異世界へGO! 1
「ステータスオープン!」
転移門を潜って早々に葵は意気揚々と瑠紺に教えられたとおりにその言葉を発していた。
目の前に現れた半透明のタブレット(?)に葵のステータスが表示される。
名 前 千堂 葵
加 護 ?????の加護
職 業 ーーー
レベル 1
スキル 転移魔法
保有ポイント 200
「えーーーーー。ちょっとこれだけ!?」
ステータスといったらもっと自己の身体能力を数値化した表示がある筈なのにと、葵はどこか納得できない思いで叫んでいた。
「お嬢様、職業を選べるようですよ。それにスキルもこのポイントで自由に取得できるようです」
「ちょっと、それどうやるの?」
「職業の欄をタップするとページが変わりました」
葵は雪永に言われたように職業の欄をタップしてみるとページが替わり職業一覧が表示された。
冒険者・剣士・斥候・武闘家・僧侶・魔術師・商人・薬師・鍛冶師・調理師と並ぶ最後に≪聖女≫とあった。
(聖女!!)
どう考えても下級職の中に不自然な聖女職を見つけ葵は驚いた。
「ねえ雪永、職業に聖女っていうのがあるわ。もしかして雪永の方には勇者とか英雄っていうの無い?」
「ございませんね」
「じゃぁ聖女じゃなくて聖人とかそんな表記で何か変わったのは無い?」
「私の職業欄には冒険者・剣士・斥候・武闘家・盾師・狩人・商人・薬師・鍛冶師・調理師とだけです」
「ちょっとだけ内容が違うわね。やっぱり適性が関係しているとかあるのかしら?」
「そうではないでしょうか」
葵にある魔法職が雪永に無い事からそう推測するしかないが、それにしても聖女職に首を傾げる。
そして葵のどんな適性が作用して表記されているのか帰ったら瑠紺に聞いてみようと思っていた。
「お嬢様は職業は何を選ばれますか?」
「取り敢えず魔術師かな。でもどうしてそんな事を聞くの?」
「選んだ職業で取得スキルが変わるようですよ。私はお嬢様に合わせた職にしようと考えていますがお嬢様にご要望があれば従いますよ」
「…やっぱりそうなるのね。雪永の自由よ」
葵は雪永に別段要望は出さず職業欄から魔術師を選択しセットする。
すると不思議な事に微かに身体が光り、自分の中の何かが少し変わった気がした。
はっきりと何がどう変わったのかは分からないが、少なくとも悪い変化ではないように思えた。
そして次にスキルの欄をタップして、今自分が選択できるスキルを探す。
スキルはツリーのようになっていて職業により選択できるツリーが違い、選べるツリーでも最初の一つを取得しないと次のが取得できないのか表示はグレーになっている。
葵は取り敢えず四属性の火と水と土と風の下級魔法をそれぞれ1ポイントで取得する。
すると続いて中級を取得できる様になったが、取得ポイントが10と跳ね上がっている。
(中級魔法も絶対に必要だよね!)
葵は迷わずそれぞれの中級魔法を取得すると、上級魔法が選択できる様になったがポイントは50を必要とした。
既に44ポイントを使い残り156ポイントなので、すべての魔法の上級魔法は取得できない事になる。
葵が少し悩んでいると雪永が他にも取得できるスキルツリーがあると教えてくれる。
下の方へスクロールして行くと基本の身体能力を強化するツリーが表示されていた。
生命力に魔力に体力、素早さに知力と精神力を強化できるようだ。
(それをステータス表記してよ!!)
葵は内心で叫びながら強化する項目に悩む。
その他にも物理耐性や魔法耐性に毒耐性などの各種状態異常耐性に関するものもあり、取り敢えずすべて1ポイントを使い取得しておくかとも考える。
しかし悩みながらさらにスクロールできる事に気付き、確認のためにスクロールさせて行くと無詠唱・詠唱破棄・魔法威力倍増・消費魔力減少というのを見つけ迷わず取得しようとしたが、こちらは初めから50ポイントを必要としたので取り敢えず詠唱破棄を残し無詠唱と魔法威力倍増と消費魔力減少を取得した。
残りの6ポイントは基礎身体能力強化にそれぞれ1ポイントずつ振って取り敢えず強化しておく。
魔法で攻撃する事しか考えていない、殆ど防御関連無視の振り分けになったが葵は後悔してはいなかった。
攻撃を受ける前に倒してしまえばいいだけの話だと思っていた。
「まぁこんなものか」
葵がスキルを確定しページを戻すとまたまた身体が少し光り、頭の中に魔法の説明のようなものが流れ込んで来るのを感じた。
魔法名に長ったらしい呪文にその効果や威力だ。
魔法を使うにあたっての魔力の循環だとか、魔力操作などはまったく関係なく詠唱すれば使えるようだ。
もっとも葵は無詠唱を取得しているので、魔法名を思い浮かべるだけで魔法は発動されるのだろう。
そうなるとすぐにでも魔法を使えるのだと理解できた葵は早速使ってみたくてウズウズし始める。
「雪永はスキル選択終わったの?」
「はい終わっております」
「じゃぁちょっとだけレベル上げして行こうよ」
瑠紺には初日だからと念を押されていたし、向こうを出たのは午後の3時過ぎていた。
ゆっくりして行く予定は無かったが、葵はこのまま帰る気にはなれなかった。
「その前に結界の確認を済ませてしまいましょう」
「そうだったわね…」
葵は自分が何をしに異世界へ来たのかすっかり忘れていた事を思い出さされ、雪永が一緒に居てくれた事に感謝するのだった。