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マラウィーの夜②オレンジ色の爆撃 平和な日本に帰った直斗。忘れかけていた一夜を思い出す。

知立駅の東側にあった、麗人外と呼ばれる飲み屋街は、今はもう無い。どれだけあそこで、先輩たちに酒をおごってもらったか分からない。その先輩たちもみんな逝った。一緒に読んでくれているだろう。

第2曲 オレンジ色の爆撃 その1 


Hiliの乗ったフェリーは、チペカの桟橋を離れ、湖面に船影が溶けて消えた。

薄暗い桟橋は、ところどころ穴が開いていて転びそうになる。大きく崩れて

いる場所もありジャンプしないと渡れない。小さな子供は、大人が手渡しし

て桟橋を進む。陸地らしい広場に着いた時には、すっかり明るくなっていた。


フェリーが着いたというのにバスもマタトゥーもいない。知らない街を徒歩

で歩いて行っても、どこに向かって行くのやら・・

腹が減ったが、店も無い。あさの5時では、あっても開いてなか。


2時間ほど待ったであろうか、マタトゥーが来た。行き場所などどうでもいい。

どこかの街まで行って考えよう。

運転手:どこまで行くの?

直:(Hiliを思い出しながら・・)イスラエル。テルアビブまで行ってくれ!

運転手:知らない街だな。

冗談にもならなかった。

運転手:ムズズまで行く。

直:行くよ。と、5ドルだした。

運転手は、嬉しそうにい5ドル札を自分の胸ポケットに入れた。

直:しまった・・払いすぎたか・・

いつまでたっても客も拾わないし、ムズズとやらにも到着しない。どっかに

拉致されているのか・とも思ったが、空手家を一人で誘拐するような奴には

見えない。しばらくして遠くに街が見えてきて、やっとムズズに着いた。


ムズズからムベヤそしてダル・エス・サラーム、ここは、タンザニアの首都。

残り金も底をついた。銀行でTCを現金に換えて、

直:なんとか帰れそうだ。

ダル・エス・サラームからケニアのナイロビまで、高速バスがある。

靴の中敷きの下に50ドル札を隠し、

直:この金は、キープしとかないと。

時刻は17時前、直のオレンジ色センサーが、飲み屋街を探知する。この街は、

海辺で、標高も低い。湿度も高く蒸し暑い。当然マラリアの危険性も高くなる。

軟膏タイプの虫よけを顔や耳たぶの後ろ、足首などに念入りに塗った。

路地の片隅にスコールの空き瓶が落ちていた。酔っぱらいやマラヤの姉ちゃん

が、好んで飲む乳酸系の炭酸飲料だ。角を曲がって細い道を港の方へ進む。

直:炭の匂い・・・おっ、ムシカキか・・

焼き鳥のようなものだ。

一軒の店先のベンチに座った。ベンチに書いてあったコーラのマークを見て、

直:コカ・コーラのマークは、世界共通だな・・

店の店員に、

直:ポンベ、バリディ(冷たいビール)と、スワヒリ語で注文した。

タンザニアでは、ケニアみたいに英語が通じない。スワヒリ語を話す人が、

ほとんどだ。直のスワヒリ語は、へたくそだが、ここでは英語よりも通じる。

店員が、注文したビールと焼き鳥を持ってきた。カレー風味の辛い焼き鳥で、

蒸し暑い街では、最高だ。残念ながら、ビールはあまり冷えていなかった。

暗くなった街の物陰でマラヤの姉ちゃんが辺りを伺い酔った客に声をかける。

他の店にも地元のおっちゃんたちが、酔っぱらいだした。大きなラジカセを

担いだ若者が音楽を爆音で流しながら歩いている。直は、2,3本ビールを飲

むと、姉ちゃんが潜んでいた路地に入っていく。背の高い白いボディコンの

娘に声をかけた。

直:名前は?

女:ソニア!ソニ、あんたは?

直:NAO 直だ。ソニ、 どこか、バーを教えてくれ・・

ソニ:どんなとこ・・

直:任せるよ。

大きなビルが建ち、タクシーがひしめいている道路を横切ってビルの2階の

ディスコに入った。

直:ずいぶん賑やかだな・・いつもこんなに混んでるのか?

