ハッピーセット
御子柴奏
朔は一度言葉を区切ると、
真剣な眼差しで俺を見つめた。
「まず、目的からお話ししましょう。あの動画でも少し触れましたが、私はこの国を、あるべき姿に変えていきたい。国民が知らない沢山の闇が、この国には深く根を張っています。そうした闇から目を背けず、まずは若者に知ってほしい。そして、知った上で、共に考え、共に行動し、この国を変えていきたいんです」
俺は黙って耳を傾ける、
その壮大すぎる目的の裏にある真意を探るように。
「そして、そのための計画ですが……」
朔は、ゆっくりと話し始めた。
「今回の報道をきっかけに、動画の認知度はさらに上がっています。このタイミングで、私たちはメディアにも積極的に出て、さらに若者からの注目を集めます。地上波はみんな見る時代ではないので、テレビ越しの動画を切り抜きにして、SNSで拡散する。テレビに出ることで、認知度はそこまで上がりませんが信ぴょう性を手に入れることが出来ます」
「待てよ、俺がメディアに出るのか?」
俺がそう問うと、朔は答えた。
「いいえ、違います。当日メディアの前に立つのは、私でも、あなたでもありません。表の顔として、今後動いてもらう別の人物です」
「別の人物?」
「はい」
「じゃあ、あんたは何をするんだ?」
俺の問いに、朔は微笑んだ。
「私は、機密情報を手に入れることができます。その情報を、表の顔を通して世に流していく。それが私の役割です」
朔の口から語られる内容は、あまりにも現実離れしていた。だが、これまでの彼の行動が、その言葉をすべて事実だと証明しているような気がした。
「若者からの注目を十分に集めた後、次の動きに移ります。その計画を、あなたと一緒に作り上げていきたい。あなたの持つ『伝える力』を通して、発信することで、より多くの人の心に届けることができると思っているからです」
俺は、朔の言葉を整理するように、静かに問いかけた。
「…その計画や目的を進める中で、親父の件もわかってくるってことか?」
「はい、そうです。正直にお話しすると、まだあの報道の全体像は私も掴めていません。あまりにも複雑すぎる。だから、その真相を共に追うことになります」
朔の言葉に、俺はさらに問いを重ねた。
「じゃあ、あんたに協力する俺のメリットは、親父が何をしているのか、なぜ今回の報道に関わっていたのか、を知れること、か?」
朔は、にこりと笑った。
「いいえ。それはあくまでも、おまけです。ハッピーセットで言うなら、おまけのおもちゃですね」
その言葉に、俺は少し呆れたような顔になった。
すると、朔は真剣な表情に戻り、俺をまっすぐに見つめた。
「あなたの本当のメリットは、日本を変える瞬間に立ち会えることです。そして、この国を動かすという実感を、あなた自身が手に入れること。それは、模擬国連とは比にならないほどのスリリングな経験になるかと」
朔の瞳の奥に、確固たる決意が宿っているように見えた。
「いや、ちょっと待て」
朔の熱弁を遮るように、俺は口を挟んだ。
「最近のハッピーセットはむしろ、おもちゃがメインだろ。だからあんなに問題になってんだ」
俺がそうツッコミを入れると、朔は一瞬目を見開いた後、小さく呟いた。
「あ……、確かに。そっちで突っ込まれるとは」




