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菅野尊の大冒険  作者: KAZU
2/2

尊vs夏美 ~探索の始まり~

 尊は布団の上に寝かされていて布団の横から男性が心配そうに見つめていた。


「おおっ」

「あっ! 気付いた! 良かったよー!」

「あれ? 何で越智がいるんだ?」

「尊、お前三日ぐらい寝てたぞ! 心配したんだぞ!」


 尊は気付いたら家の中にいた。ここが尊の義兄、三島越智の家であることが分かった。


「心配掛けて済まないな」


 と言って、尊は座った。だが、状況が読めない。


「そもそも、何で俺はここにいるんだよ?」

「尊、多賀先生が行方知れずになった」

「何!? それは大変だ!」


 なんでそれでここにいるのか? それが聞けずにその代わりに粟通が行方不明になったと聞かされた。じゃあ、尊のような粟通の子供たちはこの後どうするのか?


「他の奴らは?」

「みんな先生を探してる」

「そうか、で、俺はどうすればいいんだ?」

「みんな担当の地で様子を見ているんだけど、その様子じゃ、担当地域から離れてるいよな」

「ばれたか」

「尊は海だったはずだよ」

「そうだ」

「川にいたって事は川を上ってきたとか」

「ヒマだったから済まない」

「俺はいいけど、まあ尊らしいな」

「よければ川を渡りきるまで俺がついていこうか」

「え? いいのか?」

「今の尊は体力が万全ではない。さっきまで寝てたんだからな」

「いやいや、心配するな。もう大丈夫だ」

「いや、でも」

「分かったよ。川を渡りきるまで頼む」


 尊は立ち上がった。


「しょうがないな。もう行くんだな。尊」


 尊と越智は越智の家を出た。


「おう、越智、あれはなんだ?」


 越智の玄関の屋根に日傘みたいなものが指してあった。


「あれは、日除けのようなものかな? 暑いんだよ。太陽が地面に当たって」


 それで、あれを指しているのか、と尊は思った。まあ、燃えやしないだろうが。


 その後無事尊は越智の先導で家の近くの川を渡りきった。


「ありがとう、越智!」

「尊も気をつけて。お前は無茶するんだから」

「分かってるよ! じゃあな!」


 尊は意気揚々と旅路に戻った。


「……あれは分かってないな」


 越智は怪訝そうに尊を見送った後家に帰るが、尊は旅を続けた。


「また町を通らないと帰れないな」


 帰れないことはない。だが、海までは町を通るのが近道だ。こうして尊は行くときに通った町をまた通ることにした。


「あ、あれは?」


 町に入ると尊はある女性を発見した。


「あれは、夏美じゃねえか」


 その、夏美と思われる人は道に座って下を向いていた。エネルギッシュな太陽がちょうど夏美を照らし込み、夏美は輝かしく見えた。ただ、この辺りには人気がなく、それを尊は不気味に思った。


「なんだよ。夏美は何を落ち込んでいるんだ」


 尊は夏美に近寄って声を掛けた。


「夏美、何落ち込んでるんだ?」

「あなたは!?」


 夏美は体を起こすとすぐ尊に襲いかかった。


「来ないで!」

「なんだよ。人が折角心配してやってんのに」

「ミコトが不審な動きをしているから、私を倒しに来たのね!」

「いや、ちょっと待て! なぜそうなるんだ!?」


 不審な動きって言うのは多分海から川を上って越智の家から降りてきたことを指すのだが、尊自身は不審というか、暇だったからただ散歩していただけにすぎない。


「行くわよ!」


 そう言って夏美が繰り出した攻撃は炎の舞、ひのまいと読む。手を振って火を作る術だ。

周りに燃える物がないので多少は暴れられる。尊はそれだけ強いのだ。その尊はすぐさま彼方で防御する。


「違うっつってんだろ。って、聞いてねぇ」


 尊はそのまま剣を構えた。


「仕方ねぇ、倒すしかなさそうだ」

「雷炎」


 夏美の装飾している玉の力を借りてすれ違いざまに炎を投げた。尊は剣で防御するが静電気で剣全体が帯電する。


 尊はそのまま夏美に突撃する。


「はいっ!」


 夏美は炎で壁を作って尊の攻撃を防ぐが尊はそのまま突破した。


「うぐっ!」


 尊の剣は夏美の腹部に刺さるが、倒れない。尊の方も焼けてしまって衣装がボロボロになる。


 夏美は血まみれになりながら呟く。呟いた口元にも血が垂れている。


「まだまだよ」


 夏美はまた火を尊に投げてくる。


「あちぃ!」


 至近距離の攻撃を尊は食らう。


「おいっ!」


 尊はまた夏美を斬りつける。今度は至近距離にも関わらず、夏美の技の影響で刺すことはできず、致命傷を負わせられなかった。だが、夏美の着物はさらに血に染まって行った。


 尊の方も大概ではなく、体中が焼けていった。


「夏美! そろそろ決着をつけるぜ」

「来てみなさいよ! 炎を浴びせてやるわ!」


「うらぁ!」

「はっ!」


 二人は同時に技を繰り出す。


「どうだ」


 尊は笑った。夏美は顔から力が抜け、その場に倒れ込んだ。


「おい、夏美!」


 尊は夏美を抱いて、寝かせられるところを探した。


********


 結局河原まで行って寝かせたが、そこで夏美は気付いた。


「何自分から仕掛けといて死ぬんだよ。バカか!」

「んー。何なのよ、もう」

「お前こそ何なんだよいきなり襲って来て」

「ねえ、本当に私の事倒そうとしてないの?」

「まだ疑ってやがる」


 尊は困った。この人はなぜこうも自分を疑うのか? そしてどうやってこの汚名を晴らせばいいのか?


