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第二話「戻ってきた」

この作品には、この作品オリジナルのものが多く出てきます。

「久しぶり、だな」

《ですね! ここに来ないようにわざわざ遠回りばかりして、余計に体力を使っていますもんね! いつも!!》


 仮面の男と一緒に高級の車に乗り、到着したのは【アームズ・ワールド】専用の店。

 東京には、三つあり。

 ひとつは、新宿。

 次に秋葉原。

 最後に、ここ日々野だ。ちなみに、東京大会はこの日々野店で行われた。東京中から腕に自信のあるプレイヤー達が集まり、総勢百人も超えるであろうプレイヤー達が一斉に予選を戦い、一気に二十人まで減らされたのだ。 

 あの時のことを思い出すだけで、よく生き残れたな……と遊李は頭を掻く。


「おい、なんだあの仮面」

「うわ、すげぇ怪しい」

「おい、待てその隣にいるのってもしかして、伊達遊李じゃね?」


 当然のように、目立っている。

 仮面を被った怪しい男だけでも、十分目立つが、遊李はこの辺りでは。いや、もしかすると全国で有名かもしれない。

 激戦地と言われていた東京で、しかも最初の大会で優勝をしたのだから。

 更には、そんなすごいプレイヤーなのにも関わらずいきなりの引退。

 と思いきや、また再び姿を現したのだ。

 視線が集まるのも仕方が無い。


「ふふ。予想通り人気だね、伊達遊李くん」

「まあ、色んな意味で視線が集まっているんだろうな」

《いやぁ、この雰囲気。懐かしいですねぇ。あっ! マスター!! あの自動販売機のへこみ! まだ残っていますよ!》


 とついに立体映像として遊李の肩に出てくるエルミ。

 ずっとスマホ内にいろよ、と思うがそんなことを言う間もなく、これまた懐かしい声が聞こえてくる。


《さあ! そろそろクライマックス!! 両者決着をつけるため武装を構えたー!!》

《あっ! 電ちゃんの声です!!》


 一段と盛り上がっている歓声の聞こえるほうへ向かうと映画館にあるような大型のスクリーンと大勢が観戦していた。

 そして、そのスクリーンの前でマイク片手に熱い実況をしているのはアームズ・ワールドをやっている者なら誰でも知っている電子体実況娘。

 愛称電ちゃんで親しまれている可愛らしい女の子。


 キラキラとして、ちょっと過激な衣装がマニアに受けており、星の形をした髪留めで束ねた黄金に輝くツインテールを靡かせ、全国で実況をしている。

 電子体実況娘は、各ゲームセンターに一人存在し、性格は統一されており、天真爛漫。彼女も、AIらしいのだが。

 中では、本物の人が本当に実況しているんじゃないか? と思っている人達も多いようだ。


「それで? 僕に倒してほしいっていうは子はどこに?」

「丁度、今戦っている銀髪の少女だよ」

「……へえ」


 座れる場所はもうないので、立ったままスクリーンに映っている戦いを見詰める。今行われているのは上級者戦。

 このアームズ・ワールドには、対人戦が主要となっている。だからこそ、どうしても実力の差がものをいうのだ。

 なので、それを考慮し、上級者戦、中級者戦、初心者戦の三つのコースに分けられている。そして、初心者戦では、普通の勝者ポイントに加えて初心者ボーナスとして更にポイントが加算される。