ソニ:今夜は、特別だよ。何飲む?

直:ジャックダニエル、ダブルで、と、10ドル札をソニに渡した。

ソニが、自分のジュースと、直のロックを頼んで持ってきた。

直:なんかあるのか・・踊り狂っている白人観光客をみて聞いた。

ソニ:米軍がイラクを空爆するんだって、空母にホイットニー・ヒューストン

   が、ヘリで来てライブで出撃パーティーだって・・ほら!見て。

大型のテレビモニターに空母のライブ映像が流れていた。曲が終わると客が

カウンターに酒を頼みに来て待っている。直の横で待っていたアラブ系の客が

直に訳の分からない言葉で怒鳴ってきた。ソニが割って入る。

ソニ:Sio Kijapani!Twende! duka la kawaida.

  (日本人じゃない! いつもの店に行くよ!)

ソニが直の手を握って店から引っ張り出した。

直:どうした?なんで俺が、日本人じゃないんだ?

ソニ:ごめん。連れて行った店が悪かった。カッコいい店だから気に入ると

   思ったけど・・・

直:何があったの・・・

ソニがしばらく歩いて小さなバーに入った。客は少なく、地元の老人が二人

飲んでいた。

ソニ:ジャックダニエルは、無いからジョニーウォーカーで良い?

直:いや・・ギルビーズ、ロックで

直が、棚のジンを指さして頼んだ。

ソニ:スコール!

ビンで出てきたスコールをグビッと飲むと、ソニが話し始めた。

ソニ:日本の総理大臣が、イラクに派兵する米軍に90億ドル出すって、

   記者会見やってたの・・知ってるでしょ!

直:売店に置いてある新聞に一面で出てたな・・金持日本人の悪どい手口って、

ソニ:その総理大臣が、世界的に批判されたら、もっと出すって言っちゃった。

   それで特にアラブ系の人は、アメリカ人より日本人が敵だと言い出して・・

(*実際に湾岸戦争では、日系企業の家族などが被害を受けた*)

直:なんとなく聞こえてたけど・・俺も日本が間違ってると思ってるから・・

ソニ:お金だけ出して戦わないのはOUTだよ。そこに追加で出すって・・・

   終わってるよ・・ごめん、あそこ白人が多いから大丈夫だと思って・・

直:いや、助けてくれたんだ。俺も酔ってて、緊張感が足りなかった。

ソニ:ホテルどこ?

直:取ってないし、実は金が無い。

靴の中敷きの50ドルは、内緒にしておかなければ・・

ソニ:良いところあるから行こう!

ソニは、バーを出て暗がりの道を進んだ。

直は、拳銃やナイフを持った仲間の所に連れていかれるのか・・と用心をした。

階段を上がるとカウンターがあった。ソニはカウンターの男にチップを渡し、

知った様子で、奥の部屋に入った。

ソニ:部屋代は、要らない。

直:ソニ、ゴメン、金ないんだ。帰るよ。

ソニ:お金は要らないけど・・直のカバンに日本の石鹸入ってるよね。

ソニは、直のカバンを鼻にあて嬉しそうに笑った。

直:あぁ・・あるけど・・

ソニ:それ、ちょうだい!

直:使いかけだよ。旅行中に使ったやつだから。

ソニ:いいから見せて!

直がカバンから石鹸を出して見せると・・ソニが、自分の鼻に石鹸をあてて、

ソニ:これこれ!これちょうだい!おねがい!

直:石鹸はあげるよ。じゃあ帰る・・・・

ソニが直の下唇をガブリと加えるとぺったんこのベッドに二人で落ちた。


朝方、直がトイレから戻ってくるとソニが起きていて、石鹸の匂いを嗅ぎながら

ソニ:ありがとう。みんな喜ぶ。

直:・・?

1234567890123456789012345678901234567

ソニ:日本の石鹸って、ほんといい匂い。肌も荒れないし、これで洗うと変な病気

   をもらわないって・・でも、使ったらもったいないから・・ティッシュに

   削った欠片を包んで、下着に挟んで、お守り&香水代わりにするんだ!

