御礼企画 妻の心を取り戻すには ⑤
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ラハティ王国の王太子であるアドルフ殿下だが、
「本当にあの噂を信じているのか?子供かよ?」
と、俺に向かって言い出した。
「普通に考えれば分かるだろう!カタジーナ王女はルーレオ王国の王女だし!暗黒からやって来るわけではないって!」
「そうなんですよ、普通に考えれば分かることなんですよ」
普通に考えれば、皮膚も黒ければ口の中も黒くて、白目も黒い人間など居る訳がないとすぐに分かるはずなのに・・
「最近では執事頭に頼んで、食堂に水槽を設置することにしたみたいなんです。その理由が、カタジーナ王女がナマズを食べるという情報を手に入れたからだって」
「ナマズ・・」
「流石にナマズを室内で飼うのはちょっとという話になって、水槽は厨房の裏に移動することになったのですが、そうしたらそうしたで王女の毒見はどうするんだとか、意味不明なことを言い出して」
「好きにさせれば良いと思う!」
殿下は首をブルブルッと横に振りながら言い出した。
「嫌でも結婚式まであと僅かだし、どういった王女なのかということも結婚式になれば分かるだろう!」
「カタジーナ王女は結婚の準備のためにマルカネン伯爵家に移動をしているんですよね?」
「当初は王宮に滞在の予定だったのだが、妾妃が産んだ王女に変更になったことにより、伯爵家で嫁入りの準備をすることになったんだ」
「王家の使者も面会謝絶と聞いていますが?」
「お前のところの使者も門前払いを食らっていると聞いたが?」
「そうなんですよ」
隣国から我がラハティ王国までカタジーナ王女はすでに移動をして来ているのだが、秘密裏にマルカネン伯爵家に移動をして以降、誰も王女の顔を見ていないのだ。
「噂に拍車をかけるだけだから、一度、結婚前に、王宮へ招待したいと伝えているのだが、オルガ夫人が完全に拒否をしていてね」
「オルガ夫人はルーレオ王国から輿入れして来たんですよね」
「そうだ、だからこそカタジーナ王女の面倒をルーレオ王家から頼まれる形になったらしい」
マルカネン伯爵家に隣国から嫁いで来たオルガ夫人は息子を落馬事故で亡くして以降、喪服を貫いていることでも有名なのだ。その容姿はさながら痩せこけて魔女のようだと揶揄されることも多かったことも作用して、カタジーナ姫が暗黒から来た姫と呼ばれるようになったのかもしれない。
「ルーレオ王国では妾妃が産んだ子供が表に出て来ないというのは有名な話だからな」
「まあ、それはそれで良いんですけど、殿下、俺は一体いつ、軍部から抜けられるのでしょうか?」
敵国オムクスが我が国の鉄道事業を頓挫させようと山のようなスパイを潜り込ませている関係で、軍部も深刻な人手不足状態なのだが・・
「兄があの馬鹿げた噂話に固執するのも多忙で頭がおかしくなっているからだと思うんです。そんな兄を助けるためにも一刻も早く、軍部を抜けて公爵家の力になりたいと」
「無理!無理!無理!今は無理だから!」
そこで殿下ははぐらかすように言い出した。
「オリヴェル、お前、この後は何処に行くんだ?」
「妻と一緒にレストランに食事に行く予定ですが」
「せっかくレストランに行くなら車で行ったほうが良いだろう!」
「我が公爵家には自家用車なるものがありません」
「だから!軍部で所有する車で行けばいいじゃないか!」
殿下は目を爛々と輝かせながら言い出した。
「軍部の車が出払っていたら王家の車を利用しても良い!私が特別に取り計らってやる!」
「いやあ〜」
現在、車は他国から輸入して購入することしか出来ない関係で、ラハティ王国では車の売買は王家の管轄になっている。王家の許しがなければ車を購入出来ないのだが、ラウタヴァーラ公爵家は母のパウラが王家から蛇蝎の如く嫌われているのが理由で未だに購入権が回って来ないのだ。
「だったら公爵家に車を購入する権利を」
「お前の両親が離婚をしたらな」
ヴァルケアパ公爵家はすでに自家用車を所有しているというのに、我が家は母が王家に嫌われているため、未だに購入が出来ないのだ。
結局、軍部で所有する車を借りて妻を迎えに行くことになったのだが、公爵邸の庭園でのんびりと花を眺めながら待っていた俺の妻は驚き慌てながら言い出した。
「まあ! 車じゃないですか! 帝国に居る間は私も乗り回していたのですけどラハティ王国で手に入れるのはなかなか難しいのに! 流石はオリヴェル様ですわね!」
流石はオリヴェル様ですわね! という言葉に俺の心は跳ね飛んでいたのだが、乗っている車はあくまで借り物なので胃が激しく痛みだす。
「レストランまで二人でドライブをしたいと思ったんだけど、気に入って貰えて良かったよ」
「軍部に所属しているから購入出来たのね! 羨ましいわあ!」
「いや、これ、軍部から借りてきた奴なんだけど」
我が家は母上が王家から蛇蝎の如く嫌われているため、未だに車の購入権が回って来ないのだと説明すると、
「そういうこともありますわよね!」
嫁姑バトルを繰り広げてきた俺の妻が意味ありげな笑みを浮かべて来たので、再び胃がキリキリと痛み出す。
サプライズプレゼント以降、ペルニラ夫人の意見を参考にしながら妻との距離を縮めて来てはいるのだが、
「オリヴェル様、焦りは禁物だということを進言しておきますよ」
と、年取った老婆は針のような眼差しで俺に釘を刺すようにして言うのだ。
「初手から間違い続けてきた貴方様はまだスタートラインにすら立てていないのです。ですが、貴方の熱意と努力だけは私も認めておりますので、最短でお嬢様の心を手に入れられるように手助けしてあげましょう」
こうしてペルニラ夫人の指導の元、始めたのが足のマッサージだ。
大陸の南に位置するイブリナ帝国は温暖な気候ゆえに淑女の皆さんも服装は軽装だし、海辺では裸足で歩くのが当たり前なのだそうで・・
「足を見せるのは恥ずかしいなんて文化ではないのでございます。海岸に行けばビーチベッドなるものが置いてありますし、そこで横になりながら足のマッサージを受けるのが最近の流行でもあるのです」
帝国と王国を行き来するカステヘルミは足のマッサージについては抵抗感がないらしいので、
「オリヴェル様、貴方様が軍部の直伝だとか何とか言って、お嬢様に足のマッサージをするのです」
ペルニラ夫人は針のような眼差しを俺に向けながら言い出した。
「ご奉仕することによって心と心の距離を縮めるのですが、万が一にもスケベ心を出そうものなら二人の関係は即座に終わるものとお考えなさい」
釘を刺され続けた俺は生殺し状態で妻への足のマッサージを毎日実施。その結果、二人でレストランに行くまでに関係性は改善することになったのだ。
「それで、これから何処のレストランに行くのかしら?」
「トナカイの肉を美味しく食べさせることで有名なラヴィントラに行くつもりなんだが」
「まあ!一年は予約を待たなければならないというレストランではないですか!」
ラヴィントラは予約を取るのが難しい超高級レストランなのだが、殿下の威光を使って無理やり席を確保した。妻の愛を獲得する為にはそれくらいのことはしないと駄目だとは思っていたのだが、まさかあんなことになるなんて……
貴婦人たちの噂話は今日も楽しい ② 11月4日(火)に発売します!!御礼企画として1巻と2巻の間のオリヴェルとカステヘルミのお話を毎日掲載しますのでよろしくお願いします!!
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