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無関心な恋愛ライフ  作者: 航作裕人
第七章 華音と和孝
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34 辛さと涙

華音の思いを実感した俺は心が痛くなった。俺が思う以上に苦しんでいることが分かったのだ。


「とりあえず整理すると、お前はそんなにつらかったのに、なぜ言わなかったんだよ」

「だって、好きな人に言うのは、とても緊張するのよ。それがわかっていて言っているの!」

「そんなことないだろう。人前で発表するよりはましだと思うけど」


 俺は冷静に考えたときに、そんなことを思ってしまった。


「なんでそんなことが言えるの。私にはわからないよ」

「そんなこと言われてもな。俺とお前では考え方が違うのだから、仕方ないだろ!」

「それはそうだけど……」


 何か言いたそうな華音だが、うまい言葉が見つからないようだ。やっぱり俺には理解できないのだろうか。


「それよりも、こんな話をしないでさ。普通の話をしようよ」

「そんなこと言われても、私にとっては重要なことなんだから、話をそらさないでよ」


 華音はいつも以上の声で言い放った。それを聞いた俺は、驚いて心臓が飛び出るかと思った。


「周りに聞こえたらどうするんだよ。この部屋でもめているとかバレたら、面倒なことになるぞ」

「そんなことは関係ないもん。これは、家族での問題なんだから、周りがどうこう言えるものじゃないの。わかっているの!」

「怒ったように言わないでくれよ」


 そんなこと言っても、この勢いが止まるとは思えなかった。


「別に怒ってないし。ただ……」

「ただ、なんだよ。はっきり言えよ。そっちがその気なら、いろいろと言ってやるよ」


 つい、ムカっとしてしまった自分がいて、情けないと思った。


「いえるものなら言ってみなさいよ。あんたが思っているほど、私は優しくないし、意地が悪いのよ」

「そんなこと、約半年もいればわかるさ。それが本心でないぐらい。お前のことをどれだけ見てると思っているんだよ」

「……」


 華音は何も言葉に表すことができなかったようだ。


「華音。お前はいつも頑張っているよ。だから、恋愛について一生懸命考えていたんだろ。どうしたらいいのかわからずに。周りに相談することもできずに」


 華音は下を向いた。認めたくなかったのだろう。自分が一人で抱えていることを……。


「俺は知っているよ。お姉ちゃんとしてしっかりしないと思っても、なかなかできないと思っていることも」

「やっぱり、和孝にはすべてお見通しなんだと。鈍感に見えて、鈍感じゃないんだね。本当にすごいよ。私にはそこまで気づく能力はないよ」


 華音は涙を流しながら、辛そうに話していた。


「だから、もう頑張らなくてもいいんだよ。華音はもう頑張ったんだからさ」

「あっありがとうぉ――――」


 俺は優しく華音を抱いた。今までのつらさを受け止めようと思って。

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