プロローグ
「また、被った……」
「まあ、よくあることだ」
《ですが、被った武装は上限突破できますし!! 悪いことではないですよ!!》
伊達遊李が【アームズ・ワールド】の世界に戻ってきて早二週間。
すでに、遊李はAランクに昇格していた。
二週間でのスピード昇格は、誰が見てもかなりの快挙だ。遊李が、やっていた頃よりもプレイヤーが増えていたことと一度でもいいから遊李と戦ってみたいというプレイヤー達が多かったため、短い期間で昇格することができたのだ。
そして、遊李が再びアームズ・ワールドの世界に戻ってきたという噂が広がり、多方面から挑戦者達が。
毎日のように、遊李はプレイヤー達と戦った。
ポイントを稼ぎ、ガチャを引き、武装を揃え、作戦を練って、様々なプレイヤー達を倒し、現在。
目の前では、同じAランクのプレイヤーエレミアが武装ガチャを回していた。
ちなみに、一回プレミアム武装ガチャを回すのに使うポイントは二百ポイント。十連を回すのに二千ポイントを使用する。
毎日、一連分のポイントは運営から配布される。
なので、十日で十連ができるということだ。
「当たらないな、やっぱりSSレアは」
「ふ、ふふふ。大丈夫よ。始めた当時は、十万以上も課金したんだから……!」
「じゅ!? さ、さすがお金持ち」
《じゅ、十万もあればおいしいものがいっぱい食べられるですよ!!》
エレミアの家はお金持ちで且つアームズ・ワールドの製作者の娘。
そして……課金戦士である。
今、エレミアが必死になって当てようとしている新SSレア武装の名は【近距離炸裂銃バースト・ワン】と言う近距離の銃である。
銃は遠距離というイメージがほとんどだが、今回の銃は近距離型で、連射はできない。そして、射程もほとんどないとだろう。
だが、一発一発の威力がとんでもない。
その名の通り、一発の銃弾が発射されたと同時に炸裂するのだ。
遠くにいればそれほどの威力はないだろうが、近距離で当たってしまうと、という武装である。銃を好んで装備しているエレミアにとっては、かなり欲しい武装とのこと。
遊李との戦いで実感した。
今までは近づかれる前に倒していたため、気にはならなかったが。ああもう、近づかれると何も対処できないとは、と。
なので、近距離の武装が必要だ。
剣じゃだめなのか? と遊李は提案するが。
「あたしは、銃がいいのよ!!」
ともう二万ほど課金して、ガチャを引いているのだが中々当たらない。他のSレアなどは多く当たっているのだが。
「何がピックアップよ!! 全然出ないじゃない!! 詐欺よ!!」
などと言いながら、ガチャ画面の横にあるポイント購入ボタンをタッチし、もう一万円課金するエレミア。
ポイントの購入は、三千円で十連分のポイントが購入でき、一万で三十連分のポイントが購入できる。
月初になると、このポイント購入にはキャンペーンとして、色々な特典などがついてくるので、課金をするなら月初だ! というプレイヤー達は多い。
「おーい、そろそろ止めた方がいいんじゃないかー」
「うるさいわよ! あたしは、絶対引くわ。引いて……あんたをぶっ倒してやるんだから!! そこで、待っていなさい!!」
《マスター。どうするんですか? 待っているんですか? 私、今日は、見たいアニメがありまして》
「……とりあえず、もうちょっと待ってよう」
ガチャシステムの機械は、ひとつのゲームセンターに五台設置されている。
新武装が出る度に、五台の機械の前には多くのプレイヤーが列を成す。
なので、エレミアの他にも武装を当てようと引いているプレイヤー達はいる。だが、エレミアの熱に他のプレイヤー達は若干引き気味にエレミアがいる列から離れていくのだ。
このままでは、スタッフを呼ばれてしまう可能性がある。
もう数分経っても離れなければ強制的に連れて行くしかない。
そんなこんなで、十連、二十連と引いたがお目当ての武装が来ない。そして、最後の三十連をエレミアはごくりっと喉を鳴らし、引いた結果。
「……やった、やったわ! ついに引いてやったわ!! しかも見なさい!! 一気に二つも引いてやったわよ!!!」
最後の三十連目で、見事お目当てのSSレア武装を二つも引き当てるエレミア。
確かに、それはすごい。
ピックアップ中とはいえ、十連の中で二つ同時とは。その喜んでいる姿は、歳相応で遊李は自然と微笑ましくなってしまう。
とりあえず、これでようやく。
「あ、お前すげぇな。十連でSSレア武装当てちまうなんて」
「え? こ、これってガチャ画面にあったやつだよね? や、やった!!」
「あっ」
ほっとしていた時だった。
どう見ても初心者であろう少年が、友達と一緒にガチャを引いていた。遊李にも見えていた。あれだけ課金して、エレミアがようやく引いた武装を彼は十連で引いてしまったのだ。
素直に喜んでいる彼は、さっそくそれを試したいと友達と一緒にその場から離れていく。
「えーっと、エレミア?」
少年の背中をただただ見詰めていたエレミアに声をかける遊李であったが。
「ふ、ふふふ」
《あ、これは》
いきなり笑い出し。
「もう一枚行くわよ!!」
「はい待て。もう止めろ。そろそろ止めないと、スタッフが来るぞー!」
財布から一万円を取り出し、また課金しようとしていたのを遊李は強制的に止める。体が小さく、拘束しやすかったため、暴れるエレミアをそのまま機械から遠ざけていった。




