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マラウィーの夜⑨ 第6曲 途絶えたE-mail 子育てに大忙しと言ってきただけで、連絡が途切れた。

ウインドウズ95が出てきて、インターネットの環境が激変したこの時代。迷惑メールやパソコンウイルスが大流行した。ある会社の重役は、エッチなサイトに入ってしまって抜けられなくなった。×印をクリックすると、どんどん過激な画面が出てきて困り果てて・・ノートパソコンのバッテリーを外して持ち帰った。パソコンをメンテナンスしている社員が、バッテリーが無いその重役のパソコンを見つけて、他の同じノートパソコンのバッテリーで駆動させたら、エッチな画像が何百枚も開きだした。この状態がウインドウズと、その前のOS、MS-DOSの違いである。ノートパソコンからウイルスを駆除してパソコンを修復した社員は、順調に出世したそうである。直斗もHiliのメールをクリックするときは、ウイルスに感染する覚悟を決めていたに違いない。

第6曲 途絶えたE-mail


Hiliは、直のメールに返信をしなくなった。友達のダナのパソコンやアカウントを

貸してもらっているのに、気が引けたのと、話が続けば、ナオミが誰の子だと言う

話になる。直に責任を負わせるつもりは無いし、ナオミがどのように思うかも不安

だった。


Hili:無事を知らせればそれでいいか・・

それ以上距離を詰めて、波風を立てなくてもいいと思った。


ナオミが幼稚園に行くようになった。片親のことや名前のことで、それなりの虐め

にもあっているが、Hiliの子供だけあって、自分は自分だと芯が強い。ブレない子

は、すぐに虐められなくなる。虐めるほうも面白くないからだ。


イスラエルでも日本のアニメは大人気で、この頃は、女の子はセーラームーンが

お気に入り。Hiliもアニメが好きだが、9歳から働いていたHiliは遊んでいる時間

もなかった。ナオミと一緒に今自分も楽しんでいる様子で、コスプレの衣装を、

ナオミに着せて写真を撮るのが二人のブーム。

子供は、すぐに大きくなる。結構な値段の衣装もすぐに着れなくなる。大きめの

衣装を買って袖や丈を詰めて、少しづつ戻して着せる。4,5歳の女の子は、それ

でもあっという間に大きくなって、すぐに服が着れなくなる。


Hili:ナオミ、この衣装は、今日で終わりだよ。もう、小さくなってる。

ナオミ:えーっ、これが良い。

Hili:はい!写真撮るよ!お腹引っ込めて!・・・カシャッ!

                      パン!

お腹のボタンがはじけ飛んだ。

Hili:”赤いきつね”ばっかり食べ過ぎなんだって!


(^^♪Hanapecha Sailormoon♬♫♪


3年振りに直にメールが届いた。

(メール)

Hili:ナオミのセーラームーン、本人はお気に入りです。

写真が添付してあった。

直:へー、大きくなったな。ナオミは、また太ってないか・・コスプレ衣装が、

  はちきれそうになってるぞ!・・もう、はち切れてるか・・

  ナオミ・・・・ナオミか、・・・まさか・・

  ?鼻が、ペッっちゃんこだぞ・・後ろに写ってるHiliと似てないな・・?

  黒髪、おかっぱ・・・・

  セラームーンと、言うより・・うん、日本のおとぎ話!


メールで聞いてみた。

(メール)

直:Hili:ナオミのパパの話って聞いてもいいかな?

