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無関心な恋愛ライフ  作者: 航作裕人
第五章 麻衣と姉妹
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15 真剣な毎日

 一週間と言う時が過ぎた。そして、今日で冬休みへと突入する。やっとの思いで、二学期が終わる。長かったようにも感じるし、何かと言って、問題はなかったと思っている。

 そして、今日がその終業式だ。だから、いつも通りに支度をしていく。



 朝からホールで終業式だ。席へとついていた俺はすぐに移動を開始して、ホールへとやってきた。

 クラスごとに座っていき、全校生徒が座れた頃に終業式が始まったのだ。


「これから、第二学期終業式を始めます。一同、礼」


 一斉にお辞儀をする。


「それでは、校長先生のお話です」


 階段を上る校長が目の前に立った瞬間に号令がかかる。


「礼」

「みなさん、こんにちは。今年はいろいろとありましたね。学校の移転などで、忙しい日々だったかと思います。校長先生も、そんな感じがしました。

 校舎の点検や、設備の視察などで時間が終わってしまう毎日が続いていたことを思い出します。

 でもここにいる全校生徒が、無事に学校へと通えていることに感謝をします。そして、冬休みになってもけがのないようにお願いします。それに、ドラックや喫煙、飲酒等はしてはいけませんから。

 悪いことに巻き込まれないように対処をできるようにしましょうね。それでは、話を終わりにします」

「礼」


 同じようにお辞儀をする。校長が戻ったことを確認してから、


「それじゃあ、これで終業式を終わりにします。姿勢を正して、礼」


 あまり長くはない終業式が終わった。

 うちの学校では、三十分で終わる終業式がいいといわれているが、終業式は一元の前に行われる行事となっているので、これから一限目が始まる。内容としては、一限目は学活、二限目掃除、三限目は進路指導の三限で放課となる。長いようだが、意外と短いのがうちの学校の特徴かも知れない。

 


一限目は学活だが、何となく過ごしていた。そんなときであった。


「これから、通知表を返すぞ。番号順に取りに来い」


 担任からのお呼び出しだ。それにしても、緊張する。勉強第一に男には気になってしょうがない品物なのだから。しばらく待つのがつらいのは俺だけなのだろうと思ってしまったのだ。

 やっと順番が回ってきて、教室の前のドアから廊下へと出る。目の前には担任が座っている。


「それじゃあ、飯島の通知表がどうだったかを見せようか」


 担任は戸惑いもなく、俺の通知表を開き、二学期に書かれた評価を見せる。


「相変わらず、成績がいいな。これなら、普通に受かるじゃないか。徳作経済大学にな」


 でも、俺はその時に、説明することにした。


「本当は徳作経済大学へと進学する気でいたのですが、変更をして、国立学園付属常磐大学へ進学しようと考えているのですけど」


 担任は驚いた。まさかと言う顔をあらわにしていた。それほど、あり得ないことなのだろう。俺が目指してきた場所を変えるということに……。


「そ――そうなのか。じゃあ、受かると思うよ。この学園には内部進学と言う制度ができたと聞いたことがある。今年の進学者の中にもいるんじゃないかと思うのだがな。どうだろう、俺もよくわからないな」

「そうですか。わかりました。何かわかりましたら、教えてください」


 俺は返事をした。通知表の方は、十段階で、ほとんどが十だった。ある意味、俺から見れば、九じゃないかと思ったくらいだ。それなのに、なぜ従なのかは疑問だが、成績がよかったのでよかったと思っていたところで、真司は少し悲しそうな目で話しかけてくる。


「俺は、あまりにも残酷な通知表だったぜ。オール八だぜ。やばすぎるだろ」

「お前は、それだけとっておいてそれはないだろう。オール八だって、立派な成績だと思うぞ。それで、ダメとか言ったら、ほかの奴らがねたむぞ」


 にぎやかに話している中で、華音は少し涙目になっていた。もしかしたら、成績が良くなかったのかもしれない。思っている以上に厳しくつけられることもあるしな。

 あまりにも心配なので、話しかけてみた。


「どうしたんだ? 元気がないじゃないか」


 華音から帰ってきた返答は意外なものだった。


「それが、成績で悩んでいるわけじゃないの」

「どういうことだよ」

「それは、恋愛のことですよ。先生までに書かれたんだよ。その相手とはうまくやっているのかって。通知表に書いたわけじゃなくて、別の紙にね」


 華音は恥ずかしそうに、答える。


「じゃあ、見せてよ。その紙をさぁ」

「ばっかじゃないの。見せられるわけないでしょ。異性の人になんかね」


 すごく傷ついてしまった俺なのだ。そこまで否定されると余計だ。話すから聞こうと考えたのにと思ってしまう。女は難しい。何を考えているのか、男の俺には理解ができない。でも、気になるので、しつこく問いかける。


