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無関心な恋愛ライフ  作者: 航作裕人
第七章 華音と和孝
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49 久々の帰宅

 バスは家の近くのバス停へと到着する直前だった。放送で近くのバス停の案内が入った。俺は欠かさず、バスに備え付けてあるブザーを鳴らす。


『次、止まります。バスが完全に停車するまで、席を立たないように、ご協力お願いいたします』


 沈黙が続いていたバスの中にアナウンスが響くと、家に戻ってきたんだなという実感が芽生えた。


「華音、もうそろそろ家に着くな」

「そうね。これで本当に修学旅行はおしまいね」

「長いようで短かったな。本当に恐ろしいことばかりで大変だった」

「それは言えてる。本当に大変だった。本当にあの担任は何を考えているのかわからないわ」


 しばらく話しているうちにバスはバス停へと停車した。


「華音、荷物を持って降りるぞ。支払いは俺がしておくから」

「わかったわ。キャリーケースなどの荷物を整えるわ」


 俺は横に転がしておいたキャリーケースをバスの先頭まで持っていく。そして、財布からお金を出す。


「すいません。二人分清算したいのですが……」

「はい、かしこまりました。しばらくお待ち下さい」


 バスの運転手は運賃箱の設定をいじっている。その一方で、華音はキャリーケースをもって、準備完了状態。清算が終われば、出れるという感じだろう。


「お待たせしました。二人で四六〇円です」


 俺は財布から四六〇円をピッタリと出し、運賃箱へと入れる。


「ご乗車ありがとうございました」

「ありがとうございました」

「ありがとうございました」


 俺と華音はお辞儀をしながらバスを降りた。自力で自分のキャリーケースをおろすが、華音は降ろせなかったので、片手でキャリーケースを降ろすのを手伝った。


「ありがとう。なんか、迷惑ばかりかけたわね」

「迷惑なんて思っていないよ。家族なんだしさ。とりあえず、家に向かおう。あぁ~、疲れた」

「そうね。早く寝たい気分だわ」


 俺と華音はバス停から数キロ離れた家までキャリーケースを転がしながら、歩いていく。本当に戻ってきたんだなと思ってしまう。

 さっきまで北海道にいた気分だ。いきなり、修学旅行だと告げられ、荷物を持ち、飛行機で北海道に向かった。それからいろんなところを回っていった。もう、疲れ果てた。


「和孝。何か考え事?」

「今までの出来事を整理していたんだ」

「それって読者に向けての振り返りってやつ? そういうやつでしょ。私、知っているのよ。なんかいきなり回想に入るやつでしょ」

「そんな漫画やアニメみたいなことが起きると思うか! ただ、俺の脳内で整理しているだけだよ。そんなたいそうなことはしていない」

「そう? どう見てもお待ちかねという感じで回想シーンに入ると思ったのだけど……」


 1人で盛り上がっている華音。確かにこの感じは、回想シーンに入る感じだろうけど、そんなことはない。ただの思い出しだ。本当だからな。


「それよりも、そんなに家が遠いわけじゃないのに、家が遠く感じる。なんでだろう?」

「それは疲れているからだろ。いつもは元気いっぱいア〇パ〇マ〇だからだろ」

「ちょっと、何言っているか分からない」


 華音は死んだような目でこちらを見ている。声のトーンもマジトーンであった。これは本当にひかれた時の反応だ。これは本音だろう。


「ふざけたのに、その反応はないだろ。本当にそれはショックだわ。泣きそうだな」

「ウソ泣きはいらないのよ。なんでこんな時に泣くという発想になるのよ。それよりも周りの目が痛いからやめて!」


 俺が泣きマネをするものだから、焦っているみたいだ。それにしても、バス停から歩いていると多くの人とすれ違う。家の近くってこんなにも人多かったっけな。


「そんなことをしているうちに着いたわよ。本当に疲れて頭がおかしくなっているのかわからないけど、おもりが大変だったわ」

「おもりっていうな。それは言わないお約束だろ」

「そんなの知らないわ。ちょっとは周りの目を気にしたほうがいいじゃないの。本当にこっちは大変なんだから!」

「ごめん、悪かったよ。というよりも家のドアを開けないの?」

「和孝がうるさかったから開けなかったのよ」


 嘘である。完全に水奈が俺によって来るのがいやなだけだろう。まだ俺と一緒に居たいとでも思っているのだろう。まあ、そんなことを考えていると自意識過剰といわれそうだから、この辺にしておくか。

