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Stare Melody  作者: kanoon
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第3話:恋文専用郵便屋!?(side:niigaki)

初めての依頼から一週間、あれから他の生徒会役員は忙しくしていた。何たって今は春、そう新入生への対応で忙しいのだ。


……なら、レンジャーなんてやらなきゃいいのに。


なんて言ってるわけにはいかないので、オレたちは生徒会室に集まっていた。



「今日の依頼は?」

「直接告白する勇気がないので、手紙を渡して下さい、だって。やるしかないよねぇ、しーちゃん?」

相原はひらひらと手紙を揺らした。問いかけられた椎名は頷く。柊もそれに同調した。

「渡す相手のクラスは?」

「1の3、安西。」

相原が読み上げると、葛城が声を上げた。

「ほな、俺が行きましょうか。」

「頼む。で、実はあと二通同じような依頼があるんだ。片方は2の2、新橋。もう片方は3の5、斎藤。」

相原はオレを見ると言った。

「しーちゃんと新垣くんは3年生の方をお願い出来るかな。柊くんと結奈ちゃんは2年生を。俺は待って……」

「何でお前は待つねんっ!」

椎名から鋭いツッコミが入る。


ナイス椎名!オレもそれ言いたかった!


「いやあ、二人ずつがいいじゃん?」

「まあ、面倒やしええけども。」


……良いんだ!?


「じゃあ、宜しく。」

「って、何俺に代わって主導権握ってんの?別に振り分けはどうでも良いけど。」


……良いんだ!?(二回目)


椎名がカタリと音を立て、椅子から立ち上がると手紙を受け取った。一つを葛城に渡す。

「友也、渡すだけだからってヘマすんなよ?」

「しませんよ、椎名さんってば変なこと言いはる〜」

くすくすと笑ってから、葛城はその手紙をしまった。

「よく来るのか、こういう依頼。」

「うん、殆どこんなのだよ。」

疑問をぶつけたオレに、隣で寛いでいた結奈が答えた。

「へぇ……」

「それがまあ、中身知っちゃった時が大変やねん。」

「相手が自分、なんてこともたまにあるもんな、椋ちゃんは。」

椎名は困ったように笑う。本当に困っているようだ。

「それがしかもおと、」

「ストーップ!」

「何で止めるんだよ。」

ぶすっとした柊に、一度溜め息をついた椎名は言った。

「ソッチの気が無い人からしたら、そんな話聞きたくないやろが。変なアピールするなよ。」


……大丈夫、察しはついてる。

だから、何で共学なのにそんな風にモテるんだよ!


「でも彼女居ないよねえ。」

結奈は心なしか嬉しそうに言った。

「俺の話はもう良いってば。」

ワイワイと言い争う数人を横目に、オレは溜め息をついた。



「じゃあ、行ってきます。」

オレは柊にそう声をかけると、椎名と共に3年生の教室に。

「斎藤先輩、いらっしゃいますか?」

「斎藤ー」

「何の用?」

見た目は普通だけどスポーツ出来そう。きっとモテるんだろうなっていう雰囲気の人だった。

「先輩にお届け物です。因みに返品はききません。」

不敵な笑みを浮かべて椎名は言い切ると、「では失礼します」と早々に立ち去ってしまった。慌ててオレも会釈をして立ち去る。

「お前早すぎ。」

「面倒やもん。」


……言い方が意外に子供だ、新発見。


「ヘマもへったくりもない。」

「依頼は渡すだけやもん。」

口を尖らせて言う彼に違和感を覚えつつも、オレはその場を流してしまった。



放課後、早めに生徒会室に入るとそこには、集中して何かの書類を書く生徒会会計がいた。


……会計なのにあそこまでする必要あるのかなあ。


「椎名、少し休んだら?」

「ん、これ終わったらそうするわ。」

辛そうな微笑みに再び違和感を覚える。その違和感を確かめるために、(不意打ちで)額に触れてみる。

「熱っ!お前、我慢しすぎだろ!」

一通り怒鳴っていると、見たことの無いくらいしょんぼりした顔が。今までクールな喰えない顔ばかりだったので拍子抜けした。この表情は素らしい。


……なんだ、人間らしいとこもあるじゃん。


今まで如何に自分が椎名を胡散臭いと見てきたかが分かる、今のオレの感情。

「ごめん、迷惑かける。」

「いい、そんな言葉いらねぇ。」

「ありがと。」

目を微かに細めて笑うと、ゆっくり目を閉じた。額の上に濡れタオルを乗せてやれば、幾分薄らいだ苦痛の表情。

オレはそっとその髪を梳いてみた。柔らかい。

「無茶しやがって。」


「うわわ、どないしはったんですか!?」

入ってきた瞬間大声上げて近寄る葛城を静かにさせる。

「熱あるんだ。休ませてやってくれ。」

そう言うと、申し訳なさそうに目尻を下げる。

「気付かなかった、新垣さんありがとうございます。」


……お前、犬みたいだな。


言いたくなるのを必死に堪えながら「いや」と返事をする。

葛城は突然「よし!」と言うと、簡易キッチン(生徒会室にはこんなものも併設されている。他には小さなシャワー室、仮眠室。)に消えた。

オレは椎名を仮眠室に運ぼうと思って担ぎ上げた。

「軽すぎ、お前。」

背は全然違うのに、ひょいと持ち上げられるような軽さ。本当に食べているのか心配になるほどだ。

「椎名さん、新垣さん、お茶淹れましたよ。椎名さん……無理が祟りましたか。」

「そうみたいだな。そういや葛城は依頼遂行したのか?」

「当たり前やないですか!そういう新垣さんたちもやったみたいですね。」

ああ、と返事すれば、葛城は柔らかく笑って椎名を見た。

「ほんまは、もう一通手紙あったんです。椎名さん宛に。これ渡しておいて下さいね。」

「ラブレター?」

「さあ?でも俺たちは恋文専用郵便屋ですから。」

今はね、と付け加えると、彼は「お大事に」とぽつんと呟き帰っていった。


「大事にされてんだな。」

羨ましいくらいに。


オレの言葉は宙に漂っていた。


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