第40話
お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。
私たちの話は一妻多夫女に戻って行ったんだけど、そこでロニア様が聞き捨てならないことを言い出したのよ。
「私は思うに、そのユリアナというお嬢様も、隣国オムクスのスパイなんじゃないでしょうか?」
「そういえば・・私のお母様は子爵家以下のご婦人と派閥を超えて仲良しだし、その関係で私も一妻多夫を信奉するユリアナ嬢のことをそれなりに調べてみたんだけど、とんでもないことが分かったのよ」
「「とんでもないことって?」」
マリアーナとロニア様が私の方をじっと見つめてくるので、私は自分自身で行った調査報告をすることにしたの!
「カステヘルミからユリアナ様のことを調べてくれって言われたので、私なりに調べてみたんだけど、あのご令嬢、顔が良いと言われる子爵家や男爵家の令息に、手当たり次第といった感じで手を出しているみたいなのよ」
「手当たり次第だなんてまた破廉恥な!」
堅物のマリアーナは真っ赤な顔をして顰めっ面をしたんだけど、
「それで?それで?そこからどんな話が出て来るんですか?」
ロニア様はもう、興味津々で我慢出来ない!って感じで前のめりになっている!
「ユリアナ様はイケメンはイケメンでも、きちんとお相手もいるようなイケメンが好みなようね!」
友人の恋人がユリアナ様に奪われた、婚約者が奪われたみたいな話が山ほど出てくることになったもの!
「特に心底愛し合っているようなカップルを見るとやる気になっちゃうタイプみたいで、奪い取られた何人もの令嬢が引きこもりになったり、中には自殺未遂をしたって人もいるのよ!」
本当に!信じられないほどの悪女だわ!
「お相手がいる人から奪って楽しんでいるようなユリアナ様の醜聞は、私がちょっと調べただけでも山のように出て来たの。それが表沙汰にならない理由はただ一つ、ラウタヴァーラ公爵家がとにかく鉄壁の守りを貫いているからなの!」
だからこそ、今まで表沙汰になることがなかったのね。
「そもそも彼女が手を出しているのが公爵家の寄子である貴族の師弟ばかりだったものだから、親としても大きく出られないというところがあったみたいで」
「先生!質問!質問があります!」
「はい、ロニア様、質問をどうぞ!」
「一つお尋ねしたいのですが!次から次へと略奪して自分のものにするということですが!そうしたら今まで捕まえたイケメンたちはどうなるんでしょうか?順次、野に放って行くということでしょうか?それとも飼い殺しにするということでしょうか?」
堅物のマリアーナは男性を家畜扱いすることに異議を感じているようだけれど、とっても良い質問よね!
「面白いことにユリアナ嬢は捕まえたイケメンを放逐しません!そのままキープしているようです!」
「それじゃあたった一人のお嬢様を取り合って騒動が起きそうなものですが!」
ロニア様は挙手しながら言い出した。
「性に対してだらしない画家もまた、美人だったり可愛らしい女性だったりに手を出してキープしようとするんですけど、大概、女性同士の争いが勃発して騒動になるんです!ユリアナ様の場合だってキープするまでは良いものの、男性は自分の女は自分の物だって主張したがる生き物じゃないですか!だからこそ一人の女性を巡って争いが起きると思うんですけれど!」
「ロニア様!着眼点がとっても良いですね!」
私はふっくらとして可愛らしいロニア様のことが大好きになってきたわ!
「ユリアナ様にキープされている男たちは騒ぎません!」
私は胸を張って答えましたとも。
「みんなで仲良くユリアナ様を共有しているんです。更にはみんなで仲良く、ユリアナ様のことを応援して守るんです!」
「「ええー〜?」」
「私も話を聞いた時には驚きましたし、信じられませんでしたけれど、確かに被害に遭った女性たちの言う通りでした!一度、ユリアナ様の手中に落ちた男性たちは、ただただ、盲目的にユリアナ様を愛しているんです!まるで洗脳されたみたいにね!」
「「ヒェー〜!」」
「彼らの結束力はとても強いもので、ユリアナ様を守るためならどんなことでもやってやろうというシンパのようなものが出来上がっていました。ユリアナ様に対して少しでも文句を言おうものなら、このシンパたちが嫌がらせのために動き出すんです!」
「きゃー!怖い!そんな人と一緒にカステヘルミは住んでいるのよね?あの娘、本当に大丈夫なのかしら?」
マリアーナは真っ青な顔をしてカステヘルミの心配をしているんだけど、
「やっぱりユリアナ様ってオムクスのスパイなんじゃないんですかね?」
と、ロニア様が言い出したのよ!
「だって!敵国オムクスは女性を使って男をたらし込んで行くって言っていましたし!」
ロニア様は自信たっぷりの様子で、
「しかもユリアナ様ってパウラ夫人の遠い従兄の妾が産んだ庶子だという話ですもの!」
ロニア様は円な瞳をキラキラさせながら、
「幼い時から公爵家に潜入させるために育てたとか!ただ、ただ、公爵夫妻は騙されていたとか!」
なんだかあり得そうなことを言い出したんだけど、
「えええ〜?幼い時からスパイとして教育された?そんな知性、あの令嬢には感じなかったんだけどー?」
と、マリアーナが非常に失礼なことを言っている。
「でも!でも!バカっぽく見えるのも彼女なりの演技かもしれないし!」
そんなことをロニア様に言われると、敵国のスパイみたいに思えてきちゃうじゃない!
「私ったらカステヘルミに頼まれて、ユリアナ様がどれだけ破廉恥で、どれだけはしたない女なのかってことをお友達に話しまくっちゃっているんだけど!あまりにも面白い話すぎて、私の友人たちはそのまた友人たちに喋りまくっちゃっているような状態よ!スパイに恨まれて殺されたらどうしよう!」
私の発言に形の良い眉を顰めたマリアーナが言い出した。
「ユリアナ様がオムクスのスパイだったとしたら、先にカステヘルミの身の方が危ないんじゃない?だってスパイと同じ邸宅に住んでいるってことになるでしょう?ユリアナ様がスパイかもしれないってことをお手紙に書いて、カステヘルミに送っておかなくちゃまずいわよね!」
「そう考えると、私はユリアナ様の話は広めておいても何の問題もないんじゃないかなって思いますね」
ロニア様はとっても真面目な顔をして、
「それだけヤバイ女だって知っていたら誰も近付こうとは思わないじゃないですか?知らぬ間に敵国のスパイから自衛出来るわけですし!とっても良いことだと思います!」
「女性は自衛出来るとして、それじゃあ男性は?」
マリアーナが挙手しながら言いました。
「ミカエル様ってカステヘルミの結婚式でユリアナ様の近くにずーっと居たわよね?王国軍にお勤めなのに、知らぬ間に敵国のスパイの虜になっていたら、とーってもまずいことになるのでは?」
「えー?あのイケメン少尉が虜って?」
ロニア様は納得いかないって顔をしているけれど、
「ありそう!ありそう!すでに敵国のスパイの虜になっちゃってそう!」
私の不安は大きくなっていくばかり。
いまだにミカエル様とは婚約をしている状態なので、ミカエル様が敵国のスパイと通じていたならば、私の家だって巻き込まれる案件になるじゃないですか!
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