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無関心な恋愛ライフ  作者: 航作裕人
最終章 和孝と水奈と華音
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1 日常は浅はかなもの

 学校での一大イベントの修学旅行が終わり、日常へと急に戻された気分である。二年生も残りわずかで、来年には受験生だ。高校生での生活はもう半分すぎてしまった。なんだろうか、無気力な感じになりそうだ。


「なんか、短い一年だな。その前の年はここまで騒がしいとは思ったことなかったのに。やっぱり、水奈が来てから何だろうな」


 俺はふと、思い返す。水奈との出会いを。あの時は女性に対する免疫がなかったせいか、勉強ばかりのガリ勉であった。


「おーい、和孝。今日は普通に授業だよ」


 扉の向こうから華音の声が聞こえる。何とも言えない日常だ。


「はいよ、普通に学校か。なんか、北海道にまだ居たい気分だな」


 俺は独り言のようにそうつぶやく。華音にはそれが聞こえたのか、ドアの向こうからまた声が聞こえる。


「そうねって、あんな散々な修学旅行なんて、早く終わって正解だわ。てというか、ドア開けるわよ」


 声かけと同時に俺の部屋のドアが開かれた。なんだろう、この日常に戻ってきた感は。てか、こいつは俺をおこしに来たことあったっけな。


「なんか、余韻に浸っているみたいだけど、大丈夫なの、ガリ勉君?」

「おいおい、何だよそのあだ名。俺は別にガリ勉じゃないぞ。今はな」

「そうですかそうですか。今までなんか勉強が友達みたいな感じだったのに、急に変わっちゃってさ。何なのよ」

「別にいいじゃないか。勉強ばかりしているのも疲れただけだ」

「違うでしょ。勉強しかやることがなかったからやっていただけでしょ。どうせ、恋愛に現を抜かしているんでしょ。顔に書いてあるものね、本当にいやになっちゃう」


 なんだろう、平日の朝っぱらからなぜ、呆れられているのだろうか。自分でもよくわかっていない。ヤバい、勉強ばかりしていたせいか、本当に相手のことを考えられなくなったかもしれない。


「それよりも早く準備しないとヤバいな」

「本当よ、二日間も修学旅行の余韻に浸りながら、『北海道行きてぇ―。北海道行きてぇ―』とか言っていたんだから」

「そうだよ、お兄ちゃん。せっかく帰ってきて、遊んでもらおうと思ったのにな」


 華音は驚いた顔で水奈を見ている。それに対して、水奈はニコッと笑う。


「水奈、あなたはお風呂に入った後、狙っていたというの!」

「何言っているの、お姉ちゃん。違うよ、次の日にどこか連れて行ってもらおうと思っていただけじゃない。それなのに、お兄ちゃんは廃人かのようにスマホの写真を見ているし、自室にこもっちゃうし、全然相手にしてくれなかった!」

「それは悪かったな。水奈が何か言っているとしか思えなかったんだ。でも、俺には関係ないと思ったんだ。ごめんよ」


 俺は水奈に対して、腰を曲げて謝ることにした。そんな俺を見た華音が口を開く。


「和孝って、本当にサイテーというか、相手の心を傷つけるのうまいわよね。その辺は感心しちゃうわ」

「なんで、ちゃんと謝ったじゃないか。どこがおかしいというのさぁ」

「いや、謝り方といい、言い訳といい、見苦しい。それに、完全に水奈のことに興味がないかのようないいようじゃない」


 俺と華音が言い合っていると、水奈の顔が怒った顔から悲しそうな顔へと変化した。


「ほら、水奈は傷ついたんじゃない。これ、泣きそうな顔だよ。うぁー、女の子泣かすとか、男としてどうなの? それはよくないんじゃないの。恋愛する気なら、直しなよ」


 正論を言われてしまった。華音がいうように水奈の目から涙がこぼれてきた。本当に人のことを考えられない人になってしまったようだ。でも、俺悪くないでしょ。


「なんか、和孝の顔には俺、悪くないっしょって感じが出てる」


 おいおい、なんでわかるんだよ。俺って、そんなに顔に出るタイプなのか、おかしいな。そんなことはないような気がしたんだが……。


「水奈悪かったな。でも、今日学校だしかまってられないんだよ。だって、あともう少しで登校時間だし」

「それはそうだけど、それでも夜はかまってあげなよ」


 何だろう、華音がお姉ちゃんらしいことしているなと感心してしまった。いつもは水奈とけんかしているようなことしかなかったはずなのに……。

 こいつも成長しているんだな。その一方の水奈というと、感情の浮き沈みが激しいみたいだ。俺がかまってあげられないことをいうと、悲しいそうな顔になって、華音が俺に向かっていうと、『そうだそうだ』と言っているかのような雰囲気で俺を見てくるのだ。

 本当におかしな姉妹なこと。それでも、この日常が続けばいいのにと思っている俺も大概だが。


「なんか、朝から変な空気になっちゃったわ。和孝、早く支度して学校に行くわよ。水奈もしっかりと学校に行きなさいよ」

「そんなのわかっているよ。だって、お姉ちゃんがいないときはちゃんと1人で支度していたんだから、大丈夫。心配しすぎ。本当に世話の焼けるお姉ちゃんなこと」

「う~ん? なんか言った?」

「いや。べ~つ~に~」


 俺にははっきり聞こえた。『世話の焼けるお姉ちゃんなこと』と。水奈はあまりお姉ちゃんという認識はなさそうな感じだ。どちらかというと双子みたいな感覚なのだろう。なんというか不思議な感覚だ。


「何ニヤニヤしているのよ。早く行くわよ」


 どうやら、俺の顔はニヤニヤしているらしい。俺としたことが、顔が緩んでいたということだろう。なんだろう、この感じ。

 俺は華音に引っ張られながら、いつもの通学路で学校に向かうのであった。

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