人間に思わせぶりな態度など姉さんなら絶対にしないだろう。

「やっぱり、あれは俺の知っている姉さんではない」

「ニールの姉ちゃん、突然、人が変わったっていってたもんな」

「ああ、突然だ。母さんに酷い態度を取るようになって、俺と母さんを置いていった。そんなあの女が母親と弟を亡くしたかわいそうな令嬢とか、ふざけんなと思う」

 あれはもう、俺の知っている姉さんではない。姉さんは、突然別人になってしまった。あれは、姉さんではないと、俺は断言が出来る。

 ―――見た目は姉さんでも、中身は姉さんなんかじゃないのだから。

 あの女は相変わらず俺とイクセルにちょっかいをかけてくる。

 うんざりしながらもかわしていく日々。




 そんな日々の中でカーヴァンクル公爵家のものが接触してきた。



「俺に何か、用でしょうか」

 そう問いかけた俺に、接触してきた男はいった。

「貴方は、ソニア様の……弟ではありませんか」

「……どうしてそのように思う?」

「貴方は、当主様に似ております。それに、ニールという名前はソニア様の口からきいたこともございます。上級神官騎士に上り詰めるまでの上質な魔力を保有している点からも、そのことが考えられます」

 カーヴァンクル公爵家に仕えている男はそんな風にいった。俺は思わずおかしくなった。あの女は一切気づかないことを、こんな風に少しでも情報を知っていたらわかるのだと。

 本当にあの女が、弟を亡くしたことを引きずっているのならば、俺のことに真っ先に気づくはずなのだ。

「もし、そうだったら?」

「―――当主様は貴方様に会いたいとお望みです」

「そうですか。俺は会う必要はない、と思っていますとお伝えください」

 正直、母さんが居ながら再婚をしたり、姉のいう事を鵜呑みにして俺を探しもしなかったそんな父親に良い感情は抱いていなかったから、それだけいってお帰りいただいた。





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