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無関心な恋愛ライフ  作者: 航作裕人
第七章 華音と和孝
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47 修学旅行の疲れといろいろな思い

 秋葉原駅の昭和通り口からでて、すぐ左側にはお店が並んでいる。ある程度をあるっていると右側に日比谷線・東武都市線の秋葉原駅に降りる階段が現れる。そこから、地下へと下っていく。

 重たい荷物を離れないように持ち、通路を押していく。


「やっぱりこの時間は結構混んでるな」

 

 現在の時刻、十七時二十三分である。先程、山手線から降りたときが十七時十六分であり、そこから改札を通りやってきたら、もうこんな時間である。

 そしてこの時間はラッシュ時間にも当たる可能性が高い。


「ほんと、席に座れそう」

「そんなことはないだろ」


 がっかりしている華音をあやす。もう、疲れていて、ずっと座っていたいのだろう。ただでさえ、学校に振り回されているんだ。疲れるだろうな。


「とりあえず、向かおう。電車もどんどん来るし、ラッシュ時間にもあたってしまう」


 俺と華音は、長めの通路を突破した後、左に曲がり、日比谷線・東武都市線の秋葉原駅へと急ぐ。

 しばらく歩いていると頭上に改札を案内する掲示板が登場し、それを見てはまっすぐ進んでいく。目の前に改札が現れるとそのままタッチをして、通過する。

 この日比谷線・東武都市線の秋葉原駅には四つのホームがあり、一番線は日比谷線の中目黒行き、二番線は東武スカイツリーライン直通の北千住方面、三番線は東武都市線の荒川都市行き、四番線は東武都市線、国立学園鉄道直通の国立学園行きである。   

俺が住んでいる最寄りの荒川都市駅は三番線でも四番線でも問題ない。なぜなら、東武都市線も国立学園鉄道も通るからだ。だが、俺らは混雑の少なそうな4番線から出る電車で帰ることにした。

ホームにはまだ電車はきていない。俺と華音はエスカレーターでホームに降り、乗車口の印の辺りで電車を待つことにした。


「もう、修学旅行も終わりなのか」


 俺は一人ため息をつきながら、小言でいう。それを聞いていたのか、華音が口を開いた。


「本当よね。まちゃくちゃな修学旅行だった。本当に楽しくなんかなかった」


 その言葉が気になった俺は華音の顔を見る。華音の目は潤っていた。多分、言葉と本心は裏返しなのだろう。本当は楽しくって仕方なかった。そして、一番楽しかった学校行事が終わったのが心残りだったのだろう。本当にわかりやすいやつだ。


「おいおい、なんで目が潤っているんだよ。目にゴミでも入ったか?」

「うるさい、顔を見るんじゃないわよ。全く、もう。この涙は家までとっておくつもりだったのに」

「まあまあ、気持ち抑えて。素敵な顔が台無しだぞ」

「また、からかって。そういやって、いつもからかうから嫌なの。だから、抑えていたのに」


 俺は知っている。こいつがすぐに涙を流すことを。どんなに隠しても、家族いや、大切な人になったのだから。俺もウズウズしている場合ではない。


「まあ、支えてくれる人はいるさ。近くにな」


 華音は誰のことと思うばかりに、俺の顔を見ながら頬を叩く。


「そうね。私の大切な人は身近にいるのかもしれないわね。本当にいつも支えてくれる人が、ね」


 俺の鋭い勘が騒いだ。完全に華音は、俺が好きだということに気がついていることを。それを知っていて、ごまかしているのかもしれない。いつから、こいつのことばかり見るようになったのだろうか。

