マラウィーの夜⑩ 第7曲 守り育てた贈り者 ナオミが、日本にやって来た!鼻ぺちゃセーラームーンが、綺麗な女性に大変身!
ナオミが交換留学生で日本に来たこの時代は、インターネットやパソコンが日本をいきなりグローバル化させ、留学が流行した。1週間の留学?から1年以上の本格的なものまでいろいろ有った。留学して、英語やフランス語を身に着けてきた学生もいたし、髪の毛が黄色くなっただけの学生もいた。日本の田舎町にも外国人の留学生を見かけるようになり、お爺ちゃん、お婆ちゃんは、チョコレートをもらった昔を思い出した。
⑩
第7曲 守り育てた贈り者
Hiliから早朝、突然、直斗の自宅に電話が来た。ナオミが、交換留学生で日本に
来るという。どうやら下宿代を浮かすために直斗の家に泊めて欲しいとお願いする
のに、メールだけで頼んでも失礼かと思ったらしいが、時差を間違えた。
改めてメールで、留学の件、場所を伝えて・・・
(メール)
Hili:もし可能なら直の家から学校へ通えないか考えてほしいんだけど。
と、お願いして、駄目押しにナオミが招待状を持って、
嬉しそうにい笑っている写真も添付した。
直の自宅
直:あのさ、イスラエルの友達の娘が、豊橋に留学するんだけど、家に泊めても
いいかな?
森嶋美沙(直斗の母親):良いよ。一部屋空いてるし、何歳?
直:中学2年。女の子。
美沙:良いよ。
あっさりした親子だ。
直の家は名鉄国府駅まで歩いて10分。豊橋なら十分通える。
美沙もお客が来るのが好きなタイプだから家も片付いているし、特別準備ない。
いつでも泊ればいいと、言う感じか。
3か月後、3月の土曜日
セントレアに直がナオミを迎えに来た。到着ロビーにそれらしい娘を見つけると、
”ナオミさん!ようこそ”と、書いたプラカードを見せた。が、知らん顔された。
また、それらしい娘が来たのでプラカードを見せた。見もせず通り過ぎて行った。
今度は、黒人の女の子だけど、焦ってきたので、とにかくプラカードを振って・・
すると、横から
ナオミ:なんで、黒人なの!写真見てるじゃん。恥ずかしいからそれ止めて。
直:おっ、最初の女の子じゃん!
ナオミ:直!恥ずかしいから・・プラカード仕舞って!
直:おお分かった・・日本語うまいね。
ナオミ:よろしくお願いします。
直:ナオミだよね! ・・・?
足元から見上げた視線が、胸元で一瞬とまり、慌てて目を合わせると・・
・・・怒ってた・・
ナオミ:どこ見てるの!
直:いや・いや・・・セーラームーンの写真が最後だったから・・見違えて・・
ナオミ:あのパッチパチの衣装で、お腹のボタン取れたやつでしょ!
ダナのパソコンからは消してやった。直のパソコンのも消して!
直:えっ、この写真?
と、携帯の待ち受けの写真を見せた。
ナオミ:げっ・・変態!
怒って歩いて行った。
直:ナオミどこ行くんだよ・・そっちじゃない・・こっちだって・・
年頃の娘は、万国共通で難しいのだ。
車に乗って、ナオミがHiliに到着したと電話で報告している。知らない言葉で
早口でしゃべっている。と、
ナオミ:Hiliが話すって、
と、言って自分の携帯を直の耳にくっつけた。
Hili:直!よろしくね。あと、携帯の待ち受け消してって(プープー)
単刀直入だけど・・国際電話で・・
直:分かりました。
と、ナオミに言った。
昼飯代わりに豊川のケンタッキー・フライド・チキンに入った。注文して料理が
来る間に待ち受けのナオミのセラームーンを消した。お気に入りだったのに・・
料理が来た。チキンが山盛り!サイドメニューもてんこ盛り!
ナオミ:すごーいい!いただきまーす。
ナオミの機嫌が直った。チキンでか、写真でか、どっちもか、分からないけど、
ナオミの機嫌が直った!
自宅についた。
直:ただいま。
美沙:お帰り、あらま、ナオミさん!美沙です。綺麗なお嬢さん!綺麗すぎ!!
豊川みたいな田舎じゃね、こりゃあ目立つよ!
