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少女の幸福と悪夢。

 私は、幸福の中に居た。

 私は、何故なら私はソニア・カーヴァンクルになれたから。

 ソニア・カーヴァンクルは、乙女ゲームの世界のヒロインの名前だった。私が大好きだったゲームの世界、そこに私はこれたのだというそれを実感した時本当に嬉しかった。

 流行病でなくなるソニア・カーヴァンクルの母親と弟。

 そして、ソニアという名前。

 私は自分がソニア・カーヴァンクルだと知れた時、私はヒロインで幸せになれるんだと思ってならなかった。だってソニア・カーヴァンクルは、必ず幸せになる存在だったから。

 自分がソニア・カーヴァンクルだと気付いた私は、どうせ死んでしまう母親や弟に構う暇は一切なかった。だってそうでしょう? この母親と弟は死んでしまう存在だもの。それよりも、私が幸せになることを考えることが一番良いでしょう? 私は幸せになるの。

 そう思うと嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。

 流行病が起こって、実家に引き取られて、私は幸福の真っただ中にいる。優しい攻略対象たちや父親に囲まれて、甘やかされて、前世では考えられなかったようなお嬢様な暮らしを私は送ることができて。


 私は自分が幸せになることを疑っていなかった。


 聖女・ルンガーラが、嫌がらせをしてこない。あの女は我儘で、聖女として相応しくないはずなのに。だからこそ、ソニア・カーヴァンクルが聖女に相応しいとされるのに。心優しい、ソニア・カーヴァンクルが。

 それなのに、嫌がらせをしてこない。だから自演した。だってそれが正しいから。それがあるべき世界で、ルンガーラが嫌がらせをしないのがおかしいから。

 なのに。

 ――――俺は、おいてかれたんですよ。他でもない、貴方に。姉さんの姿をしている、貴方に。

 攻略対象のはずの上級神官騎士がそういった。ニールが。だって上級神官騎士は、ソニア・カーヴァンクルの攻略対象で、それでいて我儘な聖女様にうんざりしているはずで。だというのに、ニールは、聖女であるルンガーラを慈しむように見ていて。そもそも、上級神官騎士はイクセルという名前だったはずなのに…。元からおかしいなとは思ってた。でもちょっとした違いなのだからと思ってた。

 なのに、弟?

 意味が分からなかった。

 だって、ソニア・カーヴァンクルの弟は死んでいるはずだもの。

 だって、それが正しいのだもの。

 ソニア・カーヴァンクルの弟は…死んでいるはず。なのに、生きている。それも上級神官騎士として。そして聖女付きの者は私のことを非難している。

 どうして?

 ここは、私にとって、ソニア・カーヴァンクルにとって優しい世界のはずだったのに。顔が青ざめているのがわかる。

 どうして、と私は予想もしなかった出来事に頭が痛くなってきた。気分が悪い。だって私はヒロインなのよ。乙女ゲームのヒロインのソニア・カーヴァンクルなのよ。その私がこんな結果になるなんておかしいじゃない。ヒロインは幸せにしかなれない存在なのに。幸せが約束されている存在のはずなのに。なのに、どうしてこんな目で見られているのか私にはさっぱり分からなかった。


 そしてふらふらした私は、舞台の上から落ちてしまった。



 そして目が覚めたら———、

「601号室の患者さんが目を覚ましました!!」

 声が聞こえた。

 私は何が何だか分からない。患者さん? 真っ白な天井が映る。ここは、どこ? 私は、ソニア・カーヴァンクル。愛されている、ヒロイン。

 な、はずなのに、どうして、黒い髪が目に映るの?

「篠原さん、目が覚めたのですね、良かったです!!」

「………え」

 声が漏れる。私のかすれた声。

 篠原、っていうのは、私の前世の苗字のはず。どうしてそんな名で。私はソニア・カーヴァンクル。なのに、どうして、前世と同じ名で、前世のような看護服を着た人がいるの?

 私は、ちゃんと死んだはず。死んで、異世界でソニア・カーヴァンクルになれたはずなのに。

「貴方は何年も眠っていたのですよ!!」

 そう、看護師さんがいってくれる。私が眠っていた? 聞くところによると、私がソニア・カーヴァンクル、であった期間、私は眠っていたらしい。

 そんなのありえない。だって私はソニア・カーヴァンクル。これは、夢だわ。悪夢の続きなんだ。だって私は、ソニア・カーヴァンクル。だから、こんなのありえない。

「あははは、私はソニア・カーヴァンクル」

「愛! 何をいっているの。貴方は、愛でしょう?」

 幻聴だろう、前世の母親の声が聞こえる。だけど、私は聞かない。だってこれは幻だもの。私はソニア・カーヴァンクルだもの。前世の私はもう死んだはずだもの。


 ――そう、私はソニア・カーヴァンクル。これから幸せを約束されたヒロイン。

 だからこれは悪夢なの。悪夢から、いずれ私は幸福な世界に目を覚ますの。




 ――――少女の幸福と悪夢

 (少女は、現実を認めない。認めずに、自身がソニア・カーヴァンクルであると告げる)


 

そんなわけでのっとってた子。

ソニア・カーヴァンクルをのっとってた間は、眠ってました。本人は死んだつもりでした。なので、ソニア・カーヴァンクルに生まれ変わったと思い込んでました。実際は、肉体は死んでおらず、精神がソニア・カーヴァンクルの中に入っていたという形です。


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