第41話
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私がミカエル様の婚約者になったのは十四歳の時のことで、ミカエル様はその時二十歳だったのよね!
領地を流れる川を巡って結婚が決まったようなものなのよ。上流に居る家が途中で水を堰き止めて悪さをしないように、結婚でお互い絆を深めましょう的な奴なのだけれど、
「水なんか堰き止めないから!この婚約はナシにしてー!」
と、私だけが考えているような状況なのよ。
当時十四歳の私が二十歳のミカエル様と婚約をしたからって、外でデートなんかした暁には確実にミカエル様が変態指定をされることになってしまうので、お互いの家を行き来してお茶を一緒にしたりとか、家族も一緒に観劇をしたりとか、そんなおままごとのような関係を続けていたので、ミカエル様の家は自分の家だと言っても良いくらい何度も通った場所でもあるのよ。
年頃となってミカエル様の浮き名を耳にするようになり、ミカエル様が大好きな女の子たちやお姉様たちからやっかみを受けるようになり、
「ああ、私には無理かも〜」
と、思うようになってから足が遠ざかっていたミカエル様の家なのだけれど、
「まあ!まあ!リューディアちゃん!久しぶりじゃない!」
ミカエル様のお母様であるフィリッパ様は私の手を握ると、
「もしかしてミカエルに会いに来たの?ミカエルに会いに来てくれたの?」
と、興奮の声を上げている。
グドナソン家としては次男のミカエル様を後継娘である私のところへ婿入りさせたくて仕方がないんでしょうけれど、それにしたってとっても嬉しそう。
「とにかく外は暑かったでしょう?中でお茶でも飲んで行ってちょうだい!」
そうこうしている間にあれよあれよとお母様に家に招き入れられて、涼しい風が入ってくる居心地の良いサロンでお茶を振る舞われることになってしまったの。
「リューディアちゃん、そういえば最近、大変だったみたいよね?」
「はい?」
「ほら、メゾン・ナザレノ・ティコリのマダムの死体を発見してしまったのでしょう?」
「ああ、ああ、ああああ」
その後にも色々とあり過ぎて、メゾンのマダムの遺体を発見したのは遥か昔のような気がしてしまうわ!
「我が家もあそこのメゾンで注文をしていたものだから本当に驚いてしまって!」
「帝国で流行のデザインを取り入れているということでしたから、何処の家でも頼んでいたじゃないですか?」
そのメゾンのマダムが隣国オムクスのスパイだったと言うのですもの、世も末だわ〜。
「そういえば、あそこのマダムとミカエル様もとっても仲良しだったみたいで!」
そこで私はジャブを打ってみたのだけれど、
「私が注文したドレスを取りに行ってもらうことが多かったから、変な噂になっちゃったのかしら〜」
お母様はオホホホッとお上品に笑いながら私を牽制している。そこで私はもう一発のジャブを打つことにしてみたわ。
「そういえばマダムだけでなく、中央広場で開いている花屋さんの店員さんのお姉さん。とっても美しい方なのだそうですけど、その方とも噂になっているのを聞きましたわ!」
そしたらお母様ったら、ニコニコ笑いながら言い出したのよ。
「あら!リューディアちゃんがついに息子に対して嫉妬してくれたのかしら?」
違う!違う!違う!嫉妬なんてしていませんから〜!
「あの子の仕事柄っていうこともあるんだけど」
どんな仕事柄だっていうのよ?
「とにかく誤解されることが多いのよね!」
誤解じゃなくて真実でしょ?
「それにあの子ったら、私に似てやたらと顔が派手でしょう?」
確かにお母様に良く似た美丈夫だと思いますよ。
「埒もない噂に悩まされることも多くって!」
とっても悪質だと思います!
「そういえばカステヘルミの結婚式では、ミカエル様が参加をしていてびっくりしましたわ!」
「あら!うちの息子が?」
「ええ、婚約者の私をエスコートすることもなく、ピンクブロンドのそれは美しい令嬢とピッタリ寄り添うようにして立っているのですもの!やっぱりミカエル様には私ではなく、もっと他の女性が」
「あらあぁあ!お仕事だったのかしらあぁあ!」
お母様のかぶせ技が凄いのよ。
「それにピンクブロンドって、もしかして一妻多夫の噂がある、あの令嬢?」
「そうなんです!あの一妻多夫の噂がある令嬢なんです!やっぱりミカエル様も彼女の魅力の虜になってしまったのでしょうね!そういうわけで、私なんかじゃなく」
「一妻多夫だなんて驚きだわ〜!帝国の金持ち親父かよ!って感じのお嬢様よねえ〜!一人で複数の男性を侍らせるんでしょう〜!凄過ぎて腰を抜かしてしまいそうだわ〜!」
いや、とにかく、グドナソン家の次男をうちに婿入りさせようっていう圧が凄すぎる!
「とにかくお母様、ミカエル様との婚約なのですけれど」
「あら!リューディアちゃんったらミカエルに会いたくて仕方がないのね!」
お母様の耳はどうかしちゃっているんじゃないかしら?
「それならね!是非ともリューディアちゃんにお願いしたいことがあるの!あの子ったら最近仕事が忙しいみたいで、全く家に帰って来れていないような状況なのよ!」
それって何処かで女性をナンパしているから帰って来られないだけなんじゃないの?
「申し訳ないけれど、軍部にミカエルの着替えを持って行ってくれないかしら?ほら、私ったら腰を痛めてしまって・・」
突然腰を痛めたような素振りを見せつけたお母様は、メイドにミカエル様の着替えを入れたバッグを用意させると、
「行く途中で甘いお菓子でも買って差し入れしてくれないかしら?本当にあの子は可哀想な子なのよ!」
と言って私にお金を握らせて、
「あの子に宜しくって伝えてちょうだいね〜!」
と言って、私を軍部に向けて出発させてしまったのよね。
ミカエル様は私の叔父さんと同じようにラハティ王国軍にお勤めの軍人なのだけれど、私が知る限りでは軍部の仕事なんか放り出して、遊び歩いているような印象が強いのよね。
だからこそ今から軍部に行ったって、ミカエル様がそこに居るとは限らないと私は思うのだけれどね!
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