友達のフェイスブックのアカウントを使わせてもらっているようなので、質問にも

工夫が必要だ。直接聞きずらい。



Hiliの返事はない。     


3年ぶりにメールが来て、娘の写真が送られてきたのに・・また、メールの返信も

無くなった。

直:Hiliらしいと言えば、Hiliらしい・・思い立ったら止まらない。目的達成か。


アヤラとHiliに少ないが生活できる程度の補助金が出ている。レストランの手伝い

で、アルバイト代が少々入る。エリアフが作ってくれるまかないも食費の節約に

助かっている。ギリギリの生活を切り詰めてもアニメの衣装を買ってあげたり、

日本のアニメのビデオを見せるのにはHiliなりの考えがありそうだ。Hiliも一緒

になって、日本のアニメのビデオを見ている。ひらがなも練習中。ナオミが小学校

にあがるときには、二人とも日本語の日常会話ができるようになった。


Hili:アヤラ、ナオミを将来、日本に留学させたい。

アヤラ:パパは、日本人なのね。

Hili:うん、会わせられるか分からないけど、ナオミには、半分日本人だと話す。

   今は、セーラームーンに出演するには、日本語が話せないとダメって言っ

   てるけどね。せっかく平和な日本人の子に生まれたんだから戦争の無い国で

   暮らしてほしい。

アヤラ:あなたの子だから私は応援するしかできないわ。

Hili:わたし、働きたい。留学にはお金もかかるし、私が歌っているところを見せ

   たいの。テルアビブのクラブで住み込みで働かせてもらえる所があるの。

   ナオミが、中学校に上がるまで、面倒見てくれないかな。

アヤラ:寂しがるわよ。そこまでしなくても・・


Hiliが、言い出したら止まらない。


数週間後

Hili:ナオミ、行ってくるわね。月、火曜日は帰ってくる。セーラームーンに、

   会いに行くんでしょ。ママも頑張るから、ナオミも日本語頑張ってね。

ナオミ:分かった。毎週帰って来てよ。

Hili:アヤラ、エリアフ、わがまま言ってごめんなさい。よろしくお願いします。

エリアフ:こっちは、だいじょうぶだけど・・変な男とくっ付くなよ。

Hili:分かった。約束する。


Hiliは、テルアビブのクラブでキャストとして働き、ショーに出て歌って、踊った。

元、軍の演劇部のトップスターだ。実力は圧巻で、すぐにNo1のトップキャスト

になり手当も跳ね上がった。他のクラブからの引き抜きや、金持ちの客から店を

持たせると触手が伸びるが、誘いには見向きもせず、同じクラブで歌い続けた。


1年後、演劇部の先輩、ビナが店に来た。Hiliに会う前にクラブの支配人と話を

している。Hiliが気が付いて、挨拶しにきた。

Hili:ビナ!どうしたの!・・・まさかここで働くの?・・

支配人:Hili、今後は、ビナの店でも歌ってほしい。

Hili:どういうことですか。

ビナ:わたし、軍を退役してショークラブを立ち上げたの。オーナーは、あの監督

   なの。以前から支配人には、監督も私もお世話になってきた。

   新人の度胸試しに、この店でよく歌わせてもらってたの。

支配人:逆だよ、私がお世話になってきた。新人のパフォーマンスは新鮮でお客も

    楽しみにしていた。Hiliは、来た事なかったな・・Hiliの噂は聞いてた。

    正直、Hiliが、応募してきた時には、びっくりしたんだ。

ビナ:あの武闘派シンガーが、殴り込みに来た!って。(笑)

Hili:やめてよ! もう、ママなんだから!(笑)