 そんな話をしていると、ホームには接近放送が流れ出した。


『まもなく、四番線に東武都市線、国立学園鉄道線直通、国立学園行きが八両編成で参ります。白線の内側でお待ち下さい』


 すぐに電光掲示板を確認した。すると、多少遅れていることがわかった。一応、電車の時間を調べていたのにも関わらず、発車時刻になっても来ないのでびっくりした。

 しばらくして、電車が地下で音を立てながら、入線してきた。


「乗るぞ。準備しておけ」

「うん」


 俺と華音は手に持っていたキャリーケースを少し持ち上げ、ドアが開いて降りる人を確認した後、乗り込んだ。

 時間帯的に少し混んでいた。学生が帰る時間とぶつかったのだろう。それにもうそろそろすれば帰宅ラッシュにもぶつかる。いいタイミングで電車に乗ることができた。


「やっとこれで帰れるわ。疲れたな。本当に振り回されぱなしで」

「たしかにな。こんなにも振り回されるとは思わなかったし、帰りは電車で自力で帰れとかどんな神経しているのやら」

「あの担任、少し抜けているのよ。普通に考えて、バス必要でしょ」

「確かに、わざとやっているようにしか思えない」


 担任が笑いながら、「俺の勝手だろ」といっているような状態が想像できた。相変わらず、ひどい顔だ。


「とりあえず、帰ったら寝るかもしれない。ここまで疲れるとはおもわなかったしな」

「そうね、玄関で倒れるように気を失うんじゃない。実際には失っていないけど……」

「それで水奈が何事と思いながら、焦る顔が浮かぶしな」

「あまり、妹をいじめないでよと言いながらも、私も言えないわね」


 久々に華音の笑顔を見ると、やっぱり美しい顔をしている。でも、ツンデレなんだか知らないが、ツンツンしているのが好かれない理由な気もするが……。

 なぜ、俺なのだろうかといつも思ってしまうけど、何かあるんだろうな。俺には理解できないのか、忘れていることなのか。それは本人しかわからないこと。考えても無駄だ。


「ゆっくりと最寄り駅まで乗ろうじゃないか」


 俺は華音と話しながら、こんな日がずっと続ければいいのにと思うばかりであった。



 電車は東武都市線内を走り、都営大江戸線の乗換駅の新御徒町、南千住に停車していった。もう次は荒川都市だ。都心を通り越すと早いものだ。


「もうそろそろ、つくぞ。準備しろよ」

「わかっているって」


 華音は座っていた席を立ち、キャリケースを引きながら、電車の出入り口に立つ。それと同時くらいに俺もキャリケースを持ちながら、同じく電車の出入り口に立つのであった。


『次は荒川都市、荒川都市。お出口は左側です。東武スカイツリーライン、北千住、東武動物公園方面はお乗り換えです。この電車はこの先、国立学園鉄道へと入ります』


 車内放送が入ると、他の客も一斉に準備し始めた。どうやら、乗り換えや降りる人が多いみたいだ。確かに、国立学園鉄道は国立学園のために作られた専用の電車だ。だからこそ、学生の乗車率が高いのも事実。

