5 荒川都市
『まもなく終点、荒川都市、荒川都市です。お出口は左側です。お忘れ物なさいませんようにご注意ください。本日も国立学園鉄道をご利用くださいまして、ありがとうございました』
電車内にはアナウンスが流れ、とうとう終点まで来てしまった。そして、うちの最寄り駅だ。ここで、東武線に乗り換えてるとそのまま秋葉原方面に向かうことができる。そして、山手線に乗り換えて池袋に向かうのもいいし、東京メトロをつかうのもありだろう。だが、ここでは山手線を使って、向かうことにしよう。
「とりあえず、東武線に乗り換えて、秋葉原に向かうぞ」
「ちょっと待ってよ。池袋で決定なの?」
「いいじゃないか、もう池袋で。何でもそろっているだろ?」
「そうだけとさ」
「それか、秋葉原とかでもかまわないぞ」
「それはいや。だったら、池袋か新宿、渋谷がいいわ」
「そう。結局都心に出るためにはここから秋葉原に行かないとな」
「わかっているって」
俺は華音の手を取り、電車からおり三番線へと向かう。この駅は一・二番線は急行東武スカイツリーラインで、三・四番線が東武八王子線、五・六番線が国立学園鉄道の常磐学園線だ。会社が違うのにホームが同じなのは、東武との直通運転や開業に東武が関わっているかららしい。まあ、俺には関係ないがな。
荒川都市は高架駅だから、違う番線に行くためには一度コンコースまでおりなければならない。そんな時、隣の番戦から接近アナウンスが聞こえてきた。
『まもなく、三番線に各駅停車、秋葉原行きが八両編成でまいります。安全のため、黄色い点字ブロックの後ろまでお下がりください』
まず、この放送が流れるとすぐに来てしまう。急がないと……。
「早くしないと、電車行ってしまうぞ」
「分かっているって、そのまま乗り換えられるんだから大丈夫でしょ」
『The local train bound for Akihabara is arriving on Track No.3. This is a 8car train. For your safety, please stand behind the studded yellow tiles.』
俺は五・六番線の階段を降り、そのまま三・四番線に向かっていく。タイミングよく来て、そのまま乗れるといいのだが。
とりあえず、コンコースに降りた。電光掲示板にはまもなく到着と表示されていた。だが、どう見ても電車が入線してくる音がする。
「電車来ているみたいだから、急ぐぞ。そうしないと次は二十分待ちになる!」
「そうなの、それは早くしないといけないわね」
俺と華音は焦って、ホームへと登っていく。こういう時はエスカレートよりも階段のほうが速い。間に合わないなんてシャレにならんぞ。
「急げ、この駅はあくまでも途中駅だからすぐに出発してしまう」
「分かっているけど、結構通学のバックって重いのよ」
「ほら、よこせよ。持ってやるから」
俺は華音のもとにいき、肩に背負っている通学バックを持ち、階段を駆け上がる。確かに重いが、俺のと二つでも全然行けるはず。
隣で華音が一生懸命、階段を登っている。制服だからか、スカートが気になるのだろう。というよりも女子高生ってなんで、スカートをひざ上にするのだろうか。変態クソジジイどもが覗いていたらどうするんだよ。
「和孝、何を見ているのよ。もしかして、す…スカートの気にしているの? それとも覗きたいの?」
「押さえながら階段を…の…登っているから気にしているんでしょ――が――」
「それはどうも」
『ご乗車ありがとうございます。荒川都市、荒川都市です。東武スカイツリーライン、国立学園線はお乗り換えです』
ホームと階段付近では、到着放送が響いていた。まさに電車が駅に到着した瞬間であった。
「まずい、電車がついてしまった。もうそろそろ登り切るからがんばれ」
「が――がんばるから、ハァハァ、ちょっとまってて。ハァハァ」
華音は結構つらそうだ。少しダッシュしたからだろう。でも、そのおかげでどうにかホームには登り切ることができ、電車の付近までこれた。
発車メロディーがなっている。本当にヤバかった。
『東武鉄道をご利用いただきまして、ありがとうございます。この電車は秋葉原行きです。次は千住、千住です。お出口は右側です』
電車は動き出し、次の駅へと向かっていった。