支配人:監督にも実は相談したんだ。君が本気か、皆で様子を見ていた。

    試す必要も無かったな。実力は圧巻だったし、ブレる気配もない。

    Hiliは、本物だよ。君の人気のお陰でこの店の客も増えた。

ビナ:以前から監督と演劇部の退役後の生活を支える仕組みが欲しいと考えていて

   あなたの活躍が、監督に火をつけたみたい。私の店にも出演して。私の所の

   新人もあなたに教えてほしい。演劇部の経験を生かして、映像や舞台を演出

   できるような人材を輩出できたらと思うの。

支配人:女性も生涯働く時代だし、姉妹店ということで、協力してもらいたい。

Hili:もちろんです。ありがとうございます。


Hiliもいつまでも若くない。新人の指導で使ってもらい収入が増えるのはありがた

い。仕事が増えて、人気が出ても月曜火曜は必ずナオミの所に帰った。エリアフも

自信に満ちたHiliの毅然とした態度に安心した。


エリアフ:変な虫がつく隙もなさそうだな。

Hili:仕事が楽しいし、責任も感じてる。みんなに感謝しないと。


ナオミが、小学校5年生になった。

Hili:アヤラ、ナオミに話したいと思うんだけど・・

アヤラ:そうね。ナオミも、もう女性だしね。ちゃんと話せるんじゃないかしら。


ビナの店では、クラブのキャストして、指導担当としての仕事の他に定期的な

ライブショーや、年に数回、大きなホールでコンサートを開いたりした。

アヤラやエリアフもナオミと一緒に母:Hiliの歌や踊りを見に来た。自然とナオミ

も歌うようになり母譲りの歌声はどんどん上達した。


中学生になると将来の進路も考えて進学先を決めることになる。


Hili:テルアビブに引っ越そうと思うんだけど。ナオミの進学もあるし、収入も

   増えて何とかやっていけそうなの。

エリアフ:そうだな・・演劇関係で行くなら、この田舎じゃどうにもならん。

アヤラ:わたしは、いつも付いていくだけ・・エリアフのまかないが、無いのは

    寂しいけど・・

Hili:エリアフ、いつもありがとう。時々食べに来るからね。

エリアフ:いつでも店を休みにするからHiliのショーに呼んでくれ!

Hili:分かったわ。約束する。


Hiliは、テルアビブのマンションを借りて3人で住むことにした。ナオミは、

ボーカルレッスン、ダンス、日本語教室にも通い始めた。

テルアビブのマンションには、ネット回線も引いてあって、自宅にパソコンも

入れた。そうなると、どこの家庭でも同じような会話が飛び交う。

Hili:いつまでネット見てるの!勉強しないなら電源切るわよ!

ナオミ:もうちょっとだけ・・今いいところなの・・

アヤラは、テレビを独占できるので、パソコン大歓迎なのだが、


ある時、ナオミが、ダナとHiliのメールのやり取りを見ていた。ナオミが、

ナオミ:ママ、私の名前って、森嶋直斗って人と関係あるの?

Hili:・・えっ・・なんで?

ナオミ:ダナが、教えてあげたらって・・・メールに・・

Hili:あなたが、日本語が上手くなったから。私の友達に話したらって・・

ごまかしてみたが・・

ナオミ:ママに日本人の友達がいたんだ。知らなかった。友達ね・・

悟られたみたいだ。女の子は、母親が思うより成長が早い。

Hiliが切り出した。

Hili:ナオミ、日本に行きたい?

ナオミ:行きたい!勉強した日本語が通じるか、話してみたい。


Hiliは、ナオミにも直斗にも話す時が来たと思った。三人で会って話すのが一番

良いと分かっている。直斗を呼ぶわけにもいかず・・・


ナオミの進路の話も具体的になってきた。テルアビブの進学先も芸能関係となると

私立の学校がほとんどでお金が掛かる。海外留学の話も出てくるが、Hili一人の稼

ぎでは夢のまた夢・・世界を見てきたHiliとしては、行かせてやりたいとも思う。

Hiliは、ネットで、色々調べてみた。日本とイスラエルの間でも各県、市町村単位

で交換留学生の制度がある。愛知県の中高一貫の芸術高等専門学校が、毎年海外か

らの推薦留学生を受け入れているという情報があった。日本語がある程度話せて、

その学校の学科に興味がある生徒は、だれでも応募できる。ただ、今通っている

中学、高校の学校推薦が必要となる。


Hiliは資料を取り寄せ中学校の担任に相談してみた。

Hili:先生、資料は見て頂きましたか。どうですかね。

担任:当校に実績は無いですが、失格要件も無いですし、こちら側の負担もあり

   ません。ナオミは、成績優秀ですし学校として不安もありません。

   選ばれるかどうか分かりませんが推薦はできますよ。

Hili:分かりました。本人と話してみます。


ナオミとアヤラに話してみた。

Hili:学科は、声楽、アニメーション、声優、演劇なんかが、ナオミに会ってる

   んじゃないかな。期間は1年で、卒業後は日本の高校進学、日本で就職の

   機会もあるみたい。

アヤラ:1年も行くの、長いね。高校に行くとなったら帰ってこないの?

