第38話
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画商も営むルオッカ男爵家は巷では有名な家なのだけれど、才能溢れる画家を見つけてはパトロンとなって支援を行うようなこともするみたい。
そんなルオッカ男爵家が後援をしている画家の中にセヴェリ・ペルトマという肖像画を得意とする人物が居るんだけど、
「このセヴェリっていう男が隣国のスパイにモテモテ状態だったんです!」
と、ロニア様は言い出したの。
顔立ちも良い上に優秀な画家でもあるその男性が、お客さんに連れられて行ったお店で恋に落ちたみたい。その恋に落ちた相手が踊り子のサファイアという名前の女性だったんだけど、
「踊り子のサファイア?名前からして胡散臭いわねえ〜」
ロニア様の話ってこの辺りから急に小説みたいな展開になってくるのよね〜。
「その画家のセヴェリが恋人のサファイアさんから姉妹として紹介してもらったのがエリーナさんで」
「花屋のジェニーちゃんのお姉さん(殺されて川にぷかぷかと浮いていたあの人)よね?」
「そうそう、そのお姉さんがオペラ座の近くのアパートに踊り子のサファイアと一緒に住んでいるのだと画家のセヴェリは説明を受けていたんです」
ジェニーちゃんの家はオペラ座の近くではなく、中央広場の近くにある安アパートなのだけれど、
「そのアパートはピア・オリンというフルート奏者が所有するアパートで、二人が嘘を吐いていたというのはすでに判明しているんです」
こちらの思惑を読み取った様子でロニア様は言うと、大きなため息を吐き出した。
「その問題のアパートの住人は演奏旅行に出かけていた為、長期間、家を留守にしていたみたいなんです。長期間空き家となるアパートを家賃の足しにするために貸出するようなこともあるんですけど、ピアさんはそんなことはしていなかった。そうして帝国の方をぐるっと回って仕事から帰って来ると、家の扉を開けた途端に悪臭が酷くて気持ち悪くなったみたいなんです。もしかしたら、地下の収納庫に納めていた果物の水煮が腐ってしまったのかと考えて、収納庫の扉を開けてみた所、特大の瓶の中にサファイアさんの死体が詰め込まれていたというわけでして」
ロニア様は円な瞳をまっすぐ私に向けながら、
「このご遺体の発見に立ち会うことになったのが、私の幼馴染であるオルヴォ・マネキンなんです」
そう言って、画家のセヴェリのパトロンをしていたルオッカ家としても事情聴取を受けることになり、その後、軍のお偉いさんの仕事を手伝う羽目になったのだと言い出したのよ。
「その、軍のお偉いさんという人が私のおじさんなのかしら?」
「最初に出て来た軍のお偉いさんは、リューディア様のおじ様ではありません」
「だけど今日は、私のおじさんがマリアーナとロニア様をカリチューリソフィアホテルのランチに誘ったのよね?」
そこでロニア様は小難しい顔をすると、
「高級ホテルでランチって言うと素晴らしいものみたいに見えますけど、私はそこで軍部からの報告を受けたんです。サファイアの異母姉妹であり、花屋の女の子のお姉さんであるエリーナさんなんですけれど、敵国のスパイの幹部、ケティル・サンドヴィクという男が殺して川に流したことが自供で取れたっていうんですけど」
えーっと、もう、この辺りで何がなんやら分からなくなるのよね。
「ケティル・サンドヴィクというスパイの幹部はターレス川の支流にアジトを構えていたんですけど、そのアジトでエリーナさんを殺して川に流したというんです」
「エリーナさんは敵国の幹部に殺された。それじゃあ、遺体から腎臓を引き抜いたのも?」
「ケティルは確実にやっていないそうなんです」
ターレス川で発見されたエリーナさんの遺体からは臓器が抜き出された状態であり、その臓器の代わりに古代文字が書かれた紙片が突っ込まれていたのよね。敵国のスパイの幹部がエリーナさんを殺したと言うけれど、遺体から腎臓を引き抜いていない?
「ケティルは女性を利用して商売をしていたため、エリーナさんは自分の妹がガマガエル男に狙われていることに気が付いたみたいなんです。丁度、ナザレノ・ティコリのマダムも妹さんを何処に売り飛ばそうかみたいな話をしていたみたいで、そこでマダムの背後から刃物でブスリ」
その遺体を私とマリアーナが発見しちゃったのね!
「次にエリーナさんは元凶とも言えるケティル・サンドヴィクの命を狙ったみたいなんですけど、見事、返り討ちにあっちゃったみたいで。ドボンとエリーナさんが川に落っこちて勿体無いことをした〜とケティルは考えたみたいなんですけど、川にぷかぷか浮かぶエリーナさんの遺体を何処かの誰かが一度回収したんだろうっていう話になって」
「そこで何処かの誰かがわざわざ遺体から臓器を抜き取って、わざわざ古代文字で書いた紙を捩じ込んだということなのよね?」
「そうみたいです」
はあー〜。ため息しか出ないわ。
カステヘルミの結婚式に行って、ピンク頭にベッタリ張り付く我が婚約者であるミカエル・グドナソンの姿を見て、
「ないわ・・ないわ、ないわ、ないわ〜」
と思っていたところで、
「メゾン、ナザレノ・ティコリのマダムがミカエル様と熱愛みたいよ?」
という噂をクリスティナのお茶会で耳にすることになったのよ。
多情で浮気三昧の婚約者はのしをつけてくれてやる!と、宣言するためにマダムのメゾンまで足を向けてみたら、マダムはぶすりと刺されて死んでいた。
もう一人のミカエルの愛人もどんなものなのか見に行ってみましょう!という話になって中央広場にある花屋さんまで赴いてみたんだけど、ミカエルの愛人は花屋で働く可愛らしいお嬢さんではなく、お姉さんの方だってことが判明したのよね?
そのお姉さんが夜になっても帰って来ず。挙げ句の果てにはターレス川に遺体となって浮いていたという話になってその遺体の確認に赴くことになったのだけれど・・
「ちなみに、メゾン、ナザレノ・ティコリのマダムも隣国オムクスのスパイです」
ロニア様は珈琲を飲みながら『明日の朝ごはんはシナモンロールです』みたいな調子で教えてくれるのだけれども、
「ちょ・・ちょ・・ちょっと無理かも・・」
ベッドにうつ伏せになるマリアーナを端に寄せながら、私もうつ伏せになって寝っ転がっちゃったわよ。
確かにロニア様が、
「今、ラハティの王都には隣国オムクスのスパイがメッチャ潜入しているみたいなの」
と言っていた通り、山ほど敵国のスパイが潜入しているみたい。
「まだ全然、話は終わっていないんですよ!」
後ろでロニア様が声を上げているけれど、
「ちょっと待って、休憩を入れなければ頭がパンクしそうよ!」
与えてくれる情報が多すぎて整理する時間が必要よ!
なんでこんなことになっちゃったのかしら?とか、やっぱりロニア様って軍部所属の情報部の人間なんじゃないかしら?とか、そんなことをツラツラ考えていると、
「グスッ・・グスッ・・グスッ」
隣でマリアーナが泣いているわ!
「ど・・ど・・どうしたのよ!マリアーナ!」
私が声をかけると、
「リユーディア・・私ったらつくづく男運がないのかもしれないわ〜」
と言って、マリアーナがメソメソ泣き出したのよ!
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