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秘密の先の異世界で  作者: 橘可憐


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聖女騒動3


翌日は雪永は現実世界で他の仕事をするというので、葵は一人こっそりと異世界の新たな街の散策に出かけて来ていた。


街道は隠蔽で姿を消し移動していたが、街中の散策は隠蔽はせずしかし念のために変装はしていた。

こういう事もあろうかと用意していたウイッグとカラコンとこの世界の服で問題なく街に溶け込んでいると思いたいところだった。


「すみませんこれはおいくらですか?」


露天に並ぶ可愛いアクセサリーに目が留まり葵は露天商に声をかける。


「5000ダルーラだ。買うのかい?」


葵には5000ダルーラの価値が分からないし、それよりもそのダルーラをまったく持っていないと気づき返事に困った。

リットも使えるか聞こうかと思い悩んでいると後ろから突然声がかかる。


「可愛いお嬢さん。良ければ私がプレゼントしようか?」


振り返るといかにもなキザっぽい青年の姿があった。身なりの派手さでなんとなく察するところもあったが、葵にはまったく関係も興味も無い話だ。


「結構です」


「つれない態度もいいね。僕が誰だか分かって言っているのかな?」


「どこのどなたか存じませんがその手を離してください」


葵は無遠慮に肩に乗った手を振り払うのは止めてキザ男の顔に鋭い視線を向けた。


「なっ・・・、私を領主の息子と知ってのその態度か!」


葵はまたも領主の息子かとジェードとの出会いを思い出し、同じ領主の息子でもジェードとは質が違うようだと溜息を吐いた。


「はぁ・・・。だから私はあなたの事など知りませんってば。ナンパなら他でやってください」


「な、な、生意気な!」


葵の威圧じみた鋭い視線に怯えながらも顔を赤くしていく領主の息子の手に力がこもるのを感じ、さらに威圧を放つ。


「だからその手を離してください。不愉快です」


「・・・」


葵の威圧が効いたのか領主の息子は震えながら肩から手を離したので、葵はそのタイミングで露天から離れ冒険者ギルドを探した。


何をするにしてもこの国で使えるお金は絶対に必要なので、まずは手持ちの素材を買い取って貰おうと考えたのだ。


露天商が並ぶ路地からもそう遠くない場所にあった冒険者ギルドを、葵は難なく見つけることができた。

字の読めない者達の為だろうドラゴンらしい魔物の姿が描かれた大きな看板ですぐに分かった。


しかし今の自分の明らかにただの平民風の姿に中に入るのを躊躇した。

さっきのように粗暴な冒険者に絡まれるのも、魔物の素材をアイテムボックスから取り出して詮索されるのも、かなりの高確率であり得ると気づいたからだった。


(やっぱり雪永と一緒方がいいか・・・)


葵はこの国で使えるお金を手に入れるのを諦め、今日は適当に散策だけして帰ろうと決めて引き続き街中を歩いた。

街はラジャンバ程文明が発展しているようには思えなかった。

建物も素朴な木材建築が多く取り立てて珍しい店もなく、寧ろその何も無いのが返って興味を引く感じだ。


さっきの買いそびれたアクセサリーも手作り感満載の自然素材で作られた何の変哲も無い物だったが、その温かさに興味を引かれ手に取った物だった。

そう大きくは無い人々の喧騒も子供の声や笑い声の方が多いように感じ、きっとこの街というかこの国は平和な国なのだろうと感じていた。


(さっきの領主の息子はアレだったけどね)


そんな事を考えたせいか、領主の息子とルーベンと騎士達が何かを話しているのを見かけ葵は慌てて隠れた。

多分国のお偉いさんだろうルーベンと領主の息子が一緒にいるのは何の不自然も無い事だが、葵は何を話しているのかとても気になってしまった。


(隠れて聞いてみるか?)


一瞬そう考えたが、好奇心は猫を殺すと言うことわざを思い出し悩んだ。

必要以上に厄介そうな事に首は突っ込まない。情報は欲しいところだが、知ってしまうと余計な感情を生み行動したくなるだろう。

行動するのなら雪永と一緒でないと葵の判断だけでは不安が多い。それに王都に着くまでは様子を見ると決めたではないかと葵は行動したがる感情を抑えた。


(でもちょっとだけ。ちょっと話を聞くくらいなら・・・)


結局葵は自分の知りたがる感情を抑えきれず、姿を消すとルーベン達にそっと近き聞き耳を立てた。


「だからちょっとだけだって。会うのが無理だというならちょっとだけ姿を拝ませてくれよ。そのくらいならいいだろう」


「ですから先ほどから無理だと言っておりますぞ。聖女様の事は王都に着くまでは極秘扱い。誰の例外も認められません」


「食事に招待してもダメ。会いに来てみればそれもダメ。俺が誰だか分かってのその態度か!」


「存じております。それ以上言うのでしたら私もお父上に報告せねばなりませんがよろしいので?」


「ああ、父上は私の願いなら何だって聞いてくれる。寧ろお前達の方が怒りを買うことになるぞ。いいのか、この深層の森を守る我家を蔑ろにして」


「あなたのお父上は大層立派な方だと私も聞き及んでいますが、どうやら子育てには失敗なさったようですな」


「な、な、何を~!!」


「どちらにしても私は王の名代にございます。今現在の立場的にはあなた様よりは上です。なんと言われましても従えません。どうぞお引き取りを」


「い、い、今に見てろよ。後で泣くのはお前だからな!」


領主の息子はザコ台詞を残して逃げるように駆け出して行った。

取り巻きの存在が無い時点でかなりのザコなのは窺えるが、それにしてもと葵は事の事態を推測した。


ルーベン達が聖女を迎えに来た一行だというのはもう既に知れ渡っているようだ。

と言うことは、今後どの街に寄っても同じような騒ぎが起こるのだろう。

それを今のように断っているのはただ単に葵達が別行動をしていて実際にこの場に居ないからなのか、それとも本当に厄介事から遠ざけてくれているのか判断に困る。


だが、あの領主の息子に対するきっぱりとした態度は葵にはとても好感が持てた。


(少なくとも悪い人じゃ無いのかもしれない)


葵はなんとなくもう少しルーベンを信用しても良いのじゃないかと思うのだった。



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― 新着の感想 ―
街の散策は男装しよう。直ぐに換金出来て怪しまれない近場の薬草を採って置くのもよいのでは
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