第37話
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王都でも大人気のカリチューリソフィアホテルのランチは、予約をしても一年待ちと言われるような場所よ?そんな場所に私のおじさんがマリアーナを誘っていたという話を聞いて、
「なんなのよ!一体なんなのよー!そこは姪っ子も連れて行くべきじゃないの!」
怒りで目の前が真っ赤になったのよね。
多忙なおじさんはなかなか捕まらないため、まずはマリアーナを問い詰めてやろうと考えて萌葱荘までやって来たのだけれど、
「えーっと・・えーっと・・」
頭の中がこんがらがって来ちゃったわよ。
「まずはマダムが背中からひと突きにされて殺されていたところを発見して、そのマダムを殺したのが花屋のジェニーちゃんのお姉さんじゃないかって話になって、その花屋のジェニーちゃんのお姉さんがターレス川に浮かんでいたのを発見されて」
「そうそう、そのターレス川に浮かんでいたというご遺体の姉妹と思われる人物の遺体が瓶詰めにされて発見されちゃったのよ!」
「うう〜ん!」
そこから頭が混乱して来ちゃうのよね!
「ジェニーちゃんとお姉さんのエリーナさんは姉妹二人で生活をしていたわけだけれど」
「そのエリーナさんには腹違いの姉妹が居て、二人は交流を続けていたのだそうです。その腹違いの姉妹というのが踊り子をしていたサファイアという名前のスパイなんですけど」
「頭が痛いわ!情報が多すぎて頭が痛くなってきたわ!」
目の前に座るロニア様はふっくらとした体つきの『無害!』を全面にアピールしているような容姿の持ち主なんだけど、口から吐き出す言葉があまりにも過激すぎて、
「ロニア様ったら・・そのような普通の男爵令嬢に見せかけて・・もしかしたら王国軍に所属する情報部の方ということですか?」
私が恐る恐る質問をすると、
「まさかー!冗談じゃないですよー!」
コーヒーカップを片手にカラカラと笑い出したのよ。
「私の家は絵画の目利きで有名なんですけど、私も幼い時から絵画の鑑定には定評があるものだから、帝国と王国を行き来しながら絵画を扱う仕事をしているんです。今は、王宮所属の学芸員が本業になっているんですけど、それもこれも、王家が外には出したくないからという苦肉の策でもあるんです」
「ああー〜、カステヘルミ的な感じの囲い込みですか?」
「そう!そう!そういえばリューディア様もカステヘルミ様と友人関係でしたものね!」
ロニア様はそこで目をキラキラさせながら言い出した。
「私はカステヘルミ様の結婚式には行けなかったんだけど、それは凄い結婚式だったみたいじゃないですか!リューディア様は実際に行ってみてどうでした?やっぱり小説的展開が目白押しって感じだったんですか?」
「小説的展開って……」
確かに、小説的展開が目白押しだったのは間違いないわね。
「言うなればカステヘルミは悲劇のヒロインだったんだけど、あの娘ったら悲壮感ゼロだからヒロインになりきれないところがあるのよね」
「噂によるとピンク頭の物凄い令嬢が登場したとか何とか?」
「そう!そう!それは物凄い令嬢がいたのよ!」
現在、私は一妻多夫を信奉するユリアナ嬢の情報を布教しているところでもあるので、男爵令嬢であるロニア様のところまで情報が行き渡っているということに満足したわ!
「「一妻多夫!」」
私とロニア様はほぼ同時に同じ言葉を吐き出すと、顔と顔を見合わせて笑ったわ!
「一妻多夫ってすごいですよね〜!私なんか婚約者もいないですし恋人すら出来もしない状況なのに!」
「クソみたいな婚約者だったら居ない方が絶対良いわよ〜!」
私は心を込めて言いましたとも。
「私の親が勝手に決めた婚約者、ミカエル・グドナソンって名前の奴がいるんだけど、カステヘルミ様の結婚式ではピンク頭のユリアナ様のところにはべっちゃって、私の所に挨拶にすら来ないのよ?」
「挨拶にすら来ない?それじゃあエスコートは?」
「そんなのあるわけないじゃない〜!」
私の中の怒りが沸々とマグマのように沸き上がって来たわ。
「殺されたマダムの愛人になったんじゃないか?なんて噂があるような男なんだけど、実はマダムだけでなく花屋の店員のジェニーちゃんのお姉さんともお付き合いしていたみたいで!」
怒りで頭が沸騰して来ちゃったわ!
