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Stare Melody  作者: kanoon
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第5話:生徒会書記と人質の憂鬱(side:niigaki)

珍しく放課後以外ですれ違った葛城の頬には、傷痕があった。



「傷?ああ、確かにこないだも絆創膏貼ってた。」

オレは、葛城とよく一緒に居る椎名に聞いてみた。その性格故に誰からも好かれるタイプの葛城が、不自然な(喧嘩の後みたいな)傷を付けて校内を歩き回るだろうか?

「流石に俺も分からないわ、すまん。」

「何かありそうだから、気をつけてやってくれ。」

そう言うと、椎名は微笑んで頷いた。

「あんたに言われるとは思われへんかった。」

「なっ……」


……軽く貶してませんか?


「友也のことは任しとき。」

「ああ。」

椎名なら安心だろう、そう思っていたのに。



「葛城、お前最近可笑しくないか?」

「可笑しくなんかないですよ、新垣さんこそどないしはりました?」

たまたま擦れ違った葛城を引き止め、問い(ただ)す。けれど相手は目を見ず。

「その傷は?」

「猫に引っかかれただけです。何でも無いですから。」

頑なに隠す様子で葛城は誤魔化した。違和感あるのに、オレは何も聞き出せなかった。

「急いでいるんで失礼します。」

そうして彼は去っていった。


「ということがあって。」

「目を見ない?それは引っ掛かるな。探りでも入れますか?」

またまた不敵な笑み。


……出た、生徒会人気会計。人脈も人並みじゃないな!


「そうしてみてくれ。オレは何も出来ないけど。」

「ええよ、友也は俺のパートナーやし。俺が調べてみる。」

「無茶すんな。」

「せぇへんよ?」

ふふっ、と笑うと椎名は黒縁眼鏡を掛けた。


THE ☆ インテリ !

悪巧みしてそうな、と付けたいくらいだよ。


そうじゃなくて。オレがこんな風にツッコミいれてる間に、電話を繋いでいた。探りの依頼(こっちが依頼してどうするんだか)をしてるみたい。

「よろしく頼む。報酬は望む通りにやるから。……お前ド変態だな、分かったやってやる。」

そして二言、三言やりとりをすると電話を切った。

「やってくれるそうだ。」

「頼んだ。」

嫌な予感は拭えなかった。



二日後の夕刻。

遂には椎名まで消えてしまった。一年生のクラスに葛城を迎えに行けば姿は無く、誰一人知らないと言って首を横に振った。そのため二年生のフロアに戻って椎名のクラスまで行けば、クラスメートは皆知らないと言った。

「椎名知らない?」

同じクラスの柊や、情報源の豊富な相原、結奈を通して女の子にも聞くが、全く掴めなかった。

「椎ー!」

この学校は私立なだけあって無駄に広い。下手に動けばニアミスで見つけられない可能性もある。でもオレは探しに回った。


体育館周辺に着いたとき、微かに聞いたことのある声がした。部活で使われる体育館とは別の体育館だから、人が居るはずがないのだが。

「し、」

白い狐。そして葛城、彼を取り囲む生徒数名。

「なんでここに……」

葛城がポツリと言う。隣の主犯者らしき生徒が目を見開いている。


……いつぞやの苛めの依頼と同じパターンか。


「何やってんだ、俺に隠し事して生徒会に似つかわしくない連中とお遊びか。」


……挑発しすぎだよ椎名!


「んだと!?」

予想通りの反応を返す主犯者。その反応が可笑しかったのだろう、椎名はケラケラと笑った。

「あーあ、面白い。久々だわ、こんな面白いの。葛城、怪我してるなら下がっとけよ。」

そう言い切ると椎名は、こちらを向いて口角を若干上げた。口パクでオレに伝える。


……「来い」って、バレてたか。


言われて常備してある仮面を着けると、オレは椎名の側まで駆け寄った。軽く肩を叩かれ、互いに頷く。

「来い、生徒会嫌いなんだろ?」

「嫌いだよ!あの偉そうな態度がな。」


……オレら偉そうにしてねぇぞ?お前らの方がよっぽど偉そうだわ!


殴りかかってくるが、オレも椎名も余裕で交わす。それが癪に触ったのか更に怒らせてくる。

「余所見すんな。」

「悪い。」

葛城を気にかけながら相手をする椎名の隙を、主犯者は狙ってきた。それをオレが止める。

「変な仮面取ったらどうだ?」

「断る。」

不意に隣の気配が止まる。不審に思って振り返ろうとしたら、下に引っ張られた。

「お前も、余所見すんなよ。」

今まで頭のあったところに拳が飛ぶ。礼を言おうと椎名を見ると腹を押さえていた。

「どうした!?」

「ちょっと油断した。大丈夫。」

鳩尾に食らったらしい。オレは立ち上がって殴りかかった。

「いい加減にやめといたら?このくらいに……」

「友也っ!」


……最後まで言わせてくれ頼む。


ってそんな場合ではないらしい。葛城の居る方向を見ると、まあ派手にやられてる。椎名も少し動揺してるみたいだ。互いに互いが人質のようで、下手に逆らえないのか。

なら、オレが。

「余所見してんな阿呆。」

クリーンヒット。流血沙汰は嫌いなので(一応生徒会だし)鳩尾を狙う。暫くした椎名は落ち着いたのか、立ち上がるとオレと共に反撃を始めた。

「葛城、遠慮するな。俺が許してやるから。」

「ほんまですか?なら遠慮なく。」

にっこり笑うと、葛城は容赦なく隣の奴を殴った。


……笑顔が椎名と似てるのは気の所為、だよな?

引きつる、味方なのに顔が引きつりそうだよ。


「俺が弱いわけあらへんやろ?人質なんていただけないやんな。」

初めて聞くような低い声に似つかない可愛らしい笑顔で、葛城は脅した。

「やばい……」

主犯者の焦りの声に、内心爆笑。



無事帰ってこれたオレたち。椎名は葛城の手当てをしている。運が良いのか何なのか、今日は他の人は早くに帰っている。

「なあ葛城。人質って誰のことだ?」

「そういや、言ってたような。」

オレの問いに、葛城は苦笑する。言い難いことらしい。


……とはいえ、オレは分かってるけどな!アイツが守りたい人なんてあの人に決まってる。


「椎名さんですよ。」

「何で俺?」


……鈍感椎名め。


「一緒に居るからとちゃいますか?」

「でも俺は人質になれへんぞ。」

「それでも、椎名さんが怪我したらって怖かったんですよ。」

んーそっか、なんて答えて葛城の頭を撫でる。絶対分かってないだろうけど。

「ありがと、友也。」

「いえ、こちらこそありがとうございます。椎名さんが来てくれはったから……」


……精々二人でいちゃこらしてるんだな!嫉妬?嫉妬なんかしてないぞ!


「新垣さん、ありがとうございます。助けに来てくれて。あと椎名さん守ってくれて。」

少しだけ照れた。


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