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無関心な恋愛ライフ  作者: 航作裕人
第二章 真実と真司
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5 すべての真実

 俺が自分に部屋で勉強をしているときであった。


「和孝、お母さん入るわよ」

「うん」


 母親は俺の部屋に入ってきて、重要なことを言うみたいな顔をしていた。


「九月十日空いてる? 予定を入れといてほしいのだけど」

「予定は入ってないよ」

「そう」


 なんか、引っかかる。必要なことでも話そうとしているかのようにも感じる。


 ――そういえば、俺の誕生日じゃねぇ――か。


 思ってみれば、そんな時期だったということに気が付いた。



 次の日。俺は早く起きすぎて、勉強をすることにした。


 ――そういえば、いとこの華音はいつ来ると言っていたっけな。


 と思い返す。来月の上旬に来ることになっている。随分あとの話だ。

 そんな話を持ってくるとは思えない。でも、いとこで昔にあったことがない。だけど、なぜ妹は知っていたのかが今頃になって疑問に感じた。

 それは、妹がなにか隠していることになる。それをいつ話すか。


 ――気になるが、とりあえず気にしないでおこう。


 と心に決めた。

 


 学校でのこと。授業はいつもどおりだが、華音とはばっちり打ち解けている。いとこだと気づく前とはまったく違く、顔が輝いている。

 華音は意外と可愛いので、笑顔を見ると惚れそうだ。

 俺はインテリイケメンとか言われるけど、そんなに気にはしていない。

 ただ、周りが言うだけで男からは『いいよな』的な目で見られるのが辛い。

 というわけで、学校の授業は無事に終了。

 帰って勉強するかなと思う。俺はダッシュで家に向かう。



 家に着いた後に水奈が玄関に走ってくるものだから、どうしたものかと思った。


「リビングにすぐきて! 話したいことがあるのよ」

「な……なんで?」

「誕生日にしようとしたことを話すことにしたの」

「そうか、わかったよ。すぐにリビングに行くから待ってろって」


 水奈はリビングへと戻ると、俺は靴を脱いで思い荷物を持ちながらリビング内へと入室する。すると、ダイニングテーブルには母の姿があった。そして、水奈は母の隣で準備万端な顔をして待っていた。


「すぐに話そうと思ってたのだけど、なんか話ずらくって」


 前に聞いたことがあることなので、嘘だろうと思った。あのときに聞いていたことだと、誕生日当日に言うことになっていたからだ。だけど、ここは不自然ではなく、自然に演技する必要があると悟った。


「そうなんだ! 意外だな~、水奈が話しづらいなんて」

「そうかな? 私はそんな感じで話しているのがいつものことだけど」


 あまりにも嘘っぽいことを言い出す水奈の目が泳いでいるのがはっきりと分かった。


「それよりも、どんな話だよ」

「そうだった。あのね、私といとこの華音とは、姉妹なの。それなのに、ごまかしていたの」


 衝撃なことを言ったようにも感じるけど、そうでもないようにも感じる。


「そ――そうだったのか! 全然わからなかった。それにしてもそんな嘘をつく必要があったのか?」

「そ――それは、幼なじみの子に妹がいたなんて知らなかったかなって思ったから」


 確実にこいつはうそをついていると思う。それに、俺には昔の記憶がなくなっているということも明らかになった。


「知らないし、華音と遊んでいた記憶もない。だから、俺は真司だけが幼なじみだと思っているだけだ」


水奈はため息をついた。


「そうね。あなたにはそんな記憶もないでしょうね。友達に殺されかけたのだから」


 俺は目を疑う。さすがに、こいつがそんなことを知っているなんて思わなかったし、なぜ知っているのかだって疑問だ。それに水奈と言う女のことはあったことがないようにも感じたからだ。


「やっぱり、私のことを思い出せないような感じね。だって、私はあなたがいじめられているところを裏で助けたりしていたくらいだもの。年中の時にね」

「それはないと思うけど、だって、年中くらいの子が小学生相手にできるわけないだろうがよ!」

「そうだよ。華音お姉ちゃんに手伝ってもらって、助けたというのが正しいのかなと思うけど……」


 ある程度の流れがつかめたような気がするが、こいつが言いたことがわからないままなのである。何かを知っているのは確かなのだが、そのことについては記憶がない俺に行っても無意味だろう。逆に考えてしまうほどだとはわかるだろうけど、正直わからない。


「それにしても、なぜ殺されそうだったかと言うのはわかるか?」

「そ――それは言いにくいことなんだけど……」

「そんなにも話したくないことだということなのかよ?」

「そういうことなの。でも、言っておかなくてはいけないと思うから、いうけどね。

 お兄ちゃんが小学生のころ、やんちゃな子だったの。それで、友達を怒らせた。なぜだかは知らないけど。そして、その子は激怒して筆箱からカッターを出して、お兄ちゃんの右の胸に刺そうとしたときに、お兄ちゃんは体勢を崩し、そのまま体に刺したのではなく、頭をさしてしまった。大量に出た血を見て、泣くお兄ちゃんを置いて逃げた」

「それって、あまりにも小学生の少年ではできることではないような気がする」

「それじゃあ、薬でも飲まされて小さくなったんじゃない。それか、ドリンクを飲んで、体だけ縮んだんじゃない。殺すために」

「あまりにも、恐ろしすぎるだろう。発想もすごいけど、俺は何をしたんだろうって気になってしまうけど……」


 今の話によると、俺は何かをして怒らせたことになる。そして、殺意が起きてしまった少年Aは俺をカッターで刺そうとして、俺が転びそうになった。その勢いで俺の頭に刺さり、大量出血をしている俺を置いて、逃げたという感じなのだろうか。自分なりには解釈をしてみたが、その後がどうなったのかが気になってしまう。