「もう大丈夫なのか? 起き上がってるけど」

「私たちは神、不死身でしょ? 今の結果が人間界に多少影響するけど」

「そうだった」

「それに尊は病気を治す神徳持ってるから、一緒にいると治る」


 ここで出てくる神徳とは勝利したときに得られる事象の事であり、敗者の神徳は切り捨てられる。夏美の神徳は運であるから彼女は生き延びることが出来た。尊の神徳は健康だから、尊自体の治療は叶わなかった。


「お前は運で俺は健康、痛み分けじゃねえか」

「そうね。もう大丈夫」


 夏美は尊にそう話していた。


「お前もなー、自分を殺そうとしている奴に何でそんなに話しかけてるんだよ」

「そうだった」

「なぜ襲って来た。理由を聞かせてくれねえか」


 夏美は立ち上がり臨戦態勢に入る。尊はそれを制止した。


「尊こそ何しに来たのよ」

「いや、たまたま通りかかったらお前がいたからさ、挨拶しようと思ったんだ」

「は? あんた挨拶するような人じゃないでしょ。だから怪しいのよ」

「いや、なんでそこまで疑われてんだよ」

「あんたの今までの行いの代償みたいなものじゃない」


 尊は固い表情をした。自分が何か悪いことをしてきたのか考えていた。だが考えても分からなかった。


「そもそもさあ、あんた何で海にいないのよ?」

「それは……」


 尊は目を逸らした。逸らした先には蓮の花が咲いている。


「サボってんでしょ? じゃあ私と組まない? どうせ戻る気ないでしょ」

「戻る気はあるが、組むって何だよ?」

「父上が行方不明になったでしょ?」

「粟通か。そうだったな」

「探しているんだけどね、手掛かりがないのよ。他のみんなも何の策略もなく探してる」

「お手上げだな」

「そんなときに尊が来たのよ。だから、私を殺さないなら一緒に父上を探してほしいの。もし殺すなら、ここで殺して!」

「まだ疑ってんのかよ……」


 夏美のかなり本気の覚悟を尊は見た。神は倒しても死なないが、彼女が言っているのは神徳と言う概念めいたものをなくせって言う、それは本当に殺すことを指しているようだった。


 大して尊は、何も手掛かりがないって……。これでは探しようがないと考えていた。


「俺は夏美を殺すつもりはない。それだけは本当だ。俺も粟通を探すのを手伝う」

「本当?」

「だから俺は夏美を殺すつもりはないんだって。信じてくれ」

「そ、そこまで言うなら、信じるわよ」


 よかった。尊は胸をなでおろした。


「この後どうする?」

「そうだな。まあ、ここで話すのもなんだから、なんか建物は無いか?」

「とりあえず、町へ戻ろうか」


 尊と夏美は町で空いている建物を探し始めた。


「お前のせいで海に戻れなくなっただろ」

「私のせいにしないでよ。あなたが海から離れる方が悪いんでしょ? それにしても海に戻るっていう手段もあったでしょ?」

「お前が組んでって言うからさ。面白そうじゃねえか」

「何が面白いかさっぱり分からないわ」

「まあ、粟通が分からなくなったんなら探さないとな」

「うん」


 夏美は、それに納得した。粟通を探して欲しいのは彼女の気持ちだから。だがそれは遠い道のり。何せ手掛かりが全くないのだ。


「ああ、前の店だわ」

「店?」

「ちょっとな、腹が減って寄った店だ」

「団子屋じゃない」

「そうだ」

「ん? 団子屋なら、あそこがあるわね」

「おいおい、どこ行くんだよ」


 尊は夏美がいきなり歩く方向を変えるものだから一瞬ついていけなくなるがついていく。


「ほら見て、尊」

「何? って何だよ!」

「どうしたの?」

「お前バカか!?」

「何よバカって」

「俺にはこれが城にしか見えねえ」

「何言ってるの? ミコト。これは城だよ」

「お前は城に住むのか?」

「お前は? ミコト、あんたも此処に住むのよ」

「俺がか? 何故だ」

「私が住むから」

「いや、誰も住むとは言ってないだろ」

「あんたは海からこの町に通ってくるの? 時間の無駄だわ」

「体を分割できるだろ」

「私はそれやったことないから。とにかく、住まないと組まないから」

「組まないと殺す……か。分かったよ。一緒に住めばいいんだろ。夏美と上手くいくとは思わないがな」

「メインは父上の捜索よ、勘違いしないで!」

「お前が住むとか言うからその事ばかり考えたじゃないか、まあ、一人でいるよりはいいな」

「でしょ?」

「ただな、俺とお前が組んだら最強だ。粟通もすぐ出てくるだろう」


 それを聞くと夏美は笑顔を見せた。


「私もあなたみたいな強い人と組めるなんて最高よ! 海に帰るって手段もあったのに」

「いや、もうこれ以上痛めつけられるのは嫌だからな」

「分かったら宜しい」

「……お前は何か偉そうだよな」


 こうして、尊と夏美の共同生活が始まった。ただ、尊からすると運命の糸が曲がったような感じだった。

はい。一応分けてみました。物語はまだ続くのですが、ゆっくり更新していきますのでかなり先になると思いますが、気長に待っていただければと思います。よろしくお願いしますm(__)m

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