表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秘密の先の異世界で  作者: 橘可憐


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/80

冒険開始6


「本当に簡単にギルドカート作れちゃった。やっぱりジュードの力は凄いのね」


葵は瑠紺が作った朝食を済ませると約束通りすぐに異世界へと一人で来たのだが、この世界の活動時間はとても早いらしくジェードをかなり待たせていたようだった。

だけど時間がずれたお陰でギルド内は混雑する事も無く手続きはすぐに比較的簡単に済ます事ができた。


一緒に戸籍も作ってくれたので他に移さない限り葵の定住地はこのトルンバの町になる。

金属で作られたカードには登録ナンバーと冒険者ギルドのマークだけが表記されていて、他人による偽造防止や悪用防止の工夫もされているそうだがその方法は教えては貰えなかった。


免許証やマイナンバーカードの大きさに慣れていた葵にはカードと言うよりドッグタグのように思えたそのカードを無くさないように大事にアイテムボックスに収納した。


昨夜は瑠紺にこちらに居ついた転移者が町を作っていた話や色々な功績を上げた人が居るという話をしたら瑠紺は驚く事無く当然のように受け止め何かを考えていた。


「考えてみたら転移者の子孫もかなり居るのだろうな」


瑠紺の呟きに葵は普通に納得して頷いていた。

ちゃんと聞いたわけではないが、多分平安時代には既に瑠紺は地球の日本に居て、その頃から結界の確認のためと言っては異世界に人を送っていたのだろう。

そしてその中の相当数の人達が異世界に残ったと考えたら当然子孫だけでなくその影響力もかなり大きいと思える。


「何か影響している事はあるでしょうか」


「実際に見ていないので何とも言えないが、これからは葵が詳しく報告してくれるのだろう?」


瑠紺にそう言われてしまっては葵も断る事もできず、間違いなく転移者の子孫であるジェードをまずはもっと良く知ろうと考えていた。


「一応領主の息子としても知られているし冒険者としてのランクも高いと評価して貰っているからな」


自慢気にする訳でもなくただの事実として話している風のジェードにとっては当然の評価なのだろうと思えた。


「あの森の調査をしているんですよね。私も一緒に行ってもいいですか?」


「まあブラックウルフを難なく倒している時点で大丈夫だろうが一応あの森は危険地域として知られている事は忘れないようにな」


「ジェードはいつも一人であの森に入っているんでしょう。少なくとも足手まといにならないように頑張るわ」


ジェードの目の前で転移して見せたのが余程効いたのか、葵に対する評価が少しは高くなって一方的に護る宣言はしなくなっていたのでちょっとだけやり易かった。


それにただ護られる立場から相棒になれたような気がして嬉しかったというのもあるが、魔物討伐が既にお金稼ぎ感覚になっていたので一匹でも多く魔物を倒したい葵は早く森を案内して欲しかった。


走って森まで行くというジェードの手を取り葵は有無を言わさず結界の前へと転移した。

転移はどこからでもできるが転移先は自由ではなく、場所を決めその場に普段は見えない魔法陣をマーキングのようにして登録しなくてはならない。なので森の中だと今のところ結界前にしか転移できなかった。


一瞬の眩暈のような感覚はやはりどうしても慣れる事はできないが、転移先を登録さえしてしまえば一瞬で移動できるのは本当に便利だ。


「ここは初めてジェードと出会った場所よ。見覚えがあるでしょう」


初めての転移体験に動揺を隠せないジェードに葵は分かりやすいく説明した。


「あ、ああ本当だ。便利だな…」


「それで今日はどのあたりを調査するの?」


いまだにシャッキっとしないジェードを促すように葵は強い口調で尋ねる。


「今日はもう少し奥まで行ってみるつもりだ。本来ならばここから奥へは高ランク冒険者でも一人では入らないのが普通だが今日はアオイも居るし大丈夫だろう」


「任せておいて!」


葵はまだ敵を見る前から理由も無く自信に溢れすっかりやる気満々だった。

しかし気配探知を怠らずに慎重に歩くジェードにしばらく付いて歩いているが、一向に葵が期待したようには魔物を見つけることができなかった。


「ねえジェード、この場に魔物を呼び寄せるのはダメなの?」


「何を言ってるんだ?」


突然の葵の提案の意味が理解できないのかジェードは明らかに怪訝そうな表情をした。


「この場所にどんな魔物が出るのかが分かればいいんでしょう。だったら探すんじゃなくて呼び寄せれば簡単じゃない」


「じゃあ聞くがどうやって呼び寄せる気だ?」


「そんなの簡単よ。これがあればね」


葵は魔物呼びの笛をジェードに見せた。


「?」


「この笛を吹けば近くに居る魔物を呼び寄せる事ができるのよ」


「それでこの辺を縄張りにしていたブラックウルフの数が減っているのか!」


ジェードは納得したように手を打った。


「でも言っておくけどこの森の異変はこの笛が原因じゃないわよ」


「そうか?」


「そうよ。実際この笛は何日も使って無いんだからね。まぁ使ってみるから見てて」


葵はそう言うと魔物呼びの笛を力の限りおもいっきり強く吹いた。

すると忽ちこちらへと向かって来る気配を早速察知する。


ブラックウルフのような複数じゃない気配に別の魔物だという予感を感じ、葵は思わず杖を手に持ち身構えて待った。

猪突猛進して来たのは牛より大きく見える猪のような魔物だった。


「アイスランス」


葵はその姿を確認すると同時にアイスランスを猪の眉間を目掛け発動させる。

≪シュン!≫といった乾いた発動音と同時に凄い速さで飛んで行った氷で作られた槍が猪の眉間に見事に命中し、そして猪の頭部をみるみる間に凍らせて行くと猪は絶命したのかその場に倒れた。


「命中率もかなり上がったわね」


葵は満足のいく戦闘結果に自己分析をし満足しているとジェードは「ブラッドボアを一撃で…」と呆然としていた。

しかし油断する間もなく次々とこちらに向かって来る気配をさらに感じ葵は新たに身構える。

必要以上に魔物呼びの笛を強く吹いたせいか多くの魔物を呼び寄せてしまったらしい。


「ジェード、ぼうっとしてないで次が来るわよ!」


葵はジェードに活を入れ、向かい来る魔物を自信を得たアイスランスの一撃で屠っていく。

ブラックウルフにブラッドボアだけでなく鹿かトナカイのような魔物も多数いたが、葵は集中力を切らさず疲れる事も無くアイスランスを発動させ続けた。


そして初めて異世界へ来た時に見かけた恐竜のような鳥を最後に魔物の群れの襲来は収まった。

さすがに見た目が恐竜だけあってアイスランスの一撃では倒せなかったが、翼に穴をあけ凍らせ地面に落とした時点でもはや葵の敵ではなく、魔法に耐性があるらしくジタバタともがく恐竜の頭部に執拗にアイスランスを撃ち込み絶命させた。


「ふぅ、やっと終わったわね。やっぱり強く吹くのは考えものだわ」


葵がようやく終わった戦闘に一息ついてジェードを見ると、ジェードは尻もちをついて驚き慄いていた。

いったい何をそんなに驚いているのか葵には理解できなかった。


「ワイバーンを一人で……」


恐竜のような大きな鳥から目を離さないジェードが漸く口を開き呟いた言葉がそれだった。

葵はそんなジェードを放って倒した魔物達の解体を嬉々として始める。


「ふふふ、いったいいくらで売れるか楽しみ」


ワイバーンと聞いてその素材は絶対に安くはないと確信し、ここ何日かのバイト代以上に確実に稼げただろうと葵は顔の筋肉が緩むのを抑えられなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