 この直通運転もあまり意味を出さないわけだが、そこには意味がある。下校時間にあわせての輸送力を上げるためである。ただそれだけのために直通しているのだ。

 荒川都市に俺が乗る電車が入線し、ホームドアの停止位置に止まろうとしている。


「行くぞ。人混みに揉まれないように一度、電車の外に出てから整理しよう!」

「そうね。乗り換え客と降りる人多いものねっ。別に急がなくてもここからならそんなにもかからないし……」


 俺と華音はドアが開くと、すぐにホームへ降りるとホームの中央に行き、人混みがすくまで待つ。華音は電車から出てくる人たちを見て、驚く。


「こんなにも降りる駅なのねっ。やっぱり都会っていう感じがする……。いつも……いつも、学校方面から来るからあまり人が乗っているという感じがしなかったのよね!」

「まあ、都会のほうから来る電車だからな。特に、この電車は日比谷線から分岐しているからな。まあ、この辺の人たちも多いってことだ」


 俺と華音は電車から降りる人たちがおさまってから駅へと降りると、上に向かうエスカレーターが混んでいるのが見えた。


「結構混んでね。乗る号車間違えたかもな。ここは階段もエレベーターも近くないし、エスカレーターくらいしか上がれないから混むんだ」

「マジで言ってる? 上がるまで時間かかるじゃない。もう疲れているというのに……」


 この荒川都市駅は東武都市線は地下にあるため、エスカレーターや階段の距離が長い。そして、乗車率も多いと混んでしまうという特徴がある駅だ。


「とりあえず列に並んで、登っていくしか手段はないな。階段だとこのキャリーケースを持っていくのは厳しいだろうしな」

「わかったわよ。はぁ~、家までまだ長いし――。それよりも歩いて帰るんじゃないでしょうね」

「何言っているんだよ。歩いて行くに決まっているだろ。東京だと車が不便だから、うちは車がないでしょ」

「そうだった」


 華音は死んだ魚の目をしながら、キャリーケースにしがみついている。よほど疲れたのだろう。楽をさせてやりたい気持ちはあるが、移動手段がない。


「そういえば、バスが通ってなかったっけ。ちょっと駅まで上がったら見てみるか」

「そうね。バスがあるのなら、近くまで行きたいわね。家ってここからあるって十五分くらいあるんだから。学校に通うときはきつくないのになぁ。疲れってホントに天敵ね」


 順番に並んでいるとエスカレーターに乗れる番になり、キャリーケースをうまくエスカレーターの段乗せた。一方、華音はキャリーケースを最初に乗せて、次の段に自分が乗ることで、前のキャリーケースで楽ができると考えたみたいだ。こういうところは利口というか、勉強とかで発揮してもらいたいものだ。

 エスカレーターはゆっくりと駅の入口へと向かう。エスカレーターから見える上階は小さく見える。上がるのに五分かかるのだから困ったものだ。


「なんで、こんな下に駅を作ったのか。謎すぎる路線だよな」

「それでも、私たちにとっては便利なんだからいいじゃないの。この辺、あまり電車通ってないし、秋葉原に行くのって意外と大変だから」

「それもそうだが、こんな地下に作らなくてもいいと思うだが」

「それに関しては同意するわ。でも、仕方なかったんじゃないのかしらね。私にはわからないけど……」


 そんなことを話しているうちに上階が近づいてきた。華音はずっとキャリーケースに抱えている。


「少しだけど、上が見えるわね。やっとって感じ。早く帰りたーい」

「俺もそうだよ。いろんなことに巻き込まれて、疲れ果てた。はやくねぇ……」

「寝るんじゃないわよ。それよりもよくこんなところで寝れるわね。信じられないわ」

「眠いんだから、どこでも寝れるでしょ」


 俺が普通だと思っていることを言葉で返すと、信じられないというばかりの顔でこちらを見ている。俺はなにか間違ったことでも言ったのだろうか。


「はぁ? 何言っているの。普通に考えて、どこでも寝れるわけないじゃない。あなた馬鹿なの。というか、ガリ勉だものね。そういうのは知らないわよね」

「その言い方は侵害だ。がり勉じゃないわ。そんなこと言っているうちに上についたぞ」


 エスカレーターの部分は筒のように囲まれている感じであったが、上に上がってくると天井は高く、今風のつくりであった。大きな柱がいくつもあり、駅入口の上部はガラス張りになっている。俺たちはエスカレーターから降りた後、目の前にある改札を通る。

 その後、駅前ロータリーにあるバス停を一から四まで見ると、三番目のバスには国立学園行きと書いてあった。


――なるほど、荒川都市から国立学園方面に行くバスも走っているのか。でも、国立学園鉄道ができてから減便したみたいだな。


 俺は、時刻表と停留所を見てみると、確かに家の近くまで行く停留所があった。俺は知らなかった。自分の家の近くから駅まで行けることを。


「これを知っていれば、水奈と最初に駅に向かうときに歩くこともなかったのに。それに自転車でいかなくてもよかったじゃん」

「今頃気づいても遅いわ。これから使っていけばいいじゃない」

「そうするか」


 華音は俺の変化に気が付いたのか、疲れた体で俺の体をたたく。それはいつもよりも優しく、よくわからないが、温かい気持ちになった。


「あなたには私がついているわ。一人じゃないから安心して」


 何も言えなかった。いつも見せない華音の姿。大人ぽくって、色っぽい。


「本当に情けないよな。同級生に不安をかけるようなことをして……」

「気にしないほうがいいよ。私たち家族じゃない。同じ屋根の下で住んでいるんだから、和孝の変化には気づくのよ。女ってそんなものなの」

「そっか、女性は強いのだな。俺にはそんな疲れてまで相手を和ませることはできない。男がどれほど勝手なのかよくわかるよ」


 俺は複雑な気持ちだった。修学旅行から現実に戻されたというべきか。俺のことを好きな二人、華音と水奈。この二人のどちらかを選ばなければいけない。その気持ちがいきなりやってきた。こんなの初めてだ。本当にどうするか決めないとな。

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