「いいじゃないか。減るもんじゃないんだしさぁ」

「だって、成績が悪いから見せたくないのよ。和孝はいいじゃないの。毎回高いのだから」


 華音は少し成績が悪いのを気にしているみたいだ。


「それは、頑張っているからだ。誰だって、頑張んないで上を取っているということはない。どこかしらで、努力をしているからだよ。俺だって、家でやったりするからできるんだぞ」

「それはそうだけど」


 少し悩み事があるみたいだ。もしかしたら、頑張っているのに成績が上がらなくって困っているというような感じかな。俺も中学の時は少し上がるのに時間がかかって、イライラした覚えもある。今で思えはいい思い出になるだろうがと一人で思っていた。


「それよりも、悩み事でもあるじゃないのか?」

「そ……それは、そうだけど。なんというか。勉強のことなんだよね」

「そうなんだ。もしかして、成績が悪いことじゃないの。だから、少し教えてほしいとかいうお願いかな? それとも、どんな勉強法がいいかとか?」


 華音は少し黙りこんでしまった。どうすればいいのかがわからないようだ。


「本当の気持ちを聞かせてよ。何かでつまずいているんだろ?」

「そうなんだよね。か……和孝に、か……家庭教師をしてもらいたい」


 俺はやっと、華音の本音が聞けたように感じた。意外とこいつは本音を話さないし、ツンデレだし、何か言ってもちゃんとした答えが返ってこない。だけど、今日は違った。やっと、少しは向き合えるようになったんだと俺は思った。

 その時であった。すべての生徒に通知表を渡したらしく、担任が教室内へと入ってきた。


「それでは、静かに。これで全員に通知表が渡されたわけだが、どうだった? 成績が下がって愕然としている人もいるだろうし、成績が上がって喜んでいる人もいるだろうが、三学期はまとめの学期だ。今まで以上に勉強することが大切だぞ。それじゃあ、学活は終わりだ。時間になるまで、好きなことをしていてもいいぞ」


 偉そうな担任は静かに椅子へと腰を掛けた。それを見ていたほとんどの生徒が一斉に話し始めたのだ。いきなりうるさくなる教室内で、俺は華音に続きを話す。


「わかったよ。俺が冬休みにちゃんと教えるからな。それで、三学期は成績をあげるんだぞ。いいな」

「わかってるって。ちゃんと教えてよ。私がわかるまでだからね」

「了解。それと教えてほしいところを教えてよ。それによって、どんな対策をすればいいかがわからないからさぁ」

「そうだね。じゃあ、数学Ⅱと英語表現Ⅱと政治・経済かな」

「そうか。それは難しい科目のオンパレードだな。英語は一年時の英語表現ができてないとだめだし、数学もそうだな。政治・経済は暗記が主と、時事問題ができるようになることか。課題はいっぱいありそうだ」


 課題に反応したのか、担任はいきなり立ち上がり話し始めるのだ。


「それと課題だが、数学Ⅱとコミュニケーション英語Ⅱ、英語表現Ⅱあたりが出ているらしいな。進学校だからと言って、課題を多く出す気はない。それなら、自分たちで勉強した方が全然身に着くと思うからだ。だから、その科目以外は出ないからな。以上」


 またもや担任は椅子へと腰を下ろす。そして、いつの間にか時間が過ぎていたのだ。華音には課題が多いのは確かな話だ。



 いつの間にか三限目になっていた。三限目は進路指導だ。高二のこの時期は少し考えなくてはいけないところだが、まだ決まっていない人だっている。俺は確実に国立学園付属常磐大学に進学するつもりでいる。そのことについて聞くことはいろいろとあるわけだ。

 一限目のように担任が教室内へと入ってくる。


「それじゃあ、席に座れよ。それでは三限目の進路指導についてだが、この学園の大学についていくつか教えておかなければいけないことがある」


 話しながら、ホワイトボードに文字を書き始める。


 ――本学園は学校法人国立学園として創立された。そして、中学・高校・大学と言う感じで作られた。そこから、高校は内部進学ができるという制度が誕生した。


 担任はホワイトボードに書いたことについて説明する。


「つまりこういうことだ。高校から推薦枠を何十名と言う感じで募集をする。それに、特待生制度を付ける。

 国立なのだが、もう少しの考慮も執拗だということで、国立大学よりも安くしてあるわけだ。学費自体は国公立と変わらないのだがな。理事長が決めたことらしいぞ。太っ腹な理事長だからできるんだ」