 ゲームセンターの大スクリーンで行われる対人戦は、己の溜めたポイントを賭けて戦う。

 さまざまなバトルがあるが、今行われているのはバトルロワイヤル。

 最後の一人になるまで、ただひたすら戦う単調でわかりやすい戦いだ。この戦いでは、最後まで生き残った一人にだけ、ポイントが全て行き渡る。

 なので、今残っている二人の内どちらかに、バトル開始前に賭けたポイントが全て行くことになるが。


「どう見る? 君から見てあの子は」

「そうだな。かなりレア度の高い装備を揃えてみたいだな。全武装がSSレアか。相当課金してガチャを引いたか、このバトルロワイヤルで溜めたポイントを使ったか……」

《どちらにしても、ちょー! 強そうです! 見た目だけは!》


 そう見た目だけならば、かなりの強敵だ。

 今回、遊李に倒してほしいと言われていた少女。

 銀髪のストレートヘアーで、素顔はバイザーをつけており見えないが。スタイル抜群で、体にフィットするようなスーツから見える素足はとてもエロい。


 とはいえ、今スクリーンに映っているのはカスタマイズされたアバター。所謂仮想の体なのだ。通常のゲームと同じくアームズ・ワールドで戦うための体はカスタマイズできる。

 現実で太っている者でも、仮想世界ではカスタマイズ次第ではイケメンにだってできる。

 とはいえ、こうやって現実で顔を合わせて戦うアーケードゲームでは、カスタマイズしてもあまり意味がないというのが困ったところだ。


「最初は、どの挑戦者も見た目だけは強そうだなって思っていたよ。でも」

《おおっと!! 大輔選手!! エレミア選手に突撃ぃ!!》


 対戦相手の大輔は、ランクはB。

 初心者は最初Fから始まり、中級者はDランクからとなっている。そして、上級者Bランクから。ちなみにエレミアはAランクとなっている。


《うおおおお!!!》


 大輔の武装は近接型。対して、エレミアは遠距離型だ。獲物はライフルのようだ。大輔のライフは残り僅かでエレミアはほぼ無傷。

 どうにでもなれ、と思っているのか。それとも撃たれる前に接近して倒そうとしているのか。 

 どちらにしても、エレミアは突撃してくる大輔に対し、武装を変更し構えトリガーを引く。


《くっ!?》

《大輔選手! なんとかぎりぎりのところでエレミア選手の狙撃を回避! これは、これは!》

《貰ったぁ!!!》


 確かに、攻撃は回避できた。

 だが。


「気づいていないみたいだな。あの武装がただのライフルじゃないってことに」

「へえ、さすが歴戦の猛者だね」

《マスターは、周りが引くぐらい全ての武装を頭に記憶している人ですからね!!》


 うるさい、と言い返し、再びスクリーンを見詰める。そう、エレミアが変えた武装はただのライフルではない。

 その証拠に、先ほど回避された光線が……地面に反射方向を変えた。更に、背後のビルへともう一度反射し。


《ぐあああっ!?》


 がら空きだった大輔の背中にヒットする。

 これには、観戦していたほとんどの人達が驚きを隠せない様子。


《ななな、なんとぉ!! 回避したと思われていたビームが反射して大輔選手の背中にクリーンヒットぉ!! す、すごい! すごいよー!! 電ちゃんびっくり仰天!!》

「あの武装は、反射レーザーを放てるSSレアの武装。名前は【聖天の砲撃アルテミスB型】だ。反射レーザーは、確かに便利そうだが。反射するために、フィールドの把握、レーザーの威力、タイミングなんかが必要でほとんどのプレイヤーが使っていなかったから、次第に忘れていった奴が多かったんだ。ちなみに、もうひとつのA型は、一直線の超火力レーザーを放てるから皆そっちのほうをよく知っているかもな」

《さすが、マスター! 離れて数ヶ月経っているのに、よく覚えていますね! すごいすごいですー!》


 若干、驚いた電子実況娘の真似をしているが、遊李これをスルー。

 マスター? ねえねえ? マスター? と周りをくるくる回っているが、それもスルー。


「決着みたいだね。さあ、僕達もそろそろ準備に取り掛かろうか」

「……準備たって、僕はもうデータを消しているって言ったと思うんだけど。それに、彼女は上級者だ。僕と戦うことなんて」

「歓迎戦があるじゃないか」


 移動しながら、仮面の男は呟く。

 歓迎戦。

 それは、上級者達と特別に戦えるバトル方式。他のバトルとは違い、負けても勝ってもポイントは失われないし、増えない。

 ただアームズ・ワールドのことを上級者が教えるためのもの。初心者戦があるとはいえ、大勢の前で戦うのはどうしても緊張してしまい思うように動けないし、エントリーも難しい。

 そんな彼らに、少しでも空気に慣れてほしいという考えで作られたのだ。


「いや、だとしてもだ。彼女の戦いを見る限り、彼女はひたすら強くなることを目標としいるように見せる。だから、歓迎戦なんていうポイントにもならない戦いに参加するとは思えないんだけど」

《確かにそうですよねぇ。なんだか、無駄な時間を過ごしたくないの! みたいなこと言いそうな雰囲気でしたもんねぇ》

「大丈夫大丈夫。ここは僕に任せておいてくれ」


 そんなことを言っている間に、受付へと到着してしまった。受付のお姉さんが、仮面の男に驚くもすぐにカードのようなものを見せると別の意味で驚きつつも、パソコンを操作していく。

 本当に何者なんだ? と後ろからただただ待っていると。


「ねえ、あの怪しいのってあんたの知り合い?」

「え?」


 声に振り返れば。


「……なによ?」


 遊李を睨みつける金髪の小さな女の子が立っていた。

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