5 妹からのむちゃぶり
自宅へと帰ってきた俺たち二人は、荷物をリビングへ持ってきた後、化粧をさせられそうになって、逃げまわる俺に対して、水奈が一言申すことになる。
「何逃げてるのよ。あなたは男なの。あるものをつけている状態なの。それともとっっちゃったの」
「お前って、意外なところで変な言葉を使うよな。俺的には今のは下ネタにしか聞けなかったんだけどな」
水奈は今までにないほど赤く顔を染めることになったわけだ。それほどのことを言って、なんも思わなかった一瞬の時はどんなことを考えていたのかが心配になる。
水奈はとても興奮していたということなのだろう。
――しょうがない。着るしかないか。そうすれば満足だろうし。
俺が今、決意した瞬間であった。あまりにもしたくないことをするということは勇気がいる。
リビングで着替えているとき、水奈二階の自分の部屋に行っていた。自分で着てみると、なんか恥ずかしい。それだけじゃない。俺の体にフィットしているように感じる。
――マジで、似合っていたら少し泣きそうになりそう。やべぇ――。
黙々と着替える俺がその場にはいたのであった。
着替え終わり、二階へと行くとそこにはまだかなっと待っていた水奈がいた。
「着替え終わったぞ」
「早かったね」
「それはな。だって、早く着替える努力をしたし、こんなの早く脱ぎたいしと言う理由からだぞ。別に、長い時間期待からと言う理由ではない」
「素直じゃないね」
「お前だけには言われたくねぇ――――わ。どう見てもツンデレ感出してるのは誰だよ。まったくさぁ」
「いや、私はべつに、ツンデレじゃないわよ。優しくしないと、怒っちゃうぞプンプン」
「お前ふざけてるだろ。どうみてもそうにしか見えないけどな」
「そ……そんなことないよ。わ……私はただ……」
「何気なく照れてるんじゃねぇ――――よ」
何分か言い争っていたわけだが、どういうわけかおさまっていた。とりあえず、この服装でいるのは恥ずかしいので、早く見てもらって着替えないといけない。
「どうだよ。これでいいだろ?」
「うん、いいよ」
またもや、惚れろみたいな風景を作っていた。俺は思わないから、絶対に思わないから。
「とりあえず、俺は着替えるぞ。さっさとこれとはおさらば」
「何言ってるの? まだあるのよ」
「はぁ~。ふざけんなって。そんなことをしている暇とかないから。暇とかないから」
「何で二回言ったのよ」
「ぐうぜんじゃねえ」
「それはないわ。それはないわ」
「お前も結局、二回言ってるし」
「うるさいわね」
「あんなが指摘したんでしょ」
「関係ないじゃないの」
「もう、うんざりだ」
「好きにすれば」
俺は思ってしまったことがあった。あまりにも哀れなことをしているほかに、何もやっていないのに喧嘩をしているのか。そして、なぜこんな展開になったのか、俺には理解できていないということは、水奈も理解はできていないだろう。
俺は水奈の部屋を出ていき、自分の部屋に入り、タンスから普段着を出して着替えているだけだ。
白いシャツに、黒いズボン。完全にどこかのサラリーマンと言う感じだ。
――俺は何がしたいのだろうか。
頭の中で考えても分からないことなのだ。どうしよう。その時まで。
それでも、災厄な一日であったことには変わりがない。あまりにも俺にはつらい一日だった。こんな日が続かないことを祈るばかりであった。