「その後は、私が発見して、携帯でお姉ちゃんを呼ぶの」

「お前の家庭は裕福だな。やっぱり、あの家具を持っているうえで格が違うのかね~」

「そんなことはどうでもいいでしょ。しょうがないじゃないの。私の両親は心配性で『携帯を持っていなさい』的なことを言い出して、持たされていたし『何かあったらお姉ちゃんに電話して』って言われていたから」


 やはり、さすがな両親だ。子供のことを大切に思っているというのはこういうことか。授業で勉強したことあるが、ここまでは初めてだ。さすがに俺もさっきの内容を知りたいので、内容を戻すことにする。その時には母はテーブルの近くにはいなかった。


「それよりも、俺はその後どうなった?」

「その後はお姉ちゃんが一一九番に電話をして、救急車を呼んだ。その時には相当危ない状態だったし、私も血を見たのが初めてで、驚いちゃったわけ」

「へぇ――そうなんだ。そして、病院で緊急手術でもしたんだろ?」

「そうね。そのあとに医師から告げられるの。記憶喪失であると。それも重度のね」

「だから、昔のことを忘れているわけなのか。でも、そんな記憶喪失なことなんて覚えていないけど」

「昔のことだから、忘れちゃったんじゃないの!」


 水奈は威張りながら言っていた。とても偉そうだ。上から目線で物事を言われているようで気にくわないが、俺が知らないことばかりであるからしょうがないと言えばしょうがない。


「忘れちゃったのなら、思い出させるまでよ。少しずつね。それよりも、何で私がここにいるのか、お姉ちゃんが来ることになるのかを教えないといけないかもしれないわね」


 いきなり話を改めるので、すこしばかり驚いてしまった。それに、やっと真相を聞けるとうきうきしている自分はそのうちあんなことになるとは思わなかった。


「私たち姉妹の両親は亡くなってしまったの。母は仕事中に事故を起こし、父は病気でなくなったの。そして、私たちは離れて暮らすことになった。私が小学校三年生の時のことだから、お姉ちゃんは小学校五年生の時かな」


 少し昔のことであった。俺は普通に登校していたときであった。華音と言う少女は欠席をしていた。その後はいつも一人でいたような気がする。だから、俺は妹のことを見たことがなかったということだ。つらい思いをしていたのは華音であり、俺は何もできなかったということか。今の自分だったら支えることができたのかもしれないが、その時の自分では無理だっただろう。よけいに落ち込んだろう。その時の自分がおかしかったということは思いだせた。


「だから、私たちは泣きながら分かれることになって、違う親戚の家で育てられた。その後、親戚の家に一人の女性が訪問してきたの。それが、あなたのお母さんと言うわけなの」

「途中だけど、質問いいかな?」

「質問は話の後と言いたいところだけど、これはあくまでも説明じゃないから、質問してもかなわないわよ」


 相変わらず、生意気な女だ。でも、つらい思いをしてきたからこそ、こうなってしまうのかもしれない。


「じゃあ、なんで俺の母が親戚の家を訪れたのだろう? という質問なんだけどさっ」


 その場にはさっきいなくなっていた母がいた。そして、説明を始めた。


「それは、母さんが水奈ちゃんのお母さんと友達だからと言う理由から」

「へ? 何でそんなことで訪問する必要があるんだよ。赤の他人だぞ」

「それでも、母さんはそういう友達じゃなく、親友と言う感じで『私たちが亡くなったら、引き取ってくれると助かる。だって、姉妹が離れ離れになってしまうから』と言われていたのだけど、今まで準備が整ってなくってね。ほら、和孝が発情して、二人を襲って変なことをしたら困ると思って。今後に好きな子と何かをするときに困るじゃない」

「何で困るんだよ。それに、そんなことはしないから大丈夫だよ」

「でも、昔ならしたでしょうね。今ではしないだろうけど……」


 なんか、遠回りに攻撃されているような気がする。心の中が少しずつ、壊れ始めそうな予感がした。


「話を戻すと、母さんはやっと準備ができて二人を迎えたということなの。それに、何で『お兄ちゃん』って水奈ちゃんが呼ぶのかと思ったんじゃないの?」

「それは思ったよ。いきなり、お兄ちゃんなんて」

「でしょうね。私が呼ぶ理由はお母さんが兄としてしたってねとか言ったからよ。勘違いとかマジであり得ないから」


 鋭い言葉を俺に浴びせる水奈。恐ろしい子だ。こんな子がクラスにいれば逃げ出しているだろう。


「ほら、水奈ちゃん照れないの」

「べ……別に、照れてはいませんけど。ただ、い……いいあ…………」

「何が言いたいんだ?」

「いいバカ兄貴だって言いたいの!」


 素直じゃない水奈を見て、苦笑いをした母。何かを考えているようにしか思えない。


「まあ、頑張りなさいよ。和孝。今後はあなたにとってはハーレムとかいうことになるのだから」

「そんなことは期待なんてしてないからな。俺は逆に勉強の邪魔が増えるのが嫌だけど、しょうがないからな」


 素直じゃない俺らを見て、母は笑いながら、


「今までと違う生活かっ」


 とつぶやいていたのであった。

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