Hili:宇宙に行くんじゃ無いから会えるよ。

イスラエルから出たことのない祖母のアヤラからしたら、一生会えなくなるかと、

心配している。

ナオミ:友達に会えないし不安だけど・・行ってみたい。学科は、悩むな・・

Hili:歌は、こっちでも勉強出来るけど、アニメーションとか声優ってこっちでは

   聞かないから私が行くなら声優!

ナオミ:ママが行くんじゃないのに、なんで張り切ってるの!(笑)

決まるかどうかは、分からないが、楽しい会話になった。学校には推薦をお願い

する事にする。


どうせ、無理だと思っているから、学校推薦をもらえて、応募できただけでも

満足していた。日々のボーカルレッスンにも気合が入っている。


3か月後、日本から通知が届いた。第一希望:アニメーション。第二希望:声優

で、書類を出したが、声優で招待状が来た。

Hili:わあー!ナオミ!日本から招待状が来た!

ナオミ:へーっ・・うそ・見せて!・・まじやばい!! やったー!

    本当に行けるの! やったー!


次の日、Hiliが詳細情報をよく読んでみた。授業費、昼食費、制服や備品は無償

ただし、宿泊費、交通費は、自己負担。

学校は、専門学校の豊橋分校の声優課。宿舎などは、学校から民間アパートを紹介

してもらえるが、毎月5万円ほど掛かる。年間60万円となると、結構きびしい。


Hiliは、少し悩んだ。学校の寮ならば良かったが、宿泊費が別途になるとは・・

しかり読み込めていなかった。今更、招待状が来て、あんなに喜ばせておいて、

お金が無いから辞めろとも言えず・・・


Hili:そうだ・・直に電話してみようか!

と思いついた。


メールでもいいが、大きな報告をすることになる。一度は、声を聴かせるべきだと

思った。時差を考えて、夜中の11時に電話した。

(電話)(プルルルル・プルルル・プルルル・プルルル・プル・・)

直:もしもし、だれですか!?(朝の5時で不機嫌そうに)

Hili:ハロー、Hili・Talです。直斗さんですか?

直:ハロー、なんだって!森嶋です。・・間違い電話か・・

Hili:直!私は、Hili・Talです。

直:森嶋ですが!間違えてませんか!

Hili:I'm sure it's your voice NAO! I'm Hili! Escaped soldier!

直:英語か!Escaped soldier・・脱走兵!?・!! Hiliか?Hiliだ!

Hili:なんで、脱走兵だけ分かるのよ! 直、久しぶり!

直:Hili!電話うれしいけど・・朝の5時だよ!

Hili:えーっ、間違えた?・・時差は、6時間遅れだったか・・ごめん・・

直:いいけど・・どうした?メールしても返事ないから・・心配してた。

Hili:あの、ナオミが、日本に行きます。会ってください。

直:えーーーーはあ!。なんで・・

Hili:豊橋の学校に留学します。

直:はぁ えーーーーーんぎゃ!・・なんで・・・

Hili:メールに詳しく書くね。声、聞けて良かった!バイバイ!

(プープー)国際電話だ、早く切らないと・・・

直:全部メールで良いって・・・


Hiliとしても声が聴きたかったし、娘を預けてもいい感じかなとか・・調査して、

新しいメールアドレスからだと、また寝袋の話になってナオミに見られると恥ずか

しいから、一度に済ませるのが電話が一番と思ったら・・時差を間違えた。


♪途絶えたEmail♬♫












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