第42話
お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。
ラハティ王国軍の本部は王宮の敷地内にあるのだけれど、マリアーナやロニア様のように王宮勤めではない私でも軍部の敷地内は庭みたいなものなのよ。
おじさんが居ないかどうかを確認する時には勝手に診療棟の中まで入って行っちゃうこともあるんだけど、会いたい相手は婚約者でもあるミカエル・グドナソンなのだもの。
受付で名前を記入し、正式な婚約者である私、リューディア・バクスターが自分の婚約者との面会を望んでいることを申請し、しばらくの間入り口近くに置かれたソファに腰掛けて待つことになったのだけれど……
「*#πν*$!」
2階から喚き声のようなものが聞こえて来たのよね。
軍部のエントランスホールの奥には2階へと通じる階段があるんだけど、エントランスホールが吹き抜けの状態になっていることから上で騒いでいる人の姿は一階からでも見えるのよ。一体誰が騒いでいるのかしら?
そんなことを考えながら二階部分を眺めていると、騒ぎを起こしていた誰かが乗り出すようにしてこちらを見た後で、慌てて階段を降りて来たのよね!
「リューディア!」
遠くから全速力で駆けてきたミカエル様は金茶の髪の毛がボサボサで、目の下の隈が真っ黒になっている。
「今日もおじさんに差し入れかい?」
「いいえ、今日は貴方に差し入れよ!」
私がそう答えて、途中で買って来た甘いお菓子とお母様に頼まれた衣類が詰め込まれたバッグを差し出すと、ミカエル様ったら半泣き状態になっているわ!
「リューディア、君、僕に会って大丈夫なの?」
「はい?」
「だってエリアソン中尉が……」
そこまで口を開いたミカエル様はサッと顔を青ざめさせると、
「ちょっとここから移動をしても良いかな?」
と言って、荷物は部下に渡して、私の手を引いて庁舎の裏にある庭園の方へ私を連れて行ってしまったのよ。
ミカエル様ったらいつでも女性に対してベタベタヘラヘラしているように見えるのだけれど、今日は私が座れるようにベンチにハンカチを敷いて、私が隣に座ったのを確認するなり、
「これは夢か!夢なのか!リューディアが隣に居るなんて!」
と、意味不明なことを言っている。
俯きながら自分の髪の毛を掻き回している姿と、普段の洒落た男振りの落差が酷すぎるのではないかしら?
「リューディア、その、あの、今日はどういった要件で?」
「ああ!とっても重要な話があるのよ!」
私の言葉にうっとりしているミカエル様ったら、一体、どうしちゃったのかしら?
「とっても!とーっても重要な話よ」
「うん、うん、とっても重要な話なんだね」
「カステヘルミ様の結婚式で、ミカエル様は婚約者である私をエスコートすることもなく、披露宴会場でピンクブロンドの令嬢とずっと一緒に居たでしょう?」
その時、ミカエル様の顔がサーッと青ざめていったのだけれど、私は構わず続けたわよ。
「私の情報筋によるとあのピンクブロンドの令嬢は隣国オムクスのスパイよ!スパイの手先になっていると言っても過言ではないわ!そんな人の手管にはまって抜け出せなくなったら、貴方の軍人生命、終わってしまうことになってしまうわよ!」
自分の婚約者がスパイと仲良しこよしだなんて、我が家にも被害が出かねない話になるじゃない!
「ミカエル様!聞いてるの?」
「聞いているよ」
ミカエル様は頭を抱えたまま俯くと、
「だから嫌だって言ったんだ!絶対誤解をされるから嫌だって言ったのに!俺が説明をしておくから大丈夫!大丈夫とか言っていて!全然説明なんかしていないじゃないか!」
もの凄く怒りながら金茶の髪の毛をかきむしり出したのよ。
「他人の大丈夫が当てにならないってことは分かっていたのに!上官を信用し続けた僕が悪かったんだ!」
えーっと、ミカエル様は一体、誰に怒っているのかが分からないんだけど、
「リューディア、君を置いてあんなピンク頭のあばずれ女にデレデレなんかするわけがないし、そもそも僕は清廉潔白すぎるが故にアドルフ殿下に引き抜かれたような男だよ?浮気なんかするわけがないんだって!」
必死にミカエル様は言い出した後、さめざめと泣き出したのよ。
どうしたのよ?ミカエル様?
明らかに異常よ!異常!きっとこれは・・
「ミカエル様!ノイローゼよ!ノイローゼ!仕事が忙しすぎてノイローゼに罹っているのよ!」
私の言葉に動きを止めたミカエル様は、
「確かにノイローゼかもしれない。少ない人数で敵国のスパイを炙り出せって、無茶振りにも程があるミッション続きでノイローゼになったのかもしれない」
ハラハラと涙をこぼし続けているのよ。完全に病んでいるわ!
「スパイは怖いけど、ミカエル様は少しでいいからお仕事を休んだら良いんじゃないかしら?心の健康も体の健康も、損ねているような状態よ!」
「辞めたいけど、辞めたら君と結婚出来ないだろ?」
「はい?」
「六歳も年上の無職のおじさんになったら、リューディアは引き取り拒否をしてくることになるだろう?」
「いや、浮気三昧の男より、無職のおじさんの方が良いって!」
「じゃあ!もう!仕事を辞めてもいいかな?仕事を辞めて、君の領地に引っ込みたい」
病んでいるわ!ミカエル様ったら病みすぎているわ!
「いやいや、貴方は浮気三昧の男で」
「僕がどれだけ清廉潔白な男か!殿下を連れて来て説明してもらおうか!」
ミカエル様はくたびれ果てた様子で私の顔をまじまじと見ると、
「やっぱり誤解を受けているじゃないか〜!あのクソ上司〜!」
と、天に向かって怒りの声を上げたのだった。
私ごとで申し訳ないのですが、急遽入院→手術→化学治療コースが決定。マンモス級の危機に瀕することになり、ここで一旦連載が停止する形となりそうです。ようやっとリューディアとミカエルが出会って、ここからお話が進んでいくところだったのですが・・頑張って治療して来ますので!!気長にお待ち頂ければ幸いです!!
もちづき 裕
モチベーションの維持にも繋がります。
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