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無関心な恋愛ライフ  作者: 航作裕人
最終章 和孝と水奈と華音
136/138

4 華音はいつでも俺と一緒

放課後、華音との待ち合わせをしていた。学校の中にある玄関の端で待っていることした。

俺はなんか、気持ちが高まっていた。いつもはこんなことはないのに……。


「おまたせ、待った?」

「いや、特に待っていないが」

「なら行こうか。それにしても、教室で待っていればよかったのに、なんで玄関なんかで待っていたの?」

「だって、放課後は掃除をするだろ。俺なんかじゃまになるかなと思ってな。それに、なんか待っているのが気恥ずかしくなったわけだ」

「可愛いところもあるのね。いつもはブスッとしているのになぁ〜」

「別にブスッとしていないよ。ただ、考え事を常にしているだけ。常に考えていないと頭がおかしくなりそうだからな」

「逆に考え事ばかりしていたら、それこそ頭がおかしくなりそうだけど」

「まあ、癖だから気にしないほうが多い。それよりも、帰るか」

「いや、帰らない。どこか行く」

「おい、俺は家に帰ってべ……。なんでもない。どこに行きたいんだ」


 俺はいつもの癖で勉強をすると言いかけた。でも、それではこいつのためにもならないだろう。たまには勉強をするよりも、遊ぶこともしたほうが人間味が出るということだろう。それに、勉強にも飽き飽きしてきたところだな。そこまで根気強くやっても、結果はそこまで変わらないし、気を抜いていたほうがいいのかもしれない。


「さっき、勉強って言いかけたでしょう。本当に勉強と友達ってところは変わらないのね。呆れるわ」

「別にいいだろ。もう、習慣になっていたからつい出ちまったんだ。でも、今は勉強よりも大切なものを見つけたんだ。それに全力をかけてみようと思うよ」

「なにそれ、なんか今までの和孝よりも目の輝きが違うのはそのためか」

「そうだよ。今までは勉強ばかりでいいと思っていた。でも、違かった。それは逃げているだけだったって」

「これ、長くなりそうな予感しかしないから。歩きながら話そうよ。周りの目もあるし……」


 俺は周りを見渡すと、クラスメイトはこちらを見ながらコソコソと話しているではありませんか。どういうことだよ。というか、俺もおかしいのか。こんな玄関でそんな話をしていたら、誰も注目するか。


「わかった、場所を変えようか。で、どこか行きたいところでも決まっているのか?」

「うん。もう決めてあるから、そこに行くよ。なんか、放課後デートみたいだね」


 華音が気恥ずかしそうにその言葉を言うのだから、俺まで恥ずかしくなってくる。というよりも、顔を真赤にして言うことか。目をそらすとか可愛すぎじゃない。


「それじゃあ、早く行こうか。電車乗っていくのか?」

「当たり前じゃない。電車に乗って、少し都会に行くわよ」

「はいはい、わかったよ」


 俺と華音はやっと玄関で靴を履いて、校門から外に出た。その間も周りからの視線は痛かった。あのバカカップルとか思われているのだろうか。なんか、俺は鈍感みたいな感じに思われているところあるし。


「それで、勉強から遊びに切り変えた理由は?」

「聞き方が唐突過ぎない? でも、いってほうがいいような気がするからいうか」

「聞きたいな」


 華音はウキウキしながら、聞いてくる。そんなにウキウキ聞かれたらなんか、悪いような気しかしないんだけど。


「俺がなぜガリ勉になったかだよな。それは、友達ができなかったことによるコンプレックスだな。小学校もそうだけど、中学も友達はそこまで多くはなかったし、高校は逆に勉強ばかりしていたものだから、周りがついてこなかったんだよ。今では大奥の友達に囲まれているけど」

「なるほど、弱虫だったわけね。情けない」


 そうやって痛いところついてくるから怖いんだわな。それに周りからの視線が本当に痛い。そんなにバカカップルに見えるのかね。


「うっせ、お前には言われたくないわ。それで、成果の出やすい勉強に逃げて、見事成績が高い状態で高校に行けたってわけ。高校も同じように頑張って、ずっと上位をキープしている」

