7 緊張その時までの時間
家へと帰ってきた俺はプレゼンだけのために、時間を無駄にしようとしている。そして、それが本当に無駄なのかは俺にもわからない。だが、このプレゼンはトーナメント方式で行うため、成績にも大きくかかわるだけではなく、受験にも大きな役割を果たすとあのスマホ線歩愛が言っていた。それでいつも通りに説明方法にすることにした。資料を見ながら説明する方法がしっくりくると思うからだ。俺はそんなことを考えながらベットで爆睡した。
翌日のこと。今日はプレゼンをする日。何かと緊張する日でもある。そして、明日は華音が引っ越し来る日だ。忙しい二日間になるだろう。一難去ったばかりなのに、また一難。ついていないような気もするが、これは試練と言うものだろう。
学校に着くと、なんだか今日はみんなの顔がカチカチに固まっていた。まるで、石のように……。でも、真司はそんなことを気にしていないように、俺の目の前に現れる。
「どうだ。今日のプレゼン。うまくいきそうか?」
「俺はやるべきことはすべてやったけど、いまいちね」
「そうか。なんか今日はみんな表情が固まっているよな。ただのプレゼンなのに」
真司は全然緊張していないみたいだ。それよりもやる気満々。
「でも、プレゼンは緊張するよ。だって、自分が調べたことを発表するというね。ミスをすると恥ずかしいからな」
「そうか。まあ、俺はいつも通りにやるけどな。お前はどうするんだ?」
「決まっているでしょ。いつもどおりだよ。でも、それができるかが心配だけど……」
真司はいきなり笑い出し、そして失礼なことを言い出す。
「みんなゴリラみたいな顔しているけど、お前もゴリラみたいな顔してるぜ。お前も『うほうほ』言っていれば、緊張が飛ぶんじゃねぇ~」
「誰がゴリラだよ。お前もそんなような顔をしてるじゃないか」
「そんな顔はしていない。それに、人間だ」
「だって、ここは動物園じゃなかったっけ。みんながゴリラ顔なら。バカじゃない。自分で言っといて、頭が吹っ飛んだか?」
少し言い過ぎてしまったようで、真司は少し怒り気味だ。だけど、その顔は一瞬で変わった。
「誰が吹っ飛んだって、勉強のところの脳は吹っ飛んだかもしれないけど……」
「おいおい、認めてしまうのかい。まあいい、じゃあ、プレゼン一緒に頑張ろうな」
「おう、任させておけ」
真司は自信げに、準備へと取り掛かろうとしている。そして、ほかの人たちの顔はまだ変わってはいなかった。時間と言うのはすぐに過ぎてしまうからすぐに本番はやってきてしまう。
昼休みに入るとみんな練習を始めた。弁当を早くたいらげ、プレゼンの調整に入っている。さすがに成績にかかわることになるとみんな本気になるらしい。と言うよりも、この学校のほとんどの人が真面目ばかりなのは知っているが、ここまで気合を入れてやっている姿を見るのは初めてかもしれない。俺も、これは負けてはいられないと思い、飯を食べて練習へと励む。次の授業こそ、一番大切なプレゼンの時間なのだから。