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Fiction ~日本を変えた、たった2人の高校生~  作者: 崖の上からSOMETIMES絶叫
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1103号室

御子柴奏(みこしばかなで)


俺は今、「1103」と書かれた部屋の前に立っていた。

家を出るまでは、正直そこまで緊張していなかった。

しかし、いざ扉を前にすると、

自分の鼓動が早くなるのを感じる。


この扉の向こうにいる人間がどんなやつであろうと、決して動揺はしない。

そう心に誓い、静かに扉をノックした。


数秒の静寂の後、

廊下の奥からゆっくりとした足音が近づいてくる。


ガチャ


鈍い音を立てて扉が僅かに開いた。

しかし、隙間から顔を覗かせる者はいない。


代わりに聞こえてきたのは、

高くも低くもない、中性的な声だった。


「御子柴奏さん、でいらっしゃいますか?」


その声に、警戒しながらも「はい」と答えるのが精一杯だった。


向こうは返事を聞くと、扉を少し大きく開いた。

「どうぞ、お入りください」と促す言葉は、意外なほど丁寧だった。


促されるまま部屋に入ると、

間接照明のみの薄暗い空間だった。

簡素ながらも上質な調度品が置かれ、

窓からは夜の渋谷の街並みが広がっている。

ビジネスホテルの一室というよりは、

スイートルームに近い印象を受けた。


部屋の中央には、

先程声をかけてきた人物が立っていた。

薄暗い照明に目が慣れてきたものの、

相手の顔はまだはっきりと見えない。

しかし、飄々とした佇まいと、

肩にかかるほどの長い髪から、

どこか掴みどころのない雰囲気だけは伝わってきた。


髪の長さだけを言えば、女性の可能性が高いが、

最初に声を聞いたことで見た目に囚われず、

目の前の人物が

おそらく男(青年)であることはわかった。

だが逆に、それ以外のことは何も分からない。


その青年は、奏の緊張感とは裏腹に、

親しげな口調で言った。


「初めまして。私は、姫野朔と申します。

さあ、どうぞそちらのソファに」


促されるままにソファに腰掛けると、

青年は向かいの席に座り、

顎に手を当てて考え込むような素振りを見せた。


「さて、どこからお話しましょうかね。まずはお父さんのこと、それとも、この一連のスキャンダルのこと。うーん、あるいは、一番聞きたいのは、どうしてわたしがこんなことをしているのか、ですよね?」


いたずらっぽく首を傾げるその仕草に、

少し苛立ちを覚えつつも、言葉を選ぶ。


「……あんたの目的は」


口に出した言葉を遮るように、

青年は懐からスマートフォンを取り出し、

画面を俺の方に向けた。


そこには、再生回数が1000万回を超え、

社会現象とまで言われているあの動画が映っていた。


息を呑み、少し混乱した俺を静かに見つめながら

青年はふと呟いた。


「これ、わたしです」


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