直:あぁ・・そう・・・

ソニが腕枕に潜り込んできて・・また溶けた・・・。


・・・・・・


ソニ:直、先に行くよ!ありがとう!チュッ!

石鹸をもらったソニは、直を置いて、飛び跳ねて帰って行った。

・・・・


直:うっうん・・

8時過ぎ、じっとり汗をかいて起きる。ボコボコにむくんだ顔でめがねを探す。

全然強そうじゃない。空手家とも思われない。いまなら盗賊も余裕で襲てくる。

やっと頭が回りだした直は、もしや、やられたかと、思い靴の中敷きを調べた。

直:よかった。無事だ。・・ほんとに?・石鹸で良いのか・・?


ナイロビで

直:そんな話、聞いたこと無だろ・・

亘:そういえば、直さんの好きな胡桃沢耕史の小説にそんな話が・あったカモ・・

  飛んでる警視シリーズじゃ無かったような・・

直:知らんなぁ

亘:直さん!日本に彼女が待ってるんですよね・帰ったら落ち着いて下さいよ。

亘は、酒は強いが、あっちの方は落ち着いている・・少し直がうらやましい・・


1993年夏、名古屋、名鉄熱田神宮駅のエンジニアリング部の部長室

部長:森嶋君お疲れ様でした。これからは、営業部で人脈を生かして活躍して

   欲しい。早速、リクルート専門誌のビーイングから取材があるから・・

直:分かりました。

大手企業は利用できるものは何でも利用する。直のアフリカでのボランティア

活動も企業が応援して成り立っているように広告宣伝し、イメージアップに

利用するつもりだ。


取材が終わり、この日はこれで帰る。途中で、知立で降りて電力区詰め所に

立ち寄った。

渚:直、移動か・・営業部なんてお前に務まるのか?

大島徳夫、直の同期、大島渚監督に似てもいないのにあだ名が、渚。おとなし

くて、真面目!

直:事実上の首と一緒だな・・・

米:直ちゃんを首にするほど、上は、勇気無いからな・・

  いろんな事されると邪魔は邪魔なんだよ。

米忠之助、本名がよね直の1年先輩。仕事もチャラい、遊びもチャラい。

よねただのすけ。どこが苗字か分からない、めんどくさい名前だ。

直:米さんが首にならないのに俺を首に出来ない。だから移動させて辞めるの

  待ってるんでしょ。やることがせこいんだよ。

仁:どうせ帰りは、知立経由だろ寄ってけよ。ムラサキが待ってるから。

坂上仁、(ジン)名鉄で、直に並ぶ大酒飲み居酒屋チェーンのムラサキの常連。

1年先輩で米と同期、渚と同じく超真面目。酒も真面目で、先輩の誘いは断ら

ない。死んでも飲む、吐いてまた飲む、朝まで飲む。

石原:そうだな、どっちみち帰りの電車は知立下車、国府で下車だから・・・

   5時からは今までと変わらないな!そのうち、また、引っ張るから!

