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独白
御子柴奏
その日、朝のニュースで最高気温がどこも軒並み35度を超えると言っていたのを見て、俺は塾に行くことは断念し、エアコンが効いた自分の部屋でテスト勉強をしていた。
少し休憩しようと、ベッドに横になり、何の気なしにSNSを眺めながらスクロールしていく指を止めたのは、一本の動画だった。
加工された声が耳に届く。
男か女か、大人か子供かさえ判別できない、無機質だが妙に耳に残る声だった。映し出されているのは、黒いフードを深く被り、顔を完全に影に沈めた人物が、カメラに向かって静かに語り始める映像だった。
「この動画が少しでも多くの若者に届くことを祈りながら、これから私が作った空想の物語を1つ、お話しします。」