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無関心な恋愛ライフ  作者: 航作裕人
最終章 和孝と水奈と華音
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6 秋葉原

電車に乗ってからなんか、違和感がある。それはこんな時期だからなのか、どうなのかわからん。

考えてみれば、帰宅ラッシュの時間。学校終わりというものはどの電車も混むものだ。彼女ではないが、一応家族だ。こんな時だからこそ、痴漢などに気を付けなければ……。


「どうしたの? 周りをキョロキョロして。もしかして、他のJKでも見ているの?」

「そんなことあるか。そうじゃない。普通に痴漢とかいないか確認したんだ。お前も一応は女だろ」

「一応って何よ。私が女っぽくないっていうの」


 否である。すらっとしたボディーに女性らしいふくらみがあって、普通に美人だろう。でも、俺は家族、そう見てはいけないような気がするだけだ。家族としてな。


「まあ、問題なさそうだし、いいだろう。そのうち秋葉原にも着く。それで中央線に乗り換えて池袋な」

「でも、遠回りしている感じがするけど、そんなことないの?」

「いや、完全に遠回りだ。山手線を避けているっていうのもある。ただ、次の中央線もどのくらい混むか正直分からん」

 「いいわ、楽しめるなら」


 本当に丸くなったものな。俺のことをあれほど嫌っていたような気がした。いや違う、あれは照れ隠しか。相手のことを観察している俺には分かる部分も多い。でも、俺だけ知っているのはフェアーじゃないよな。そのうち俺の気持ちも、はっきりさせないとな。

 でも、どのように伝えればいいのかわからん。普通に言うのも照れくさいし、何かのサインをするといってもそれが何かって話よな。こうやって、恋に落ちていくんだろうな。本当に昔の俺だったら何というのか。


『次は秋葉原、秋葉原。お出口は……』


 二人の空間に車内放送が鳴り響く。なんか、違和感がある。


「次、降りるところだけど大丈夫?」

「大丈夫って何が?」

「さっきからボーっとしてるからさ。何か考え事でもしているのかなって。ああ、もしかして……」


 華音は疑いをまなざしを向ける。『もしかして』ってどういうことだ。変なことでも考えていると思っているのか。まあ、男なんてそんなものだと思われているんだろうな。


「急に黙ってどうしたんだよ」

「いや、何でも」


 いやいや、気になるだろうよ。そこははっきりと言ってくれないと困る。俺の脳みそでは、華音が考えていることが全てわかるわけではないし。

 華音はそっぽを向くかのように、俺の顔から目をそらす。完全に地雷を踏んだような気がする。というか、今日の華音は何かと気にしすぎじゃない。もしかして、生理とか。いや、そんなこと聞いたら、軽蔑されるのくらいわかる。どうしたらいいものか。

 


 しばらくして秋葉原駅に着くと扉が開く。多くの人が降りていく。俺らも人ごみにもまれながら、ホームへと降りる。


「大丈夫か。帰宅ラッシュだから少し人が多いかもな。手でもつなぐか」

「そうやって、私ができないことをしれっとする所が何か嫌なのよ」

「なんか言ったか?」

「別に、和孝が面倒くさいって思っただけ」

「何だそれ。そんなことないだろ。そんなこと言ったら、お前の方が……」


 いかんいかん。火に油を注いでどうするんだ。売り言葉に買い言葉はよくない。でも、ほぼ言ってしまったし大丈夫かな。


「私のほうがめんどくさいっていうの?」

「別にそういうわけじゃないけど……」

「はっきり言いなさいよ」


 いやいや、華音よ。お前が言えよ。こっちはその何かが気になっているんだ。これじゃあ、夜も眠れないじゃないか。そんなことはないけど……。


「まあ、いいわ。ほんと和孝といると調子狂うわ」

「それはお互い様だろ。俺だって、お前といるときはペースが崩れるんだ。そんないい争いしている前に乗り換えないとやばい」

「そうね。今度は総武線だったかしら」

「そうだよ。黄色の目印のな」


 俺と華音は東武秋葉原駅の改札から出て、すぐ隣にあるJR秋葉原駅へ向かう。それにしても、秋葉原はいつ来ても家電の街って感じとアニメの街って感じ。でも、最近はやたらやばめのメイドが立っていて、客引きも多いらしい。昔はそんなことはなかったはずなんだけどな。夜に来るのは少し怖い街となってしまった。


「そういえばだけど、秋葉原ってメイドさんが多いのよね。一度は見てみたいわ」

「やめとけ。メイドといっても昔ながらのメイドとは違うんだぞ。キャッキャウフフしているようなギャルゲーとかに出てきそうなメイドばかりがその辺徘徊しているからな」

「そうなの? どう見てもそうには思えないけど」

「知り合いから聞いた話なんだが、秋葉原に平日でも土日でも道の端に客引きとしてコスプレしたメイドさんが『いかがですか』と誘ってくるらしい。男には結構つらい話らしいけどな」

「何でよ。別に無視しておけばいいでしょ」

「だってだよ。何も縁がない男がかわいらしい若い女に声でもかけられてみろよ。お金で買えるならいいなとか言って、ついて行ってしまうかもしれないんだぞ」

「和孝もそうなの?」

「なぜ、俺に聞く。俺はそんなことはない。絶対にありえないからな」

「お金では買わないと?」

「いやいや、判断基準がおかしい。どう考えても、お金では買わんだろ」

「いや、わからないよ。お金がたくさんあって、美女が欲しいとなれば、買うかもしれないよ」


 なんだろう、なぜここまでお金にこだわりを見せてくるのか、とても謎である。もしかして、嫉妬でもしてくれているのか。いや落ち着け。こいつに行為があるとしてもだぞ、そんな素直なところがあるか。どう見てもひっかけじゃないか。


「そんなことはいいから、用事を早めに済ますぞ」

「あーっ、話そらした。ほんと自分のことになるとこうなんだから」

「早くしないと、遅くなるからな。それこそ、危ない街になってしまうからな」

「わかっているわよ、それくらい。そんな遅くまでいるつもりはないわ」

「はいはい、そうですか」


 そんな風に軽くあしらいながら、JR秋葉原駅の改札へと入っていくのだった。

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