 手に持っているキャリーケースを置き、家のドアを開ける。


「お帰り。遅かったじゃない。二人が帰ってくるのをまっていたんだよ」

「ただいま。水奈、お土産買ってきたぞ。とりあえず、俺と華音は疲れているから、ご飯食べたい」

「そんなことだろうと思って、お母さんが作っているわよ。早く、リビングに行くよ」

「わかったよ」


 水奈に言われるように俺と華音は靴を脱ぎ、上がる。キャリーケースはローラーの部分が汚いことも予想できるので、玄関に置きっぱなしにする。


「お帰り。遅かったわね。ご飯の準備できているから二人で食べてね」

「ただいま。はぁ~、本当に疲れた。すごく担任が振り回すからいやになる。全くこっちのことを考えないんだものな。華音もあの担任には振り回されて大変だったろ」

「それはね。いろいろと正気って思うことは多かったわ。まあ、和孝と一緒だから乗り越えられた感はあるわね」

「そうか、それはよかった。早く食べないとさめちゃうな」

「それだけ? もっと言うことがあるでしょ」


 華音は俺の発言に目を丸くしながら、机を勢いよくたたく。それにおどろく水奈と母。でも、二人の目は「このこの~」と訴えかけてくるような感じである。本当に鬱陶しい。


「ご飯食べ終わったら、早くお風呂も入っちゃいなさい。家族だから、華音と和孝の二人で入ってもいいかもね。水奈もお兄ちゃんの背中を流したいのなら入ってもいいのよ」


 母が余計なことをいう。さすが二人とも否定をするでしょ。異性である俺と一緒に入るということだから、好きだと言えない二人ならね。


「和孝とね。家族なんだから一緒に入りましょうか。私はいつでも準備オッケーよ」

「私だって疲れたお兄ちゃんの背中を流すために入るわ」


 ――えぇぇぇぇぇ。なんで、美少女二人が普通に入るとか言っちゃっているの。そうか、これは夢だな。絶対にこの二人がそんなこと言うはずがない。

 俺は左手で頬を引っ張ってみる。痛い。これは現実。もしかして、華音は疲れすぎておかしくなってしまったのか。それはあり得るかも。一番否定しそうな奴だもの。


「和孝、モテモテね。これをなんていうんだっけね。あぁ~、ハーレムっていうのね。こんな美少女と入れるなんて罪な男ね」

「お母さん、からかわないでよ。俺は健全な男だ。この二人がおかしいんだ」

「水奈、華音。和孝があなたたち二人をおかしいといっているけど、女性にそんなことをいうなんてありえないわよね」

「ありえないわね」

「ありえませんね。お兄ちゃんはもっと喜ぶべきなのよ。女性二人とキャッキャウフフができるのに、その反応は何なの!」


 水奈は少しご立腹だ。それもそうだろう。俺と華音は修学旅行でイチャイチャしているけど、自分はその輪に入れなかった。それが悔しいと思っていたに違いない。てか、俺って完全に自意識過剰ですな。


「すいませんでした。二人に甘えます。でも、言っておくからな。俺の猛獣がどうにかなっても、暴れるなよ。生理現象なんだから」

「何言っているの。そうなったほうがうれしいに決まっているじゃない」


 ――おいおい、何を言っているのですか、華音さん。それ以上はピーの領域ですぞ。本当にこいつって疲れると飛んでもないことを平気で行ってしまうタイプなのか。

 華音はご飯もふらふらしながら食べている状態だ。完全に頭が働いていないと言ってもいいくらいキレがない。

 それにしても、そんな状態を平気な顔で見ているうちの母ってどうなんだ。それに男1人と女二人でお風呂に入ることが、高校生とって刺激的なことだって認識していないのか。本当に謎すぎる。俺は自身を持って言える。今のつかれた状態では理性がいきなり飛んでしまうことも……。

 考え事をしているうちに給湯器から音が聞こえた。


『お風呂がわきました』

「あら、お風呂わいたってね。三人ともお風呂に入ってきなさい」

「わかったよ。ちょうどご飯も食べ終わったし、入ってくる。ほら、華音、水奈行くぞ。後で後悔しても知らんぞ」

「大丈夫よ。和孝と一緒に入れて幸せだから……」


完全に本音が駄々洩れだ。早くお風呂に入って、こいつを寝かさないと……。


「はい、ではお背中を流しましょうね。お兄ちゃん早くしてね」

「はいはい」


 俺は華音を連れて、お風呂場へと向かった。本当に俺の理性が保てるかが試されているような気がする。

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