石原俊夫、今回の人事異動で名古屋から知立に移動して区長に出世した。

森嶋直斗と同じ豊川市に住んでいて、直はいつもおごってもらっている。

夜の世界でも直の師匠で、カッコいい飲み方をするので女性にも受けがいい。

石原は、直の仕事に対する姿勢も気に入っていて石原が副区長時代に新人の

直を自分の部署に引っ張ってきた。


直がアフリカから帰ってきたのと、石原が区長に出世したので宴会が開かれた。

宴会と言っても知立の詰め所の事務室で自分たちで料理を作って食べて、飲む

だけだが、直が新人で来た時から料理を任されるようになった。直は、子供の

ころから叔父に釣りに連れていかれ、魚も自分で捌かされた。ウナギや穴子は

もちろん、ハモも自分で骨きりする腕前だ。3年前と同じ雰囲気で、いつもの

飲み会が始まった。

シャコとタコ刺しで、酒飲みは十分だ。若手が、ハサミでシャコの身を取り

やすくする。メジの刺身もこの時期は最高だ。酒が飲めない人は、いきなり

鍋をつつく。大量のシャコをゆでたゆで汁の出汁は、家庭では作れない。一度

食べた者は、忘れられない。この日も名古屋の本社から連絡をもらったお偉い

さんが、押しかけた。一次会が終われば、2次会で知立の街は大騒ぎだった。


営業部で、

事務員:森嶋さん名刺ですけど、できてきましたから・・あそこです。

入口の段ボールケースを指さした。直は、段ボールを見に行くと名刺がぎっしり

段ボール箱に詰まっていた。

直:これ・・全部名刺? 女の子じゃ持ってこれないな・・なんに使うんだ・

何とか持ち上げて机の下に置いた。


名鉄本社の営業本部から上司の沢田が来た。

沢田:森嶋さん今日、一緒に行きますから付いてきてください。

上司と言っても大学出の1年後輩。高卒の直より一つ下、本社の営業部で、

3年前に入社して、新人研修では直の下に配属されて厳しく指導されていた。

今は、沢田は、直の上司の上司になった。

沢田に付いて愛知県庁に行った。2階の水道局の事務所前で、

沢田:積算担当の事務室は、部外者は、入室禁止です。入口に名刺入れの箱が、

   あるので、名刺を入れてください。県庁、隣の市役所、土木事務所・・

   全部回って、名刺を入れるだけです。お願いします。元!上司の直さん

   ですから・・今日は、それだけで許しておきますけど・・

   明日からは、名刺、背負って持ってこないと足りませんよ。

沢田は直の持っていた200枚入りの名刺ケースを指で小突くと帰って行った。


直の仕事は、行政の工事発注部署の名刺入れに名刺を入れるだけ。一日1,000枚

以上の名刺を歩いて配る。工事指名業者に名鉄の建設部を入れてもらえるように

担当者にお願いして回る仕事。談合防止で直接会えない決まりになっているので、

入口の箱に名刺を入れてあいさつに来たことにする。

昭和の日本の当たり前の仕事だった。居酒屋では、先輩営業マンが名刺入れの箱に

挨拶するお辞儀の方法を後輩に伝授して説教していた。

愚痴っていてもしょうがない。今の直の仕事は名刺配りだ。

毎朝6時42分の電車で熱田の事務所に通って、4時まで行政を回り名刺を配り。

17時30分の豊川稲荷行きで帰宅。

月曜日から金曜日まで毎日、名刺を箱に入れるだけの仕事を続けた。


居酒屋で

直:こんな名刺を箱に入れるだけで・・仕事に関係あるんですかね。

石原:名鉄は、電車の線路わきで行政の工事があると立合いに出る。

   直くんも立合いに行ったことあるだろう。

直:はい、あります。車で寝てて良いって言われて。

石原:そう、立合いでごねると行政の工事が遅れるのでどの行政も名鉄と揉め

   たく無い。名刺入れるだけで、何回かに1回は、工事の指名が来る。

   名鉄は全部丸投げで、談合で決まっている業者に仕事を出すだけだけど

   それで、5%の利益が出る。丸投げで年間25億の利益。

直:それって、全部税金ですよね。

石原:そうだね。バカバカしい話だけど、日本中でやってる話だ。その金が、

   偉い人や厄介なグループに流れる。

直:名鉄の工事で街宣車が来ないように金で解決するんですよね。

石原:そういう場合もある。・・もう飽きたか!・・まだ、決まって無いけど・

石原は、前置きをして直の電力区への移動を打診していると話した。パソコンの

導入が決まって、コンピューターに詳しい人材を電力区に配置することになり、

知立電力区からは、森嶋直斗を希望すると打診したらしい。


1995年秋

森嶋直斗が、知立電力区に移動になった。早速、居酒屋チェーンのムラサキで、

坂上仁:直ちゃん、今日は、つぶしますよ!ビール縛りね。

直:ビールだけは厳しいですよ。俺の条件良いですか!豆腐ステーキ縛り!

