10 同級生がいる
翌日のことであった。昨日は緊張が吹っ飛んだ瞬間、眠くなり早めに寝たおかげであまり眠くない。だが、今日は平日だということ。そして、華音の引越しの手伝いをする日である。そのため、放課後は荷物運びで時間が消えていくだろう。その分、体力がない俺には少しでも残しておく必要がある。いつも鍛えてない分、根気を出すことになるだろう。そして、俺は学校に行く支度をして、家を後にした。放課後はやることがあるだろうと思いながら……。今日の外はとても爽快にしてくれる天気であった。さわやかな秋というのはわからんが、そうなのだろう。
いつの間にか学校の校門までやってきていた俺は自転車を所定の位置において、いつも通りに教室へと向かった。そして、華音の前に行き、話しかけた。
「今日は引越しの日だな。いろいろと大変かもしれないな」
「それはね。それと、荷物運びをしてくれるだって。ありがとうね」
華音の顔は少し赤らめていた。
「いいよ、全然。俺どうせ暇だしね、家族になるんだから。それくらいはやれと言われたしね」
すると、周りの奴らがいきなり騒ぎ始めた。華音がうちに来ることに不満なのかもしれない。
『あの和孝君の家に行くんだ。もしかして、付き合っているのかな』
そんなことで、俺は今日、すごく居心地が悪くなった。
いつもとはクラスの雰囲気が違う。
これだけ、こんなことを暴露するだけで、こんなにも違うのかと思う。
だけど、真司がみんなに説明してくれたおかげで俺はなんとか一時限目の授業には普通に戻った。
俺は驚いた。
真司が説明するだけでわかることを……。
四時限目の授業が終わり、俺はいつも通りに屋上に行こうとしたときだった。
クラスを出て、廊下を歩いていると、華音がついてきた。
なんだか、熱がありそうな感じでフラフラだった。
いつもとは違うオーラが出ていて、俺は心配になった。
「大丈夫か?」
俺は後ろを振り向いて言う。
「う……うん。だいじょ~ぶ~」
華音はここで倒れた。
その倒れた場所は、ちょうどクラスがある3階の所であった。
そのため、クラスの奴が、
『お~い。保健室にお前が連れて行った方が、華音は幸せじゃねぇ――――!』
そいつはなんだか、華音のことが好きっぽいように感じたが、なんかあきらめているようだった。
――もしかして、華音にも片思いしていたのか。
俺は推測した。
あいつは、恥ずかしがって、目を閉じた。
そのわけで、俺は推測した。
俺は、あいつのことを気にしないで、一階の保健室へとおんぶして運ぶことにした。
おんぶした俺だけど、結構苦戦した。
それは、胸が背中に当たって、やばいことになりそうだからだ。
俺はこんな趣味ではないが、あまり女の人が得意ではない。
むしろ、胸でさえ、体に触れれば変な気持ちになる。
だけど、変態になるわけではない。魂が抜けそうになるという弱点。本当にやばいことになってしまう。なんと、華音は意外とでかいこと。
それが、俺には本当に都合が悪い。
家でも一緒に屋根の下で暮らすのにやばい。おれだけが思っていることだろう。
そんなことで、保健室に到着した。
俺はベットの上におろす。
俺は気絶しそうになる。
それは、無防備な女の子を初めて見たからだ。
俺はいつも勉強のことばかりで、全然女など眼中にないというつまんない男。
それに、一人っ子の俺には妹も姉もいないので、うるさくもなくしずかな家であった。水奈がくるまでは……。
保健室を後にしようとしたときに、俺は保健室の先生に呼ばれる。
「なんですか?」
「華音ちゃんのことを頼みたい」
「なぜですか?」
「それはな、私は職員会議に出なくちゃいけないんだ。それに昼休みだ。先生もいろいろと忙しいから、保健室を開けるからよろしく頼むよ」
「そうですか。わかりました。僕でいいならやります」
俺はこのときは真面目に僕と使うが、普通の時は俺と使う。先生の時と友達のときとでは使い分けている。
華音の付添い役として、俺は見ることになった。
一時間過ぎたころだろうか。俺は寝ていた。それも顔をベットにうつぶせにして……。
それよりも俺を起こしたのは、華音であった。
俺は付き添うとしていたのに、寝てしまったようだ。
時計を見ると、
――二時十分。
完全に、授業を欠席してしまった。おれが積み上げて全部出ていた授業がすべてパーになってしまったけども、こいつの方が大切だと思った。
家族となる華音を置いてはどうせいけなかっただろう。
それに、顔が真っ赤になっていて、熱があるのかと思った。
俺は授業には六時限目は出た。
放課後。俺は華音を連れて、俺の家に行った。
おれは華音を俺のベットで寝かせてから、俺と母の2人で行くことにした。
すると、真司から連絡がきた。
『もしもし、真司だけどさ。華音の代わりに俺が手伝おうか。いろいろとお前も大変だろ。今どこにいる?』
『今は、俺の家の母さんの車の中で、学校の前を通るよ』
『じゃあ、そこで待っているよ』
『わかったよ』
といって俺は通話を終わりにした。
「お母さん。真司が手伝ってくれるって」
「そうなの。わかったわ。それでどこで待ち合わせなの?」
「学校のところ」
「わかったよ。向うからね」
母は、真司がいる学校の前に行き、車を止めて、真司を乗せて車は華音の親戚の家へと直行した。
つくと、母は挨拶をしに行った。
「こんにちは、ご無沙汰しています」
「いいえ。とんでもない。華音を引き取ってもらっちゃってね、それに水奈まで。本当にありがとうございます」
親戚の人は笑顔で挨拶をしてきた。ちょうど四十代くらいであり、優しかった。
華音を引き取ってもらいたいとは言ってはいないらしい。母が自ら名乗り出たということ。
だけど、準備できるまで預かってほしいということだったらしい。
なんか、いい話だ。
でも、母親が水奈と華音にいないのは、悲しい。それに、父親は小さいときに病気で亡くなったらしく、脳卒中だったらしい。
なんか残酷な家庭だということは確か。
俺は、すぐさま小道具を運ぶことにした。
大きな荷物はもう引越センターの人が運んできて、ちゃんとした配置に置いてあるのだから、母はすごい。尊敬してしまう。
そんなことで、俺は母の普通車のミニバンに荷物を入れる。
一人分の荷物は少なかった。
俺は、最後の小道具の置き場まで、こだわった母に従ってすべてを三人で整頓した。
俺は疲れてしまい、夕食を食べて、お風呂に入り、すぐに寝てしまったのだった。
次の日のこと。華音は照れながら俺を起こしに来た。爆睡していた俺は華音が入ってきたことを全然気が付かなかったし、寝ていた場所が、自分の部屋ではなく、リビングだった。
なぜか、自分の部屋にいることに驚いた。なんと、母が運ぶところで、華音が来て、運んでくれたらしい。なんとなく、恥ずかしいというか、悪いことをした気分だ。母によると、真っ赤な顔をして運んでいたらしい。
いつも通りに、支度をして学校に向かう途中、なんか華音が言った様子だったが、わからなかった。
それに、まだまだ修羅場になって疲れることなど、この時点ではわかりっこないだろう。
いつもと同じ生活して、学校へと行く準備をしていたのだった。




