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無関心な恋愛ライフ  作者: 航作裕人
第七章 華音と和孝
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41 カラオケとネタに突っ込む俺

 一行は買い物を済み、バスに乗り込んで旭山動物園へと向かう。


「なんか、歌が歌いたい気分だな。旭山動物園まで距離があるんだろ。なら、おれが歌いたいね」

「そんなこと言っても、難しいだろうよ」


 どうやら、俺が歌うことが嫌みたいだ。聞いたことあるのかといいたくなる。


「まあ、どうにかできるだろ」


 コソコソと話していると、担任がガイドのマイクを取り、話し出す。


「おーい、みんなお疲れ。どうにか楽しむことができたみたいだな。それはよかった。今向かっている旭山動物園はかなり遠い場所にある。それまでの時間はカラオケだぜ」

「「ウェ――。たのしも――ぜい」」


 バスの中はとても賑やかである。こんなにも賑やかにいられるのはなぜだろうか。


「では、ここで歌ってもらうのは和孝。お前だ」


 担任は俺を指さしながら、指名してきた。まじかよ。最初から指名してくるとかないだろ。俺だって、緊張はするんだぞ。


「和孝。何やっているのよ。早く、歌いなさいよ」

「うるさいな。トップバッターというのは緊張するんだから、焦らせるな」

「そんなこと言われたって、この空気を早く変えなさいよ」

「やれやれ、この二人はいつも通りだな」


 吠える華音とは真逆の真司。この言い合いも見慣れたということだろう。


「そんなこと言って。真司だって、聞きたいんじゃないの?」

「それは聞きたいが、焦らせてもいいものが聞けないだろ。そこはゆっくり選ばせといて、ハードルを上げることで緊張させるのも手だろ」

「お――い、聞こえているぞ。俺で遊ぶなぁ。どう見ても、一番楽しんでいるのは真司だろ」

「そんなことはないよ」


 カタゴトで返す真司は、どうやら俺で楽しんでいるみたいだ。勘弁してくれ。なんで、俺の周りにはSみたいなやつしかいないのか。真司とか真司とか真司とか。あぁ、忘れてたが担任もか。


「とりあえず、歌わないと終わらないらしいな」

「当たり前だ。お前は馬鹿か」

「そのネタは古いし、出〇のだろ」

「よくわかったな。さすが、和孝」

「ふざけてないで、速く歌ってよ」


 いつも焦らせるのはお前か。華音。



 無事に旭山動物園についたご一行は、バスを降りると興奮し始める。


「ここが旭山動物園かぁ~。一度は来てみたかったんだよね。だって、この動物園は全国的に有名なところだものね」

「華音。はしゃぎすぎだ。高校生になってみっともないぞ」

「そんなこと言っている和孝は、歌っているときはすてきだと感じたのに、終わったらこれだから、いやになるよね」

「それは同感だな。俺も、あの時の和孝君すてきとか思っていたのに。そして、いつでも見てられるなぁとか思っていたのに、本当に残念ね」

「真司。お前ってオネエとかじゃないよな。本当に心配しなくてもいいんだよな」

「何言っているんだよ。普通の男の子だよ」

「男の娘じゃなくって?」

「とうとう、男をそんな目で見るようになったのか。信じられないわぁ~」


 棒読みの真司である。それにしても、動物園についたのはいいが、何か見るものでもあるのか。全然思いつかない。


「和孝がポカーンとしているけど、大丈夫」

「だいじょうぶに決まっているだろ。でも、ここにきても目的がなくって」

「つまんねぇ――男だな。やっぱり」


 真司が辛気臭そうに見ているのを感じ取ると、なんか切なくなる。


「みなさん、お待たせしました。ここがあの有名な旭山動物園ですよ。わ~い、楽しい」

「とうとう、ガイドまでもが頭がイってしまったようだな。そう思わないか、和孝」

「本当にそういうことを真面目な顔で言うのやめて。笑いがこみ上げてくるから」


 俺は抵抗できなかった。笑いをこらえることができずに噴出した。それもパロディネタをするガイドが悪いんだぞ。け〇のフレ〇ズの真似なんかするからだろ。今問題になっているからって、ネタにするんじゃねぇ――。


「さて、おまぇら。ちゃっしゃと、やるブフッ――――」


 はい、担任OUT。これはケツバット確定だな。というか、あのネタに爆笑しすぎでしょ。どこがおもしろいんだ。それも女性がやるから受けるのか。


「なんか、みんな笑っているね。これはどういうことかな?」

「やべぇ――、一人だけネタがわからないやつがいた――。華音、お前はあの騒動も知らないのか」

「何あの騒動って?」

「マジかよ。俺はしっかりしているぞ。ここで説明すると消されるから言わないけど……」

「別に大丈夫だよ。消されても悲しみ人いないから」

「地雷を踏むな。俺がどんな思いでいるのかを知っているのか」

「おいおい、どこぞの声が混じっているぞ。作者かね」


 真司、今のは突っ込むところじゃないだろ。べっべつに誰かの意思なんて引き継いでいないんだからね。


「お前らいい加減にしろよ。作品のことで争っている場合か。別にばれたところで有名でもなんでもないんだから、何かされることはないだろ。売り上げているわけでもないし」


 今まで聞く耳を持たなかった担任が問題に大きな傷を残した。やめてくれ。これ以上あれるのは勘弁だ。


「一番現実的なことを言ってきたのが、担任でびっくりだわ。本当のこと言ったら、傷つくことだってあるだろうよ」

「そんなもの知るか。俺は俺の意思で動いているんだ。そんなことで俺の登場シーンが減るわけでもない」

「担任の不意な言葉で作者を傷つけた」

「おいおい、和孝。いきなりネタを使うんじゃない。それはとあるクソアニメだろ」

「この時間軸にはそんなアニメは存在しませんよ」


 知っていてもシラを切る。今の時代には必要なことさ。さあ、真司よ、どのようなことを言ってくるのか。俺は準備万端ね。いつでも、できるぞ。


「やめてください。私のために争わないで」

「「別に、お前のためじゃねぇ――よ。自意識過剰にもほどがあるわぁ――」」


 三人の声はほかの観光客も驚させるものであった。そして、三人とも何の話をしていたのか忘れてしまった。


「本当にふざけたメンバーだよね。頭のねじがないのは一緒だということね」


 華音がため息をする中で、ガイドは真面目な顔で話し始めた。


「さて、コントはこのくらいにして、中に入りますよ。これだけで相当な労力を使ってしまいましたが、これからが本番ですから覚悟しておいてください」

「「は――い」」


 これから何かが始まるのだと思うと、気になって仕方ない。それでこの動物園では何が有名なのか想像できない。勉強しかしてこなかった代償なのかもしれない。もう少し、周りを見ていくことが必要だと思った瞬間であった。

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