仁:オッケー!すいません!生大二つ!豆腐ステーキ二つ!お願いします。

仁は、大酒飲みだが、直と飲むと最後は、仁がつぶれる。直の苦手なビールで

今日は挑戦するらしい。つまみの豆腐ステーキは、二人のお気に入り350円で、

安い。生ビール大も350円で、近隣の店では、一番安い。石原区長におごって

もらえない日は、ここで飲む。


店員:すいません。閉店ですので、お会計ここに置きます。24,570円

ビール50杯、豆腐ステーキ15個、閉店まで飲んだ!若いってスバラシイ!


翌日

直:京さん!こんちわ! 帰ってきました。

京:あれ、あれまー、直ちゃん!お帰り。髪の毛、短いじゃん・・浮気したのか!

鈴木京香・社員用にある知立駅の床屋。未婚で彼氏無し?・・30って言ってるけど

実際は、40歳近い。結構美人だが名鉄内では浮いた話無し、直が18歳で入社した時

から、床屋はここばかり、何度か一緒に飲んだが結構強い。姉のような存在だ。


直:浮気はしてません。自分で、スキンヘッドに一回して・・それで、これ

京:また・・中途半端に伸びてるね。任しといて・・


京香が、直の髪を切りだした。切るというより・・なんか、くるくるやっている。

京:よし、できたよ。はいメガネ・・

京が鏡を持ってきて・・・って後ろの鏡を見る前に、前の鏡で・・

直:クリクリ、ちりちり、なんですけど・・パンチパーマってやつですか?

京:しょうがないじゃん。短いんだから。


電力区の詰め所にパソコンが入った。パンチのマッチョが、セットアップをして、

名鉄本社につないで、メタフレーム、スケジュール帳などをチェックした。

同僚のメールアカウントを登録して、テストメールを送った。

直:・・うん、大丈夫か。でも、オッちゃんたちが、

               パソコン使えるようなるかな・・


メールに、掲示板、工事日報、スケジュール表、予算書に工程表、工事計画書は、

電柱、電線、駅舎の照明、踏切管理、おまけに写真も入れる。

直:区長!やっぱ、無理じゃないですか・・俺が自分でやった方が早いですよ。

  メールお覚える前に・・マウスの使い方も教えないと行けなくて・・・・・

石原:俺は、無理だけど・・他の連中は行けるだろう若いし・・

直:若いって3歳ぐらいで、みんな50超えてますよ・・

  マウス回してみてって、言ったら頭の上でくるくるって・・

石原:それじゃあ・・いかんのか?

直:・・・


この日からパソコンの事務仕事は、坂上と直の仕事になった。

電力区の仕事は、電車の架線や電柱の点検や交換が大きな仕事で、電気が停電

しないとできない。昼間は電車が走るから夜に仕事するのだが、偶数日は停電

奇数日は24時間送電したままと決まっている。電力区は停電の日の夜中に、

仕事をする。この日は、坂上と直が夜勤の日だった。昼は通常勤務を17時まで、

それから休憩に入り、22時から、夜勤が始まる。家が近い人は、いったん帰宅

するが、遠い人は、詰め所で仮眠したり、飲食に出たり。坂上は、もう仮眠室

で寝てしまった。

テレビのCNNニュース

TV:本日、テルアビブで、またしても自爆テロがありパレスティナの過激派が、

   犯行声明を出しました。イスラエル軍は、反撃の空爆を行っています。

   ヨルダン川西岸の空爆とパレスティナ側の応戦の様子です。

直:何十年戦争してるのかね・・下から撃ったって届かないのに・・・

爆弾が地上で破裂し真っ赤な炎が、夜空の雲にオレンジ色に反射している。

生き残った兵士の対空砲が幾筋もオレンジ色の夜空に突き刺さっていく・・

直:イスラエルか・・・Hili・・生きているかな・・・

マラウィーで、偶然出会ったイスラエルの女性兵士、Hiliを思い出していた。

直と会った翌日からイスラエルに帰り軍隊に入って国境に赴任すると言っていた。

直は、パソコンの電源を入れて最近始めたフェイスブックで投稿してみた。

(私は、マラウィのフェリーで、1991年にイスラエルの女性兵士Hiliと、

  友達になりました。自爆テロのニュースを見て心配しています。

  Hiliは、元気でしょうか?ご存じの方は、msn10@live.jp森嶋直斗)

直:見てるわけないか・・


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