 意外とこの担任はこの制度を気にいっているようだ。


「だから、推薦には入れれば、国立大学よりも安く済むというわけだ。それに、学科も豊富だしな。

 経済学部・法学部・文学部・教育学部・情報発達学部・メディア学部・看護学部・理工学部等がある。さすがにこの校舎内には入らないだろうということで、ほかの場所にキャンパスを立てているところらしい」


 意外と、この担任の言葉は説得力があるらしく、みんな静かに聞いている。


「だから、この場所以外に通うことにもなるということだ。それで、国立学園鉄道の開通を先延ばしにしたというわけだ。

 今までは、国立学園が終点と言う形であったが、今は小金井市方面まで伸ばすという感じにもなってきているということを理解してもらいたい。あくまでも、この電車はこの学園のために作られたものなのだ」


 熱い熱意が感じられる。進路の話しだけで十分は普通に使っているだろう。でも、この担任は話のまとめ方がうまく、わかりやすいというのは俺には好都合。だから、普通に聞いていても、飽きやしない。


「というわけなのだが、この大学の特待生制度について話そう。常磐大学は通称『国常大』(こくじょうだい)とも略しているけど、本当はKGJCと略す場合が多い。

 まあそれよりもだ、特待生制度について話そう。この大学では、資格を取るといくらか免除される資格特待、入試で成績がいい人が使える学業特待、そのほかに特別な特待生制度がある。

 それは、クイズ特待だ。要するに、クイズを出された時にどれだけ早く解くことができるかを判断する。これで何が見えるかと言うと、頭の回転力を確かめるということになるんだ」


 意外とすごい特待生制度があるもんだと思った瞬間であった。何気なくやっていることができるようになれるのかもしれない。それが、今必要なのかも。

 企業などでは、即戦力が必要とされている。ということは、頭の回転を使えば、このときにどうすればいいかがわかるようになるからだろう。そう感じたのは俺だけなのか。疎オン深層と言うものは誰もが知らないだろう。

 長々と聞いていて思ったのだが、俺は決めた。この大学で勉強をしていくことを……。そして、今まで聞いていた内容は後で、ためになるのだと思った瞬間でもあった。


 ようやく終わりを告げた。放課後のことである。早く終わったので、どこかに遊びに行こうと、誘われたのだ。メンバーとしては、悠馬と麻衣、華音、真司と俺の五人。あまりにもいつもと同じメンバーでつまらなそうである。そんなときのことであった。優梨愛が玄関から出てきて、俺らを発見してしまった。目が輝く。

「ねぇ、みんなで何をするのかな? 私も混ぜてほし――いのだけどねぇ。わかっているかな」


 恐ろしい顔で五人に近づいている。それを見た周りの奴らは、


「あんなところに、鬼バ――バがいるぜ。なんか、やばそう。穢れそうだから逃げろ」


 と言って立ち去っていた。今のがイラついたのか、


「ふざけないでよ。私は鬼バ――バじゃないっての。決めつけないでよ、ブサイク」


 と言いかえしていた。あまりにも低レベルのように感じてしまった。

 あまりにもしつこいもので、俺らが行く場所へとついてきた。


「どこに行くのよ。わたくしもつれていけ」

「完全にキャラ作っているような感じがプンプンするぜ。やばいじゃない」


 俺は五人に対して、耳元でささやいた。今の声が聞こえたのか、反応してきた。


「ふざけないでよ。何が『キャラ作っているじゃない』よ。ふざけるのはいい加減にして」

「だけど作っている感じだったのは確かだと思うな。俺の感覚がおかしいのかな」

「そうでもないようだけどね。俺だって思ったんだよ。昔と違うなって」

「そうね。私は知らないけど、変わっていると思うよ。少し考えた方がいいと思う。私が言えないと思うけどね」


 麻衣がゆっくりな口調で言っている。


「確かにおかしいじゃないの。私だって、そんな態度しないし。ばっかにもほどがあるじゃない。キモイ」


 あまりの言いたくないことだけど、心の中では叫んでいる。


 ――お前も同じような感じだろ。


 本人の前では言ったらぶっ飛ばされることだろう。それだけではすまなそうにも感じる。恐ろしい。

 優梨愛はついていきたいのか、目を輝かせている。甘えているような感じなのだが、華音が一発でぶち壊す。


「なんか、かわいげな顔でこちらを見てアピールしてるんだけど。やばくない。あれはつわものにしかできないわ。どうやっているんだろ。やっぱり鬼バ――バァにしかできないかも」