「なるほどね。人間関係ってとてもめんどくさいからそんなものとは縁を切りたかったというわけね」

「まとめ方は雑だけど、それが真実だ。まあ、今思えば関わっている相手が悪かったのかなと思うな」


 なんだろうか、華音が大人になったような気がした。いや、勘違いか。それにしても、周りは俺らのことを知りすぎじゃない。そんなに学校で有名だったっけ。

 他の生徒は俺と華音を見ては、コソコソと何かを話しているような様子であった。


「それは運だから仕方ないよね。だって、たまたま地元が同じで、たまたま年が同じで、たまたまその場所で友だちになっただけの関係だからね。学校なんて」

「華音からその言葉が出るなんて思いもしなかったな」

「どういう意味よ。私はそんなにバカじゃないからね」


 コロコロと変わる華音の表情、たまらねぇ――ですわって、俺は何を考えているんだ。好きになるってこういうことなんだろうな。

 話をしていたら、国立学園駅に到着していた。そして、周りにはうちの生徒ばかりで、やはりコソコソと話されている。俺らってそんなに目立ちますかね。


「これは失敬。そんなことなかったか。なんか、華音が成長しているような気がして残念だわ」「それはどういう意味よ。本当に私のことをなんだと思っているのよ」

「ただのツンデレ。というか、サル?」


 本当に華音は猿のように、顔を真っ赤にしていた。これは完全に起こった感じの雰囲気だと俺は悟った。ちょっとふざけすぎたと反省した。


「何で疑問形なの。それに、失礼だと思わないの?」


 怒っているといえども、なぜか気分がいい。反省はしているが、まあいいかと思ってしまう自分がいる。やはり、何もかもかわいく見えるのは俺が病気、病気になったんじゃないかと心配になる。もうちょっとふざけるために、ロボットの真似でもしてみるかね。


「カゾクダカライイカナトオモッテ」

「ふざけるのもやめて。というか、なんでうれしそうなのよ。ちょっと気持ち悪いわ」

「おいおい、そこまで言わなくてもいいだろ。それに全然気持ち悪そうじゃないじゃ、ないか。それなのにそんなこと言われても、説得力がないぞ」

「そんなの分かっているぞ」

「マネするんじゃないぞ」


 二人で大爆笑してしまった。何だろう、今までの壁が全て無くなったように感じる。本当にどうしてしまったのだろうか。


「いつの間にか、駅についていたわね。早く電車に乗るわよ。ちゃんと電子マネーにお金入ってる?」

「ああ、入れてあるぞ。じゃあ、改札を通るか。それよりも周りからの目線が学校からずっときつかったんだが」

「それね。まあ、私たちは学校公認のカップルみたいなものだしね。仕方ないんじゃない」

「それを仕方ないで片付ける華音さん、パネェースッネ」


 俺と華音は国立学園駅の入口から入り、電子マネーで改札を通ると、電光掲示板が見えてきた。


――一番線 十六時四十五分 各駅停車 荒川都市 十両


 電光掲示板には次の出発案内があった。二番線にもかかれていたが、一番線のほうが出発が早いので、とりあえず乗ることにした。

 電車に乗るために、改札内の一番線につながる階段を登る。すると、そこには多くの生徒が電車を来るのを待っていた。


「相変わらずにぎやかだな。本当にこの駅はうちの学校のためにできたようなものだよな」

「そうね、そうとしか思えないほどに駅と直結だものね」


 そんなことを話していると、アナウンスが聞こえてくる。


『本日も国立学園鉄道をご利用くださいまして、ありがとうございます。次の電車は、十六時四十五分発、常磐学園線、各駅停車、荒川都市行きです。この電車は四つドア十両です』


 アナウンスが流れてすぐに、接近放送が流れる。


『まもなく、1番線に当駅止まりの電車がまいります。危ないですから、黄色い点字ブロックまでお下がりください。この電車はお折り返し、十六時四十五分発、各駅停車、荒川都市行きとなります』


 最近は、外国を意識しているのか、英語の放送まで流れるようになった。


『You`re attention please, the local train bound for Arakawatoshi. Will soon arrive on track number 1 for your safety, please stand behind yellow line』


 接近放送が流れると、1番線に電車がやってきた。電車の中には混んでなく、空いていた。そして、電車は駅に止まり、扉が開いた。


『ご乗車ありがとうございました。終点の国立学園、国立学園です。お忘れ物なさいませんよう、ご注意ください』


 アナウンスが終わると、方向幕には『各駅停車 荒川都市』へと変わっていた。そして、車内放送が流れる。


『本日も国立学園鉄道をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は常磐学園線、各駅停車、荒川都市行きです。発車までしばらくお待ちください』

