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幽体離脱 その壱

 幽体離脱の経験…もちろん有りです(汗)


 幽体離脱とは、心霊現象的に言えば、肉体から魂が離れている状態を言うらしいが、脳科学的には睡眠時に、脳の視覚視野や空間認知を司る部分が、活動または、エラー起こす事によって、浮遊している感覚に陥る夢の様なものらしい?

しかし、そのメカニズムは良く分かってないようだ。

私の記憶の中で、恐らくこれが、最初の幽体離脱体験だったと記憶している。

あまりにも、凄まじい体験だったので、今でもトラウマレベルで、鮮明に思い出してしまうのだ。


 病的に金縛り体質な私は、ほぼ毎晩の様に、金縛りに罹ってしまう。

この夜も、強めの耳鳴りからの金縛りに「またかよ」と、半ば呆れながら、何時もの様に金縛りを自力で解除しようと、藻掻いていると解けたと同時に、突如エレベーターに乗った時の様な、フワッとした浮遊感に襲われた。

一瞬、何が起きたか理解わからなかったが、天井が少し近づく感覚と宙に浮いている感覚から、幽体離脱したと理解した。

「これが幽体離脱かぁ」

初めての幽体離脱に戸惑いながらも、この後、どうなるか知りたい好奇心の方がまさって、ワクワクしている自分がいた。

手足は動かせるのだが、初の幽体離脱に、どうすればいいか分からず、そのまま身を任せる様に上昇していると、辺りが優しい白い光で満たされていき、そのまま光の中へと、ゆっくりと入っていった。

そんな肉体から魂が離脱した状態からなのか、心地良い高揚感と浮遊感、更に幸福感で満たされていた。

その心地良さは、今まで味わった事の無い至福の時間だった。

そんな感覚に満たされ、幸せを感じていると、ゆっくり光と共に天井に近づいていく。

上空から、金色の光の筋が何本も伸びて来て、その光の中へと入ろうとした時だった。


「来るな」


耳から入った声では無く、頭の中に響く様な声だったと記憶している。

「えっ、今の声は何だ?」

聞き覚えの無い声だったが、腹の底から吐き出す様な声。

その声は更に「来るな、帰れ」と続けらた。

帰れと言われても、初めての幽体離脱で、帰り方なんて分かるはずも無く、どうやって帰ればいいのかと、訊いてみようと思ったその時だった。

下から抗えない様な強い押し上げられる感覚と、上から押さえ付ける強力な力で圧迫されて、肺の中の空気を全て吐き出した感覚に襲われた。

「く…、苦しい息が出来ない、胸が痛い、頭が割れる」

強烈な頭の痛み、騒音の様な耳鳴り、そして鼻の中に水が入ってきた様な痛みと、息苦しさで涙目になった。

ゆっくりと上から潰される様に、押し下げられる。

抗えない、ただ苦しく、頭も、耳も、鼻も、肺までもが痛く、小指の先すら動かす事は叶わなかった。

この苦しみから、早く解放されたい。

ただ願うしかなかった。

「い、息が…。早く、早く息を吸わないと、、死…死ぬ。もう駄目だ。限界…」

朦朧とする意識の中、この苦しみから、早く解放される事を、懇願している最中に気を失った。


 目を開けると、辺りは未だ暗かった。

辛うじて、窓から入る僅かな光で、辺りの様子は、窺い知る事が出来た。

時間はそんなに経過っていない様だった。

そして布団では無く、畳の上に寝ている事に気付く。

「助かった…のか?」

未だ押さえ付けられた力に、抗えず体を動かす事は叶わなかったが、呼吸が出来ている事に安堵した。

辛うじて首だけが動き、首を右に動かすと、隣に人が寝ている事に気付く。

どうやら、自分の肉体に戻るのを失敗したのかと、その時はそう思った。

「もし、このまま戻れ無かったらどうしよう」

そんな事を、唐突に考えながら、寝ている人の顔を見るが、暗くて良く分からない。

「もしかして下の階の人?」

しかし、下の階の住人でも無いと知る事になる。

寝ていた正体不明の住人は、こちらに顔だけを向けると、私に向かってこう言った。


「もう少しだったのに…」


 その、恨めしそうな声を訊いた瞬間、背筋が凍る感覚に陥った。

何が、もう少しだったのかは分からない。

しかし、それは恐怖を感じるのに十分だった。

このあと再度、気を失ったと思われるが、記憶はここで途絶えた。 

 

 目覚めると、朝になっていた。

どうやら、あの後、気絶する様に眠ってしまったのだろう。

鼻の奥にツンとする感覚だけが、少しだけ残っていた。

「壮絶な体験だった…。もう勘弁して欲しい」

あんな苦痛と意味不明な恐怖を味わうなら、もう二度と幽体離脱なんてするもんじゃないと思いながら、壮絶な幽体離脱体験に抗った疲れと、寝不足気味の気怠い体のせいか起きられずにいた。

途中で聞こえた声は、何処かで聞いた気もするし、しない気もするが、分からない。

しかし、自分至上最悪な朝を迎えた事だけは、間違いなかった。

「もし、あのまま天に昇っていたら死んでいたのだろうか…?」

そんな考えが頭を過る。

改めて恐怖を感じ、寒くは無かったが身震いをしながら、体を布団から剥がす様に起こした。

倦怠感に眠気はあるが、仕事に行かなければならない。

出来る事なら、このまま二度寝したい気分だが、この程度で仕事を休んでいたら、金縛り体質の私は、ほぼ毎日の様に休暇願いの連絡をしないといけなくなる。

「仕方ない、準備するか」


 この日、懸命に睡魔と戦うが、立ったまま寝落ちしてしまい、膝から崩れ落ちそうになりながらも、しっかり残業まで粉して帰宅する。

そんな壮絶な一日を過ごしたにも関わらず、何時もの様に、今夜も金縛りに罹るのだった。


 

 

 99%ノンフィクションです。

生きてて良かった(笑)

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