第39話
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マリアーナに一目惚れをしたと言い出した司書として働くファレスさんはかなりの爽やかイケメンだった。物腰も柔らかく、周りの女性司書からの評判も高いファレスさんは、とにかくイケメンだった。
「マリアーナさん、突然なのですがこの花束、受け取ってはくれませんか?」
寮の近くで待ち構えていた様子のファレスさんは、少し恥ずかしがりながらピンクの薔薇で揃えた花束を渡して来たのだけれど、その時にはすでにマリアーナはカンパニュラの花束を持っていたみたいなの。
何でも総務に勤めるマグナス・ファーガソンという人が衛兵に頼んで渡して来たものだったらしいんだけど、
「あ・・」
ファレスさんはカンパニュラの花束を見て、ちょっと気後れした様子で手を引っ込めそうになったみたい。
「友達のお祝い事で花束を貰う機会があったのですが、ピンク色の薔薇の花束、可愛いですねえ」
と、マリアーナは咄嗟に嘘をついて、ファレスさんが用意した花束を貰うことに成功をしたんだけど、
「あの・・マリアーナさん、今度僕と一緒にお出かけしませんか?」
後ろにロニア様が居るというのにファレスさんのアタックは続く。
「マリアーナ、私は先に行っているわね!」
気を利かせたロニア様は、先に萌葱荘へと戻ろうとしたんだけど、
「待って!ロニア!貴女だけ先に戻したら私が怒られることになるわ!」
と言って、マリアーナはロニア様の腕をむんずと掴んだみたい。
そうしてマリアーナはロニア様の耳元で、
「もしかしたらファレスさんが、スパイかもしれないんでしょう!」
と囁いて、ブルブルッと震え上がると、
「ファレスさん!私最近、本当に仕事が忙しくって!後でご連絡する形にしても宜しいでしょうか?」
と、ファレスさんに向かって言い出した。
「もちろんですよ!」
ファレスさんは気を悪くする様子もなくにっこりと笑うと、
「それではマリアーナさんからのご連絡、いつまでもお待ちしております」
と言って、颯爽と帰って行ってしまったというの。
うーん、ちっとも分からないんだけど・・
「なんでそこでメソメソ泣くのよ?イケメンから花束を貰った上でデートのお誘いまでしてもらったんでしょう?」
「グスッ・・だって・・グスッ・・相手はスパイかもしれないし」
「なんだか知らないけれど、軍の幹部さんから物凄く脅迫されたんですよ」
「うちのおじさんから?」
「そうです」
ロニア様はこくりと頷くと言い出した。
「あれはもう、お前に近づく者は皆全てオムクスのスパイなんだ!みたいな言い方で、正直に言って側で聞いている私も引きました」
「おじさんったら〜!」
もしかして、まさかと思うけれど、おじさんたらマリアーナのことを相当気に入っちゃったということなのかしら?それで牽制する意味でマリアーナにそんなことを言い出したとか?
「私が男性からモテたことなんて一度もないし・・」
マリアーナはグズグズ泣きながら、
「一目惚れなんて言われたのも初めてなのに・・」
マリアーナはグズグズグズグズ泣きながら、
「スパイかもしれないだなんて酷くない?」
悲壮感たっぷりで言い出したのよ。
「リューディアはいいじゃない!なんだかんだ言ってイケメンの婚約者がいるんだから!」
良くない、良くない。全然良くないって。
「クリスティーナも奇跡の恋愛結婚で子供まで無事に産まれているし!周りの友達だってすでに結婚は済ませてどんどん出産しているような状況なのよ!」
マリアーナは枕に顔を押し付けながら、
「せっかく恋人が出来るチャンスだったのに!」
ウワーッと泣き出したのだけれど、いやいや、浮気者の婚約者がいたところで何の足しにもならないって。
「マリアーナ!そんなことを言ったら!私にだって恋人もいなければ!婚約者だっていないわよ!」
ロニア様が胸を張って言い出したんだけど、
「憲兵隊に勤める幼馴染がいるでしょう!」
マリアーナは顔をくちゃくちゃにして、
「恋人もいない!婚約者もいない!幼馴染の男の子もいないのは私だけなのよ!」
と、言い出した。
「いや、本当に、なんでこんなに美人なのに誰も居ないのかしらねえ」
ロニア様は呆れた様子でため息を吐き出すと、
「北の民族で良ければ紹介出来ると思うんだけど」
と、言い出した。
「後は帝国人とか?帝国の画商でちょうど良いのが居たかも〜」
ロニア様は悩ましげな声で言い出したんだけど、
「帝国は流石に遠すぎない?」
私も物申したくなって来ちゃったわよね。
「大陸の南方に位置している帝国までわざわざ嫁ぎに行かなくても、軍部内だったらおじさんの伝手を使って・・」
そのおじさんがマリアーナを気に入っているのだとしたら、紹介は頓挫する可能性が高くなりそうだけど。
「ねえ、マリアーナ、私は思うに結婚が全てじゃないと思うんだよね?」
私はマリアーナの手を握りしめながら言ったわよ。
「カステヘルミを見てごらんなさい、王命によって結婚をしたけれど彼女が幸せそうになんて見える?」
「「見えない」」
マリアーナとロニア様は声を合わせて、
「「見えない、見えない」」
と、ほぼ同時に同じ言葉を発している。
「公爵家の次男でラハティのレディたちが結婚したいと思う男上位に位置するオリヴェル・ラウタヴァーラ様と結婚したところであのザマよ」
「あれは最低な結婚式だったわ!」
「いいな〜、やっぱりそっちに行っておけばよかったな〜」
「ロニア様は結婚式には参加されていなかったの?」
「そうなの!招待状はいただいていたんだけど、カステヘルミ様から来ない方が良いって言われちゃって!」
「「確かに行かない方が良かったと思うような結婚式だったわ!」」
私とマリアーナは声を揃えて言い出しちゃったんだけど、
「ええ〜!だけどヒロイン気質の一妻多夫女が派手に動き回っていたんでしょう?見たかったな〜!一妻多夫女!」
ロニア様はため息交じりにそんなことを言い出したのよ。
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