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今度こそは

繰り返し見る夢の事を反復夢と言うそうです。

今回は、そんな夢の話です。

 たまたま、入った公衆トイレは、配管が壊れているのか、床が水浸しだった。

「駄目だぁ漏れそうだぁ。もういいやここでしよう」

配管の壊れた水浸しのトイレで、用を足そうとしたところで目が覚めた。


 十一月初旬の深夜二時、流石に冷える。

布団から出るのも億劫だが、いい歳をして漏らす訳にはいかないので、意を決して布団から出る。

ドアを開けてトイレに入り、用を足しながら左右を見た。

サービスエリアのトイレかと思う程、大量の男性用トイレが並んでいる。

どうやら、まだ夢の中にいると理解した瞬間、布団に寝ている状態になった。


 夢だったかと、再度起き上がりトイレのドアを開けると、今度は庭に出ていた。

そのまま、用を足し布団に戻ると尿意が残っている。

どうやら、これも夢だった。

通常、庭で用を足す事は無いので、その時点で気付くべきなのだが、夢だと案外気付かずに用を足している事が過去にもあった気がする。

気を取り直して、再度起き上がり確認する。

「今度こそは、大丈夫だよな」

今回はトイレのドアを開けたはずが、目の前には、水が張られたバスタブがあった。

「何でだよ」

一度、布団に戻って、起き上がるところから、やり直す事にした。

どうしたら、このトイレループから解放されるのか分からない。

「起きてトイレに行くだけなのに、何故、目覚める事が出来ない?」

寝る前に、餃子焼いて、一緒にビールを飲んだのがいけなかったのかも知れない?

「よし、今度こそは」

その後も、外に出る、トイレが水浸し、便器が無い、歩いて着いた先が布団だったと、目覚める気配は一向に無かった。

「駄目だ。分からん、諦めた」

そこで記憶が途絶えた。


 少し寝たのだろうか?目覚まし時計の音がして、普通に目が醒めた。

目覚めて、まず股間の辺りを確認した。

「良し、漏らしてない」

尿意はあるものの、少し強めの尿意くらいで、我慢出来ないほどではなかった。

「トイレに行けない夢とか、もう勘弁だな」


 十二月、母方の実家に行く用事があり、その日は、そのまま泊まる事になった。

「朝緒、良く来たな。ゆっくりしてってくれ」

叔父と、こうして差しで飲むのも、久しぶりと言う事もあり、朝まで飲み明かそうと、タクシーを呼んで市街地に繰り出す事にした。

「久しぶりだね。朝ちゃん元気してたぁ」

叔父が行き付けのスナックのママが、声をかけて来た。

「はい、お陰様で元気だけはありますよ。金は無いけど」

大笑いしながら、肩の辺りをペシペシと叩かれながら、

「知ってる。私も無い」

ママは、そう応えると、また大笑いする。

楽しい会話も交えつつも、飲み過ぎたのかトイレに行きたくなった。

「あ、トイレお借りします」

「どうぞ、迷子にならないでね」

「どんだけ広いんですかこの店、多分、大丈夫です」

トイレのドアを開けると、そこは水浸しの公衆トイレだった。

ここで、用を足すのは流石に無理だろう…と思ったところで目が覚めた。 

「夢だったかぁ。叔父さん、去年死んでたわ」

回りを見渡すと、自宅の布団に寝ていた。

「そもそも、叔父さんの家に泊まってる夢見るかな」

少し苦笑いに似た笑みを浮かべ、布団から起き上がる。

用を足して、台所で水を一杯飲んだ後、部屋に帰って来ると、以前にも感じた違和感と残尿感が残っている。

「もしかして、これも夢なのか?」

再度、布団から起き上がりトイレを目指す。

トイレは、自宅のトイレで間違い無かった。

「よし、今度は大丈夫だろう」

しかし、残念な事に、五年前に増築した時の間取りにそっくりな事に気づく。

「駄目だ。これも夢だ」

夢だと分かっているだけマシかと、切り替えて改めて起き上がった。

「次こそは目覚める」

気合いを入れて、三回目のトイレを目指す。

今度は、トイレも台所も違和感は無い気がしたが、ただ一点コップの位置に違和感を感じた。

そのコップは、ここに置いていないはずのコップだったからだ。

「多分、これも夢だ」

落胆している暇は無い、このままだと、確実に布団を濡らす事になるかと思うと、気が気では無かった。

感覚的に現実に近い夢の為か、判断難しいのは、本当に厄介だった。

無い知恵を絞り、どちらか判断する為に、腹這いになった状態から立ってみる事にした。

「夢だったら、きっと立てるはず」

上体を起こすと、体を真っ直ぐにしたまま、上半身が起き上がっていく。

「これは夢だな」

目覚めるところからやり直す。

「よし、今度こそ」

また、起き上がった。

「くそ、また駄目か。今度こそは」


 何度、試しただろうか?既に何度目なのか数える事は諦めていた。

どうしたら目覚めるのか…。

出来る事は、全てやったと思う。

「いい加減に、起きろ、起きろ、起きろ俺」

怒りにも似た叫びから、その時は突然やって来た。

「はっ、やっと目が覚めた…のか?」

真っ直ぐな体勢で、仰向けに寝た状態で目が覚めた。

念の為にと、仰向けで膝を伸ばしたままで、立ち上がろうとしてみたが、立ち上がれなかった事で、現実だと確信する。

「よし、今度こそ大丈夫」

やっとの思いでトイレを済ませると、この後、一睡も出来ずに朝を向かえた。


 今日は十二月二十九日、仕事納めの後に、仲間内で、忘年会を兼ねて飲む事になった。

居酒屋で解散した後、残った同僚で、若い時に行っていたスナックに行く事になった。

「ママ、久しぶり」

「あら朝緒ちゃん、久しぶり元気そうね」

「ママの方こそ、あっトイレ借ります」

「どうぞ、ちゃんと帰って来るのよ」

「大丈夫、もういい歳何だから迷子に何てならないから」

トイレのドアを開けると、以前にも見た事のある水浸しの公衆トイレがあった。


「もしかして、これって」

そして、三度目のトイレループに突入した。


夢を夢と自覚して見る夢は、明晰夢と言うそうです。

明晰夢は、夢をコントロール出来るらしいので、もし夢だと自覚あれば、夢をコントロールしてみてるのも良いかも知れません。

もちろん、自己責任でお願いします(笑)


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