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学園入学と、姉。

 聖女ルンガーラと共に、学園に入学するのは俺を含めて三人である。少ないといわれるかもしれないが、ルンガーラがあまり一般の生徒と変わらない生活をしたいといっていたのもあって、そうなった。それに学園自体の警備が厳重なのもあるが。

 上級騎士なのは俺だけで、後の二人は年齢の関係で中級神殿騎士と中位神官である。二人とも俺とルンガーラと一緒に神殿で学んできた存在で、帰心が知れている仲だ。

「ここにニールの姉ちゃんいるんだっけ」

「ああ」

 幼い頃からの仲である彼らは、俺の事情を知っている。知った上で他にはもらさないでくれている大事な仲間だ。

 ルンガーラが学園の門をくぐる。俺達三人はそれを守るように移動する。

 ルンガーラは、聖女という存在として知られているから周りから注目を受けている。俺たちは、入学式のある講堂へと向かう。

 講堂へと入って、席へ向かう。入学式の席は、クラスごとに分かれている。ルンガーラは魔術科だから、中位神官と一緒のクラスだ。俺と中級神官騎士は、騎士科だからクラスは違う。昼休みとかの度に向かいに行くようになっている。

 入学式は、ありきたりなものだった。

 つまらないな、と思いながらも俺は聞いていたわけだが、目を惹かれたのは、生徒会のメンバーが登場した時である。

 メンバーは、男五人、女一人。まずその段階で、どういう割合なんだろうとは思った。俺の姉が生徒会メンバーに入っていた。男五人は異様なほどに顔立ちが整っていた。それもあって、周りの生徒たちがそれなりに騒いでいた。姉のことを見て、騎士科の男子生徒たちも騒いでいた。

 姉と目が合って、何故か、目をキラキラさせていた。意味が分からない。俺に気づいた? 俺のことを死んでいると思っているのならば、おいていって見殺しにした俺が生きていると知って、あんな顔をするだろうか? それとも上級神官騎士だという紋章を付けているからとかあるのだろうか。俺は上級神官騎士としてここにいるから、上級神官騎士の紋章を付けている。その証目当てでよってくる人間というのは、それなりに多くいる。地位目当てで近寄ってくる人間は多いのだ。

 母親のことをどうせ死ぬからと言って出ていったあの人間が、地位目当てで近寄ってくるということもあるのか……と思うと何とも言えない気持ちになる。

 俺は幼い頃、姉のことが大好きだった。大好きだった姉が変わってしまって、結果、俺と姉の道は分かれている。母さんが例えあの時亡くなったとしても、姉さんが変わらなかったら、きっと姉弟仲良く今でも暮らしていたんだろうか。姉さんは、昔の姉さんに戻っていたりしないんだろうか……そう、少しだけ思ってしまったのは、俺が幼い頃の姉さんが大好きだったからだろうか。姉さんが変わらないでいてくれたら———って考えても仕方がないことを何度も何度も馬鹿みたいに考えてしまっていた。

 入学式が終わって、ルンガーラが中級神官と一緒に教室に向かうのについていく。ついていって送り届けてから俺と中級神官騎士は、教室に向かうことになっていた。

 騎士科の一年の教室に向かってから、集めようとしなくても姉の情報は入ってきた。

 騎士科の生徒達が、姉のことを美人だとか優しいとか噂していたから。母親と弟の死に心を痛めていて、命日にいつも祈りをささげているとか聞いた時は鼻で笑いそうになった。

 そんなことをやる人間が母親をどうせ死ぬからと放っておいたりはしないだろう。まだ死んでもいなかった俺と母親をおいてディガ様というカーヴァンクル公爵の騎士に会いに行くことを優先したりはしなかっただろう。

「―――心優しい、少女ねぇ。ニール、凄い反論言いたそうな顔」

「……まぁな」

 中級神官騎士、イクセルの言葉は俺はそう答える。

「まぁ、俺もニールに聞いてなきゃ、あの先輩のことそういう目でしか見れないかもしれないけどな」

「……ああ」

 あの姉は、不思議なことにあるとき、母さんが死ぬと断言していた。やっとことが起きたといった態度をしていた。そういう未来予知のような能力でも姉は持っているのだろうか。分からない。分からないけれど、俺は、姉が同じ学園にいることが正直不安だった。俺はルンガーラのことを大切に思っている。

 ルンガーラと出会って、姉が予想外の行動でも起こすのではないか。そして俺を見て目をキラキラさせていた姉が、どういう接触をしてくるのか、正直わからなかった。

 

 そして、その不安は的中した。姉は、俺に話しかけてきた。



 それは、俺とイクセルがルンガーラの教室へと向かおうとしていた時のことだった。俺たちの前から、歩いてくる集団があった。それが、姉と生徒会だった。女一人を男数人が囲み、ご機嫌をとっている様子は見ていて不思議だった。そもそもあの生徒会の連中は、婚約者がいたと思うのだが、姉にあれだけ気がある態度をしていていいのだろうか。そんなことを思った。こちらから話しかけることは考えていなかった。

 横を通り過ぎようとしていたのだが、

「ねぇ!!」

 姉は、俺に向かって話しかけてきたのだ。





 

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