第36話
諸事情あって間が空いてしまいましたが、こちらのお話を再開させて頂きます!!
私はリューディア・バクスター。バクスター子爵家の一人娘であり、最近、死体とのご対面が続いているものだから夜も眠れないような状態よ。
殺人事件に巻き込まれるなんて、まるで小説みたいな展開よね?
私の親友のカステヘルミも、公爵家に嫁いで以降、嫁姑戦争を繰り広げているみたいだけれど、嫁姑戦争と殺人事件、どちらも小説に出てくるような定番の内容じゃない?もしも自分でジャンルを選べるとしたならどちらを選んだ方が良いのかしら?
嫁姑戦争か・・私にも一応、ミカエル・グドナソンという伯爵家の次男が婚約者として割り当てられているのだけれど、彼のお母様と嫁姑戦争?彼のお母様と戦争をする前に・・彼の星の数ほどいる恋人たちとの戦争が勃発しそうよね。
私の婚約者はとにかく顔だけは良い甘ったるい男なので、浮気三昧の男なのよ。そんな婚約者が最近手を出しているのがサロンのマダムだったのだけれど、マダムは背中からひと突きの状態で死体となって発見されたのよ。
年増の色っぽいマダムのご遺体の第一発見者は私と友人のマリアーナなのだけれど、もしかしたらマダムを殺したのはマダムのところで働いている針子の令嬢かもしれないというの。その針子の令嬢、名前はエリーナというのだけれど、この針子の令嬢ともミカエルは交際していたっていうのよ?
ミカエルを間に挟んだ痴情のもつれによって殺人事件が勃発ってこと?正直に言ってうんざりするわ。いつになったら婚約を破棄、解消、出来るのかしら?うちの親ったら子供の幸せなんかどうでも良いと考えている節があるのよね!
私がエリーナさんの妹に会いに行ってみたところ、そこでエリーナさんが水死体として発見されたという報告が届いたの。その水死体を私も拝見させて頂いたのだけれど、遺体からは腎臓が引き抜かれた状態であり、腎臓の代わりに古代文字が書かれた紙片が詰め込まれていたのよ。
古代文字の専門家であるマリアーナはその書かれている文字を解読したところ『私 お前 花 橋 喜び 出会い 七色 幸せ こら のらのらのら』だって言うのよ?ここまで来たら頭が激しく痛み出してくるわよね?小説的展開にも程があるって思うわよ。
親友のカステヘルミの結婚式に参加をして、親族席でピンクブロンドの女が哀れを装って号泣している時点で、
「なんて小説的な展開かしら!」
と、思ったけれど、その時以上に小説的展開よね?
マリアーナは死体から発見された紙片と同様の文章が遺跡の中に刻み込まれていないかを確認することになったのよ。私は私で、毎日のように王都で発見される遺体の中で特に検死が必要だと思われるものの確認に回されることになったのだけれど、ラハティの王都は一体どうしちゃったのかしら?あちらこちらで臓器が引き抜かれた遺体が発見されているのだもの!
アドルフ殿下が王都の治安の悪化を懸念して激怒しているという噂を聞いたことがあるけれど、観光客が安心して観光していられるような状況ではないわよね!
心底うんざりするから気分転換にお友達とお茶会をしていたら、
「リューディアのお友達!あのマリアーナって娘!カリチューリソフィアホテルでランチをしていたのよ!」
という話を聞くことになったのよ。
カリチューリソフィアホテルのランチって一年待ちだと言われているような人気店よ!そんな場所に誰と行っているって、私のおじさんと一緒に行っていたみたいなの!これはもう信じられないわ!なんでおじさんはマリアーナだけに高級ランチを奢っているのよ!
おじさんを捕まえることが出来なかった私は、寮に戻ってくるはずのマリアーナを待ち構えていたのだけれど、ルオッカ男爵令嬢と一緒に帰って来たマリアーナは二つも花束を持っていたのよ!マリアーナったら完全にモテ期到来じゃない!
「マリアーナ!ずるいわ!ずるい!自分だけ男の人にモテモテだなんて!羨ましいにも程があるわよー!」
ソフィアホテルのランチだけでも十分にずるいのに!モテ期到来だなんて!羨ましい!羨ましい!なんて羨ましいのかしら!
マリアーナの自室に入るなり私が癇癪を起こすと、マリアーナは疲れ果てた様子でベッドに突っ伏したの。そんなマリアーナから花束を受け取ったロニア・ルオッカ令嬢が、
「残念ながら、そんなに羨ましい状況ではないみたいなのよ」
と、言い出したの。
「ええぇ?私は羨ましくて!羨ましくて仕方がないっていうのに!」
「まあ、まあ、ちょっとお座りなさいな」
勝手知ったるマリアーナの部屋らしく、ロニア様は手際よく珈琲を淹れて私の前に置くと、自分の前にもミルクたっぷりの珈琲を置いたのよ。
上級職員でもある女性官吏も利用する萌葱荘には、小さなキッチンテーブルが置けるスペースとベッドルームが丸ごと一つになったような部屋が用意されており、簡単な軽食や飲み物を用意出来る小さな炊事場も部屋の中に設けられている。
「精神的ダメージが大きすぎてマリアーナが復活出来そうにないから、私から説明をさせて貰うんだけど」
ふっくらとして手でコーヒーカップを包み込んだロニア様は、円な瞳を伏せながら言い出したのよ。
「今、ラハティの王都には隣国オムクスのスパイがメッチャ潜入しているみたいなの」
「えっと?めっちゃ?」
「リューディア様も拝見したという内臓が引き抜かれたご遺体。花屋で働く娘さんのお姉さんでナザレノ・ティコリというサロンで針子をしていたというエリーナさんなのだけれど、あの人も隣国オムクスのスパイだし、彼女と姉妹だと思われる女スパイの遺体は瓶詰めとなってオペラ座の近くのアパートから発見されているの」
「えっと〜・・」
与えられる情報が多すぎて、わけが分からない状態だわ。
「ごめんなさい、女スパイって言うのは、花屋のジェニーちゃんのお姉さんのことで間違いないかしら?」
「そう、そう」
「ジェニーちゃんのお姉さんの姉妹だと思われる女性の遺体も発見?え?女スパイ?それに瓶?瓶詰めってなに?」
「果物の水煮を保管するのに使用していた巨大な瓶の中に詰め込まれていたのよ」
「えーっと、果物を?」
「死体を詰め込んでいたのよね」
「・・・」
頭が激しく痛くなってきたわ。
何?何?一体なんなの?
マリアーナはベッドにうつ伏せとなったまま微動だにしないんだけど、私も同じようにベッドに寝転がりたくなってきたわ!
諸事情あって止まっておりましたが、リューディアベースで続きがスタートしていきます!懲りずに最後までお付き合い頂けたら幸いです!!こちらの作品〜一妻多夫を応援します編〜が6/2(月)にアース・スター様より出版されました!!鈴の助さまの素晴らしいイラストはもちろんのこと!初版本には絶対読んで欲しいショートストーリーが封入されておりますし!内容も嫁姑バトルでてんこ盛り状態になっておりますので!お手にとって頂けたら嬉しいです!!時間あれば時代小説『一鬼 〜僕と先生のはじめの物語〜』もご興味あればどうぞ!モチベーションの維持にも繋がります。
もし宜しければ
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