「カステヘルミの結婚式ではユリアナ嬢にベッタリ状態で、私の所に近づきもしなかったもの!」
「わー、本当に最低の婚約者ですねー!ミカエル・グドナソン・・ミカエル・グドナソンって、私、会ったことがあります!」
パチッと目を見開いたロニア様は、
「私の幼馴染の上司の方です!」
と、言い出した。
「それじゃあ幼馴染の方は軍部にお勤めの?」
「憲兵隊に所属しているんですが、今は王国軍のお手伝いをしているみたいで」
そこでロニア様はクルクルと頭の中で何かを考え込んでいるような素振りを見せていたのだけれど、
「何か事情があって婚約者であるリューディア様に挨拶が出来なかったんじゃないんですかね?」
と、意味不明なことを言い出したのよ。
「は?ミカエルに何の事情があるっていうの?」
「それは色々と〜・・」
「色々って何なのかしら?」
「それはその〜、今現在、ラハティの王都にはそれは沢山の隣国のスパイが潜り込んでいるような状態じゃないですか?」
ロニア様は私の方へ顔を近づけると、コソコソと囁くように言い出したのよ。
「今日も軍部のお偉いさんに豪華なホテルにまで呼び出されたんですけど、想像以上に隣国オムクスのスパイが入り込んでいるし、私やマリアーナは狙われやすいから気をつけろと言われたわけで」
「どうしてロニア様とマリアーナが狙われるの?」
「それはその、私は絵画が鑑定出来るので、帝国の皇帝陛下にも覚えがめでたかったりしていますし、マリアーナはマリアーナで皇帝陛下が愛するグアラテム王の子孫が残した石板やら羊皮紙なんかを取り扱っているじゃないですか?」
ちょっと意味が分からないわね。
「それが理由で、何で隣国オムクスが二人を狙うわけ?」
「私とマリアーナが『これはグアラテム王の子孫が残した本物の石板だ!』と言うだけで、偽物を作り放題になっちゃうと思うんですよ」
ええーっと、言っている意味が分からないわね。
「隣国オムクスは偽物を本物と偽って売ることで大金を得ようと考えているんですよ!そういうことをやっちゃうような奴らなんです!」
ロニア様はうんざりとした様子でため息を吐き出した後に、
「人も簡単に殺しちゃいますし、色仕掛けだって仕掛けてくるような奴らだからこそ、婚約者も恋人も居ないマリアーナがまずは狙われるだろうと言われちゃって!」
ロニア様は前のめりになりながら、
「何で私に色仕掛けの心配をしないんだろうって!お偉いさんの話を聞いている間に何度も頭に来たんです!だけどマリアーナと二人で王宮に戻って来た途端に、司書のファレスさんが花束を用意して待ち構えていたり、総務のマグナス・ファーガソンさんが警吏に頼んで花束を渡してきたりしたもので!」
ロニア様は目をバキバキにして見開きながら言い出した。
「なんで!なんでなの!私だって未婚で!婚約者もいなくって!恋人だっていないのに!なんでマリアーナにだけモテが到来状態なの!」
すると、ベッドに突っ伏したままのマリアーナが言い出したのよ。
「その花束を贈ってきた奴らが敵国のスパイかもしれないっていうんでしょう?しかもその敵国のスパイっていうのは殺した後に内臓を引き抜いたり、瓶詰めにして歩いているような奴らだっていうんでしょう?」
マリアーナはベッドに倒れ伏したまま、
「モテ期ってなんなの?相手は敵国のスパイかもしれないんだったら、モテも何もあったものじゃないじゃない!」
涙に濡れた声で言い出したのだった。
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