『This is the Jobangakuen line train for Arakawatoshi』


 いつも聞きなれた放送だが、何か英語で放送されていると違和感がある。特に今日は緊張しているからか、このアナウンスが耳に入ってくる。


「どうしちゃったの? 何か黙っているし」

「いや、何でもないよ。なんか、いつも聞いている放送が新鮮に感じたからさ」

「そう? まあ、いいわ。それよりも現地に着いたら何するかよ。ここからだと秋葉原が行きやすいけど、池袋でもいいような気がするの。それに新宿でも、渋谷でも」

「どこでもいいじゃないか。ここからだと副都心側だと乗り換えが大変だけど、いけなくはないし。する内容によって変わるんじゃないか」

「それもそうね。それで何がしたい?」

「それを俺に聞くのか! そんなことを急に言われてもな、映画とかしか思いつかんぞ。それか雑貨を買いに行くとかか?」

「そうね、映画はいいけど、青春って感じがしないのよね。別にそこまで遠くなくてもいいかもね。カラオケとかでもいいと思ってるくらいだし。でも、それじゃあ放課後デートっぽさが出ないのよね」

「何でそこまでして、放課後デートぽさを出すのさ。別に、出がけるだけじゃないか。でも、出かけると考えるなら、カラオケじゃないな」

「そうよね。高校生が行きやすい場所ね」


 華音はスマホを取り出し、調べ始めた。こいつ、全くの無計画で何をする気だったんだ。なんというか、女子みたいに『私、行きたいところがあるの』みたいな雰囲気を出さないだけ、楽なのかもしれないがな。


「あ、ここいいんじゃない。これどうよ?」


 華音が俺にスマホを見せてきた。その時にふいに華音の体が俺の近づき、少し焦ってしまった。何だろう、女子にふいに寄られるのって、なんかドキッとするものだなと。それに修学旅行からは、意識しているからか、こいつが少しでも近づいてくると、心が高まってしまう。

 今まではこんなことなかったから、隠すのに必死だ。女子との経験が浅い俺には、結構きつい。相手にバレてそうで正直怖い。


「どうしたの? なんか焦っているみたいだけど……」

「そ、そんなことない。それで、いいところってどこだ」

「ここよ。池袋にあるみたいね」


 華音は俺にスマホの画面を見せると、そこには池袋の遊び場的なものが載っていた。そして、その中から選んだものを見せてくる。


「ナンジャタウンとかサンシャインとかいいよね。池袋といえばって感じがするし」

「ああ、室内型テーマパークだっけ? 確か! それと、サンシャインって水族館のことを言っているのか」

「その水族館以外にどこがあるのよ。どう見ても、サンシャインといえば水族館でしょ」


 華音が呆れた顔で俺のことを見る。俺は変なこと言ったか。いや、言っていない。だって、サンシャインってシティがついていて、大型ショッピングセンターみたいなものだからだ。こいつはテレビのCMでサンシャイン水族館ばかり取り上げられたことがあったから、それしか思っていないんだな。それにナンジャタウンもサンシャインシティの中にあるんだし。


「まあ、そうなんだが。一応、確認のために聞いただけだ」

「そう、ということは私を信頼していないってこと?」

「そうなるわけだな。だって、華音だからな。信頼できないな」

「何よ、私のどこが信頼に値しないというの?」

「ポンコツなところ? それと、サンシャインシティなのにサンシャインとか、ナンジャタウンはサンシャインシティの中にあるのに、単体であると思っている時点で信頼できるわけないだろ」

「そうなのね。でも、私もしっかり調べたのよ。私頑張ったじゃない。認めてくれてもいいでしょ」

「そんなことより計画を立てようじゃないか」

「そんなことって言われた。そんなこと言って言われた。結構重要なことなのに……」


 華音が悲しそうな顔をしているが、そんなことにかまっている余裕はない。目の前の華音を励ますことも重要だが、それよりも出かけるならどのようなルートで行くかのほうが重要。だって時間は有限でだし、お店の営業時間だってある。

 本当にそういうところを考えないんだよな。マジで考えないとな。

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