 今の発言が優梨愛の怒りに火をつけたのか、反乱の仕方がすごい。


「何が、つわものだって。ふざけるのもいい加減にしろや。やめろやそういうの。一人だけコケにしたいんだろうが、そうはいかないんだからな」 


 五人は一斉にひいてしまった。まさかの優梨愛が男っぽい話し方で話しているので。今までに聞いたことがなかった。こんなにも男っぽい話し方。中学の時から一緒だけど、初めてのことだと思えた。あまりにも恐怖を感じた。

 


 最終的には優梨愛もついてくることになった。嬉しそうに歩く。そして、今いるのは池袋。学校から少し遠いところにいる。山手線に乗り換えてのんびりとやってきた。それにしても、ビル風が強く。制服のスカートが三人ともめくれそうだ。それを見たいのか、周りの変態な男どもがこちらへと目を輝かせて、めくれる瞬間を待っている。そんなことを気にしない人が一人。優梨愛であった。


「それにしても、私たちをじろじろ見ている人たちがいるのだけど、どういうことかしらね」


今の心情はアイコンタクトでわかった。


 ――何で、気づかないのだろうか。スカートがめくれそうなのだと。


 意外と大胆だということもここでわかってしまった。そんなときであった。あまりにも強い風が彼女たち三人を襲う。一瞬で短くしていたスカートがめくれて。パンツがあらわになった。麻衣はピンク色で、優梨愛は白っぽいレース、華音は勝負をかけてきたのか、黒パン。

 完全にパンツが見えていることに気付いたのが遅かった。すぐにスカートでかくして、参院とも真っ赤に染めていた。それを見ていた連中の中には、鼻血を出して倒れた人もいた。俺もやばいことになりそうだった。

 華音が俺に尋ねてくる。


「ねぇ、わ……私のスカートの中見えた?」


 赤くした顔で聞いてくるので、少し戸惑ってしまう。


「み……見てねぇ――よ。それに見たくもない」

「そうなんだね。私のなんか興味ないよね。おっぱいだって興味ないんでしょ。小さいから」


 華音が下ネタに走ったことはびっくりした。もう少し純粋な子だと思っていた点もあったからだ。俺らの会話を着ていた麻衣が耳元でささやく。


「それにしても、ひどいものですねぇ。女の子の見たくないとか。女の子だって、変態とか言っているけど、見てほしい人もいるのよ。知らないでしょうけど」


 ――そんな変態がいたのか――。まさかの展開だぞ。それに、麻衣にいわれるとな 。 


 今の振り返って、俺は情けないと思ってしまった。普通に考えれば、そんなことを聞くのはその人が興味あったりするからなのだと。


「ごめんよ。そんな嘘を。俺は見てしまったよ。かわいらしいパンツを」


 修正したい気持ちもあるが、本音を伝えることができた。後悔することはいっぱいあるけど……。


「何よ。変態がそんなこと言ってる。和孝って意外とそんなタイプだったんだ。意外」

「そうだな。和孝も男になったんだな」

「それ、どういう意味だよ」

「そのままの意味だと思うけど。簡単に言えば、勉強以外にも興味を持ち始めたんだなって。

 中学二年まではやんちゃだったのに、中学三年から真面目になって、あまりほかのことに関してはきょうみがなくなっていたからさ」


 意外な過去を聞いた悠馬は言った。


「そうだったんだ。和孝が変わったと思った点はそこか。なんか、謎が解決したように感じるよ。てっきり、和孝は下ネタあたりに興味があったのかなって、思っていたんだけど予想が外れちゃった。残念だな」


 悠馬も意外なことを言うことも分かった。やっぱり高校生になると変わってしまうように感じる。自分も、相手も、周りも。

 あまりのも濃い話をしていたので、周りから見れば、変な高校生だと思われただろう。それに、制服が国立学園付属常磐高校のだから、意外だと思うだろう。頭がいい学校の生徒が以外にもこんなのだと。そして、変わった人もいるのだと。

 勉強だけが取り柄ではない学校だと知れわたっただろう。

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