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動き始める運命4


転移した先は森林の中のようで辺りには樹木が乱立し、中でもひと際大きな樹木の蔦が絡んだ大きな岩の陰に隠されるようにして青く渦巻く転移門があった。


もしかしたら催眠術で何かを見せられているという疑いも捨てきれず掌を握ったり開いたりしてみると、意識もしっかりしているし身体も思うように動かせている。


これが何かの幻影だったとしてだいたいこんなに大きな樹木を実際に見た事も無いし、葵の知っている地球の環境とは違う気がした。

まず空気の重さというか濃度と言うか葵自身に纏わりつく目に見えない何かが空気の中にあるように感じる。


しかしだからといって水中にでもいるように身体を重く感じる事も無く、寧ろだんだん身体が軽くなって行く様な気もする。


グエェェーーー


不気味な鳴き声に声のする方を見れば木々の合間に空飛ぶ恐竜のような姿を確認でき、確かにこれが事実なら異世界である事は間違いないと思われた。

いまだにどこかでコレは幻影かも知れないと考えている葵は空飛ぶ恐竜を見ても恐れはなかった。


寧ろ他はどうなのかこの森の外はどうなっているのか確認したい気持ちが湧きウズウズし始め、まるでVRMMOのゲームの世界にでも入り込んだような気分で探検の旅に出たい衝動にかられた。


『何の準備も無しに向こうの世界を楽しもうなどと考えないですぐに戻るんだよ』


ふとあのイケオジの言葉が思い出され、葵は踏み出しかけた足を踏み止まらせ踵を返す。


「うん、出直そう。待ってろよ異世界!」


葵はそう宣言すると転移門に触れ元の世界へと戻る。


「お帰り。どうだったかな異世界は? それより驚いたねぇ。君は余程魔力量が多いのか適性が高いのか、普通は触れる程度で転移門に入れる事は無いんだよ。長くこの門を守り色んな人間を送り届けたがこんな事は初めてだ」


「そうなんですか?」


葵が転移門に入るのを躊躇していたので触れれば確認出来ると騙されたのだと普通に考えていた。


「どうやら合格のようだが、この仕事を受けてくれると考えて良いのかな?」


何やらイケオジはさっきから興奮気味にテンション高く葵に話しかけて来る。

そう言えばこれは仕事なのだという事を思い出し葵は慌てて確認する。


「向こうの世界を探検しても良いのですよね?」


「ああ、3日間だけなら結界の確認を忘れなければ後は自由にしてくれて構わないよ。勿論その為の知識と準備はこちらでしよう」


「それならば是非私にこの仕事やらせてください!」


「詳しい条件を聞かずに決めてしまって良いのかな? 私は青藍瑠紺(せいらんるこん)、瑠紺と呼んでくれたまえ」


右手を差し出されたが、瑠紺さんがじっと見詰めて来る瞳の力強さに引き込まれドキドキして気付かずにいた。

するとその差し出していた手は葵の頭をポンポンと叩くと「頼んだぞ」と言うので、不思議な話だが何だか初めて父親の温かさを感じた気がして素直に「はい」と答えていた。


「では詳しい話をしようか。話が長くなるかも知れないが大丈夫かな?」


「はい。それよりできれば住み込みでお願いしたいのですが」


「私は構わないが……。何か事情があるのかな?」


葵は自分の身の上を簡単に話した。


「そうだねでは私の娘という設定で良いかな? 長く探していた娘が見つかったという認識で近所の記憶を変えておくよ」


「私は構いませんが瑠紺さんはそれで大丈夫なんですか?」


「私の方は何の問題も無いよ。その程度の人間の記憶など好きにできるからね」


サラっと恐ろしい事を言っている気もしたが、葵は深く考えるのは止めておいた。

今現在の葵の記憶が瑠紺さんによって既に変えられているなどと思いたくは無かったのだ。


「でも大丈夫だよ。私は葵君の記憶を今のところ弄る気は無いし、もしかしたら弄れないかも知れないからね」


葵の不安を感じ取ったのか、瑠紺さんは表情を崩しながら言うので取り敢えずは安心した。

そして居間へと戻り、瑠紺さんの淹れてくれたコーヒーを飲みながら条件を話し合った。


異世界へ行くのは最低月1回それ以上なら何度行ってもいいという話で、自分の散らかした物を片付けさえすればこの家に家政婦は必要ないと言われ、結局昼間は何かアルバイトを探す事にした。


葵にしてみれば住む所が確保できただけでも嬉しかったのに、お給料まで貰えるのでアルバイトの必要は無いのだが、魔力のリセット中という名目があっても家でダラダラするのは気が引けたのだ。


それに家賃と食費はきちんと払うつもりでいるので、そうなると自分の持ち物のすべてを焼かれ、たいした貯金も無い葵は諸々を考えてもアルバイトは必須だと考えた。


「まぁ今夜はもう遅いからゆっくり休んで、続きはまた明日話そう」


瑠紺さんに家の中を案内され、自分が使っていい部屋で落ち着いていると布団が運ばれて来た。


「客用の布団だが今夜はこれで我慢してくれたまえ。それより葵の荷物はどうしたのかな?」


「えっと、全部焼けてしまって…」


「それは大変だ。では急いで揃えないとな」


瑠紺さんはそう言うとどこかへ電話した。


「秘書の一人を呼んだのですぐに来るだろう。一緒に出掛けて必要な物を買い揃えなさい」


「あ、あのぉ、私お金をあまり持っていなくて…」


「何の心配をしているんだね。私は葵の父だよ。親として当然の事をするだけじゃないか。遠慮はいらないよ」


瑠紺さんはすっかり葵の父親設定を実行し始めたようだったが、葵は付いて行けずにいた。


「でも…」


「私に娘ができたのは初めてだ。私に親の気持ちを味わわせてくれないかな?」


瑠紺さんの瞳に見詰められると、葵は何も言えず抵抗する事もできなくなり素直に頷いていた。


「すみません、お願いします。お礼はちゃんと考えます」


「お礼なんていらないよ。葵の笑顔を見せてくれればいいさ」


瑠紺さんは下げた葵の頭を優しく撫でるので、その優しさに胸が熱くなる。


「ありがとうございます」


葵がお礼を言っていると玄関の開く音がした。


「来たようだ」


(って、今さっき電話したばかりで早すぎないか?)


瑠紺さんの後について玄関へと行くと、そこには葵もつい見惚れてしまう程のイケメンが立っていた。


多分190近い高身長の9頭身、瑠紺さん同様細マッチョの綺麗な立ち姿。

若干垂れ目具合のくっきり二重が甘さを漂わせるが、薄い唇がキリリとしてその雰囲気を打ち消している。


「会長、お呼びでしょうか」


「ああ、この子は葵という。漸く会えた娘に取り急ぎ今必要な物を揃えて欲しい」


「承知いたしました。では時間も時間です、お嬢様急ぎましょうか」


f分の揺らぎとでもいうのだろうか、耳にとても心地いい響きの声に葵は内心うっとりしていた。


「葵急ぎなさい」


瑠紺さんの声に我に返り、自分がお嬢様と呼ばれたのだと認識し、どことなく落ち着かない気持ちを抑え急いでイケメン秘書の後を追った。



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