表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

第5話「失われたDNAと、未来へのタイムライン」


つくばエクスプレスの地下トンネルに私たちの小さな足音だけが、呼応するようにコンクリートの壁に反響していく。


バッテリーの切れたLUUPを乗り捨ててから、もう2時間は歩いただろうか。


永遠に続くかのような闇…… その静寂を破ったのは、ユウトの低く、落ち着いた声だった。


「……いい機会だ。話しておこうか」


懐中電灯の光が、揺れることなく前方のレールを照らす。


「この世界の『本当の歴史』と、俺たちがこれから取り戻そうとしているものの話を」


「本当の歴史……?」 リナが不安そうに聞き返す。


「教科書に載ってないこと?」


「教科書なんて、奴らが作った『都合のいい設定資料集』に過ぎない」


ユウトは鼻で笑うと、歩きながら語り始めた。

 

「真白、お前の実家の神社に伝わる『神代かみよ』の話……あれは、お伽噺じゃない。かつてこの地球には、人間が神のように寿命が長く、テレパシーで話し、自由に空を飛べた時代があった」


「……うん。お爺ちゃんもそう言ってた。今の人間は『退化』してるって」


「その通りだ、進化論なんて嘘っぱちだ。俺たちは猿から進化したんじゃない。……『改造』されたんだよ」


「改造?」


「ああ。数十万年前、空から来た連中がいる。シュメール神話で言う『アヌンナキ』だ。奴らの目的は、この地球にある『ゴールド』だった。奴らの惑星ニビルの崩れかけた大気を修復するために、大量の金粉が必要だったんだ」


ユウトの話は、SF映画のプロローグのようだった。


だが、今のこの状況――天蓋に閉ざされた世界では、妙に説得力を持って響く。


「金の採掘は重労働だ。そこで奴らは、地球にいた原人ホモ・エレクトスの遺伝子に、自分たちの遺伝子を掛け合わせて、従順な労働力を作った。……それが、俺たち現生人類ホモ・サピエンスの起源だ」


「嘘……じゃあ私たちが、宇宙人の奴隷ロボットだったって言うの?」


 リナが信じられないという顔をする。


「スペックが高すぎても反乱を起こす。だから奴らは、俺たちのDNAにリミッターをかけた。本来12本あったDNA鎖ストランドを2本に減らし、残りを『ジャンクDNA』として機能停止させた。さらに、脳の中央にある通信機――『松果体』を石灰化させて、宇宙意識ソースと繋がれないようにしたんだ」


ユウトが自分の額を指差す。


「そうやって俺たちを、恐怖や不安しか感じない『3次元の周波数』に閉じ込め、支配し続けてきた。……その管理人が、アヌンナキが去った後に地球に残された、あのレプティリアンたちだ」


私は、さっきの「赤い蛇」を思い出した。


恐怖、怒り、対立、 彼らが好むという「負のエネルギー」は、まさに私たちが日常で感じているストレスそのものだ。


「でも、どうして今なの?」


私は乾いた喉で尋ねる。


「何千年も支配してきたなら、そのまま続けていればよかったじゃない。どうして急に、空が割れたり、あんな怪物が暴れだしたの?」


ユウトは立ち止まり、懐中電灯を天井――遥か上の地上へ向けた。


「『契約期間』が切れたからだ」


「契約?」

 

「宇宙にはサイクルがある。魚座の時代(支配と闇)が終わり、水瓶座の時代(解放と光)に入った。……今、太陽セントラルサンから、地球に向けて強烈な『覚醒の光』が降り注いでいる。シューマン共振がバグってるのもそのせいだ」


ユウトの声に熱がこもる。


「この光は、俺たちの眠っていたジャンクDNAを叩き起こす『起動コード』だ。放っておけば、人類は勝手に神の能力(5次元)を取り戻してしまう。……奴らにとっては悪夢だ。家畜が突然、飼い主より賢くなっちまうんだからな」


「だから……邪魔してるの?」


「そうだ。奴らは焦ってる。だからパンデミックを起こし、ワクチンを打たせ、戦争を煽り、メディアで恐怖を垂れ流して、俺たちの周波数を無理やり下げようとした。……だが、もう限界だ。天蓋ドームという檻自体が、新しい時代のエネルギーに耐えられずに壊れかけてる」

 

