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生ぬるい風
御子柴奏
手にしたスマートフォンを見つめたまま、
近くのカフェの席に座り込んでいた。
帰る気になれなかった。
三枚の写真。
週刊誌を賑わせているあの政治家。
デジタル・フロンティア社の佐伯康平。
そして、3枚目には.....自分の父親。
なぜ、この3人が?
頭の中を疑問が駆け巡る。
その時、スマートフォンが再び震える。
DMから、新たなメッセージ。
「この3枚が何なのかを知りたい場合は、
8月27日午後8時に渋谷区宇田川町にある
ホテルAstraの1103号室までお越しください」
正体も分からない送り元からの急な誘い。
「普通に考えれば行くべきではない」
と理性が警鐘を鳴らすが、
この状況を無視することはできなかった。
父親が関わっているかもしれないこの件を、
知らないままにしておくわけにはいかない。
「アナタはだれ?」
そう打ちかけた指が止まる。
こんな質問をしても、
相手が正直に答えるはずがない。
真実を知りたいなら、直接行くしかない。
すべてを消去し、わずか数文字を打つ。
「わかった」
送信ボタンを押し、奏は立ち上がった。
カフェの扉を開けると、
夏の夜の、生ぬるい風が頬をかすめた。




