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無関心な恋愛ライフ  作者: 航作裕人
第七章 華音と和孝
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36 経験と精神

 修学旅行も三日目へとなった。今日のプランは札幌市内を見学した後に旭山動物園なのだが……。


「和孝。私だけを見て、いいから」


 朝から大胆な寝言を言っている華音。そして、俺のベットの中にいつの間にかいる。俺の恐ろしい精神が目を覚ましてしまいそうだ。勘弁してもらいたいものだ。こんなところで恐ろしい猛獣精神が目を出したら、大惨事。学校内で浮くことになりかねない。抑えなければ……。


「和孝は私のこと好き? それよりも水奈のほうがいいの。妹としてご奉仕してもらうのがいいの……」


 寝ているはずなのに、おもっきりすごいことを言っていらっしゃる。これはまずい。それよりも、こいつを見ると白く輝いた肌が首ものあたりに出ていて、その下にはあるもっこりが目立つ。そして、少し動くとあるもっこりが見えそうで、俺の猛獣精神が開花してしまう。

 横に寝ているというだけあって、ラインがすごくわかってしまう。それだけではない。抱き着かれたりしたら、あるもっこりの感覚や体温が直接触れることになる。それは恐ろしい。


「華音。朝だぞ。起きないと遅刻するぞ!」

「えぇ――。大丈夫よ。あと一時間くらい寝かしておいて」

「さすがに、長いわ。集合時間どころか、自由行動もなくなるだろうがぁ――。気づけ、馬鹿」

「ば――馬鹿とは何よ。私に向かってそんなこといっていいの。すべてばらすわよ」


 馬鹿といった瞬間、飛び起きるように目を覚ました。どうやら、朝からご機嫌斜めになってしまった。


「私がばかなら、和孝はもっと馬鹿よ。どうせ、私の体に発情しそうになったんでしょ」

「失敬な。そんなことはない。猛獣精神が開花しそうになっただけだ」

「それが発情というの。ばっかじゃないの。そんなことも知らないで、ガリ勉なんていわないでよ。私のほうがガリ勉になるわ」

「そんなことは許さない。お礼状の存在は排除して見せる。お前のは雑学王だろうがよ。ガリ勉とは大違いだ」

「なんでガリ勉にこだわるのよ。いいじゃない。ガリ勉じゃなくてもさ」


 華音はまるでわかっていない。わかっているように言っていただけなのか、それとも忘れているのか。


「ガリ勉は俺の生きがいだ。それを捨てたら、何も残らない。それぐらいわかるだろ」

「わからないわよ。そんなことわかりたくもない。ガリ勉のどこがおもしろいというのよ。ただ、勉強にあけぐれるだけで人生が終わってしまうだけじゃない。そんなの末期よ」

「おっお前だけには言われたくなかったわ。俺の実力はそんなもんじゃないぞ……」


 勢いがすごかったのか、俺は華音との距離が近くなっていることに気が付かなかった。なんていうことでしょうか。それにあのもっこりが少しご挨拶しているではありませんか。はい、僕のあるものが死亡しましたね。これ以上は言いませんよ。


「なっなんでこんなに近くなっているのよ」


 どうやら、冷静にお戻りになられたらしく、理不尽なあれが飛んでくるかもしれませんね。俺の一日の始まりはこのような運命なのでしょうか。信じたくもありませんよ神様。


「てか、私のあれを見たでしょ。パジャマがずれていていたから、のぞいたんでしょ」

「そんなことはないよ。俺はただ冷静に戻った時に見えただけだよ。見る気はなかったの」

「私に魅力がないってこと?」


 そんなことは言っていないんだけど。華音は意外とあるほうだと思うし、体もすんなりとしているから魅力的ではあると思うな。こんなことは絶対に言えない。そして、俺の目の前には大きく振りかぶった腕があるではありませんか。はい、死亡フラグですよ。これがいわゆる、人生の不幸や理不尽なんでしょうね。そして、私の猛獣も限界だった。



「全く、朝っぱらから災厄だった。俺の人生は不幸と理不尽でできているのか」

「そんなことはないと思うけど……」


 華音との騒動が落ち着き、部屋を後にしたときに真司と会った。そこで朝の出来事を愚痴っていたわけだ。そして、華音は知らんぷりするかのように遠くにいる。俺の修学旅行は今までにないほど悪い意味で充実しているみたいだ。


「とりあえず、仲直りしたほうがいいじゃないか」

「確かにそうだと思うけど。バスも一緒だしな」

「あいつはめんどくさくなることくらい知っているだろ」

「そんなことはないと俺は思いたい」

「一番かかわりが多かった奴が知っているだろ、和孝」


 確かに華音と仲が悪くなるととても面倒なことになる。それに、俺はあいつとの関係に一歩踏み出してしまったのだから。本音で語り合いながらも、俺は捧げてしまった。彼氏として付き合うことを……。


「私と一緒に生きてくれる? つらい時も一緒に分かち合ってくれる?」


 そんな言葉が華音から出てきたとき、こいつもかわいいなと思ってしまい自分がいた。一緒にいて、過ごしたいと。


「俺には華音を幸せにできる自信はない。でも、そばで助けてやりたいという気持ちだけはある。それが答えでもだめだろうか?」

「う……うん、そんなことはないよ。幸せにしなくてもいい。そばにいて、寄り添ってくれれば幸せだもん」


 今までに見たことのない顔でこちらを見ていた。目には涙と口には喜びがあった。もしかすると、俺はこの言葉を言うことができない不器用な奴だったのかもしれない。だからこそ、やっとつながることができた。


「それなら、よかった。これからもよろしく」

「私こそ、今までごめんね。今後はいい感じになろう」


 なんていう感じだったのに。


「和孝? 聞こえるかい?」

「あっ。なんだよ、いきなり」

「今までぼーっとしていたぞ」


 どうやら、自分の世界に入るとダメなのは、俺もなのかもしれない。

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