 ユウトは再び歩き出しながら、独り言のようにこれからの未来を予言し始めた。


  それは、希望のようであり、恐ろしい宣告のようでもあった。


「これから何が起きるか、予想してやろうか」


ユウトが指を折る。


「第一に、金融の完全崩壊だ」


「奴らの支配ツールである『紙幣(フィアット通貨)』は紙屑になる。クレジットカードも銀行口座も消滅する。その代わりに、ゴールドに裏付けされた新しい量子金融システム(QFS)が稼働するはずだ。……まあ、それまで生き残れればの話だが」


それまでどこか他人事のように黙り込んでいたリナが青ざめる。


「私の貯金……ゼロになるってこと?」


「そうだ、残るのは手元にある現金のみだが、それすら無価値と判断されるかもな」


財布の中には一体いくらの紙幣や硬貨が残っていただろう? 電子通貨が普及し現金を持ち歩く人々が極端に減っている中で、こうしてすべてのインフラが停止いてしまえばデジタル決済など何の役にも立たない。


 しかし頼みの紙幣の価値が無に帰すなら何に価値を見出せばいいのだろうか?


 私が黙り込んでいる間にもユウトはどんどんと話を進めていく。 

 

「第二に、最後の悪足掻き(プロジェクト・ブルービーム)だ」


「空のホログラム、またはプロジェクションマッピングを使って、偽の『宇宙人侵略』や『救世主降臨』を演出するかもしれない。ホログラムのキリストやブッダが空に現れて、『政府に従え』と言うんだ。……騙されるなよ。それは全部CGだ」


そして、ユウトは三本目の指を立てた。 その顔には、微かな畏怖が混じっていた。


「そして第三に……『ソーラーフラッシュ』だな」


「太陽が物理的に変化し、巨大なエネルギー波が地球を包む。それは電気系統を焼き尽くし、同時に、耐性のない人間の肉体を蒸発させるかもしれない。……だが、適応できた人間は、肉体を持ったまま高次元へ移行アセンションする。炭素ベースの体から、クリスタル(珪素)ベースの体へ」


「クリスタル……?」


私が呟くと、ユウトは真剣な目で頷いた。

 

「病気も老化もない、テレパシーで繋がる世界だ。隠されていたテクノロジー――失った手足すら再生する『メドベッド』や、空気から電気を作る『フリーエネルギー』も解放されるだろう。……それが、俺たちが目指す『神代』だ」


そこまで一気に喋ると、ユウトはふぅ、と息を吐いた。


「……ま、全部俺の妄想だと思ってくれてもいい。だが、現実はこのザマだ」


ユウトが懐中電灯で照らした先、トンネルの壁には、スリーパーたちが逃げ惑った時につけたであろう、無数の血の手形がベタベタと残っていた。


「妄想じゃ……ないわね」


リナが震える声で言う。


「だって、今の話、妙に辻褄が合うもん。なんで世の中がこんなに理不尽で、生きづらいのか……やっとわかった気がする」

 

 リナの目から、怯えの色が少し消えていた。


「知る」ことは「恐怖」を消すワクチンになるのだ。


その時だった。


『警告。前方1キロ地点、異常な熱源反応を検知』


懐に入れたGEMが、けたたましくアラートを鳴らした。


「熱源? スリーパーか?」


『いえ、生体反応ではありません。これは……プラズマエネルギーです』


「プラズマ!?」


急に走り出したユウトの後を追って慌てて追走する。


トンネルのカーブを曲がった先、そこには、信じられない光景が広がっていた。


 地下鉄のレールが、溶けていた……


いや、レールだけではない。 コンクリートの壁も、天井のケーブルも、まるで高熱のレーザーでくり抜かれたように、真ん丸な穴が開いてドロドロに溶解している。


その穴の向こうから、青白い光が漏れ出していた。


「なんだこれ……米軍の兵器か? いや、違う」


ユウトが壁の断面に手を近づけ、驚愕に目を見開く。


「この周波数……まさか、『地底アガルタ』のゲートが開いたのか?」


溶解した穴の奥から、冷たく澄んだ風が吹き込んでくる。


それは、腐った地上の空気とは違う、どこか懐かしい花の香りがした。


「ユウト、どうするの?」


「……ルート変更だ。このままトンネルを進んでも、地上はドローンだらけだ」


 ユウトは、青白く光る穴の奥を見据えた。


「この穴を使う。……もしかしたら、地下鉄よりも速く、つくば(目的地)へワープできるかもしれない」


私たちは顔を見合わせた。


陰謀論のフルコースの次は、地底世界への招待状。


もう、何が起きても驚かない覚悟はできていた。


「行こう。新しい地球を見るために」


私はユウトとリナの手を取り、青白い光の中へと足を踏み入れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