ナオミ:ナオミです。よろしくお願いします。
直:明日、学校まで電車で行く練習してみよう。
ナオミ:これ、ママから手紙だって、私にも一緒に読んで、だって。
読むよ。
(Hiliの手紙)
ナオミへ、直斗へ
あなたの目の前にいる直が、あなたのパパです。軍に入隊して、最前線の戦場へ
赴任が決まり、私は怖くて、一時休暇で逃げ出しました。いろんな偶然で、日本
の豪華客船、飛鳥Ⅱでアルバイトをしながらアフリカに行くことになりました。
突然アフリカのケープタウンで降ろされ。途方に暮れながらマラウィーのフェリー
に乗りました。
ナオミ:なんだ・・ママの旅行記?
帰りのフェーリーで出会った直と結ばれ貴方が生まれました。
直:やっぱり・・
ナオミ:そうだね。・・
妊娠により軍を退役し戦場に行かずに済んだのです。
直、ありがとうあなたとの出会いに感謝します。
ナオミ、元気で生まれて来てくれてありがとう。
わたしは、ナオミにイスラエルの為に戦ってほしくない。ナオミの名前は、直斗
から一文字もらいました。いろいろ考えましたが、クリスチャンネームをあえて
付けたのは、ユダヤ人の貴方が、宗教の枠を超えて世界の人の為に歌えるような
人になって欲しいからです。
ナオミがどこで生きて行きたいか、直斗の意見も聞いて自分で決めてください。
Hili
♪守り育てた贈り者♫
ナオミ:分かってたけどね。
直:えっ・・・なんで?
ナオミ:って、言う前に・・鼻水ふいて!
直:おっ、悪いわるい・・ズルzz,フン!
ナオミ:最低・・・
美沙:ヒッZZZZ フン! ふん!
ナオミ:もー美沙も!
美沙:なんで、分かったの!
ナオミ:だって、ママ・・日本、にほんって、一生懸命なんだもん。しょうがない
からセーラームーンも好きになってあげた・・そしたら、ダナのメールに
日本人から返事が来てて。この人がパパなんだって思って考えたら今まで
のことも、名前も全部納得でしょ。
一つの寝袋で愛し合うなんてロマンチック!って思ってたら。娘の胸を、
凝視するんだから!最低!・・だから鼻水ふいてって!
直:ZZzzフン!ポイ!
美沙:ZZ・・ポイ!
ナオミ・・・
翌日
直:国府の駅から、急行か特急に乗らないと時間が掛かっちゃうよ。30分位で、
豊橋駅に着く。あとは、歩いて今、来た道が一番近い。
ナオミ:分かりやすいから大丈夫。一人で来れそう。
美沙:なんか食べようよ。
直:豊橋カレーうどんだな。赤いきつねよりうまいぞ!
ナオミ:だいたいその話も違うからね。
美沙:えーっ、赤いきつね大好きって聞いて、いっぱい買ってあるよ。
ナオミ:嫌いじゃないけど、ママが、それしか買ってこないから・・それと、私が、
食べると、”やっぱり好きなんだ”って、嬉しそうなんだもん。
辛ラーメンの方が、今は好き!
直:現実は、いろいろ食い違う・・
ただ、豊橋カレーうどんは、ナオミの新しいお気に入りになった。
3か月が経ち、夏休みに入る。
美沙:ナオちゃん、夏休みは、イスラエルに帰る?
ナオミ:ううん、帰らない。
美沙:Hiliが来るのかな!
ナオミ:ううん、来ないよ。ごちそうさま・・
ナオミは、自分の部屋に戻った。
美沙:直斗!ナオちゃん、いつまで、ここに居るの?
直:??そう言えば・・聞いてないな?
美沙:夏休みも帰らないって言ってたよ・・
直:そう・・
直:ナオミ!入っていいか!
ナオミ:やだ!
直:なんでだよ!
ナオミ:いっつも着替えてる時にばっか来るじゃん。
直:そんな分け無いだろう。
ナオミ:なに・・・
直:おまえさあ、いつまで居るの?
ナオミ:来年、進路決めるから・・今のところ高校は豊橋で卒業するつもり。
デビューできなかったら帰るかも・・
直:卒業?高校?デビューって?
美沙:高校って、高校生!?
ナオミ:美沙どうしたの大きな声出して・・変なこと言ったか・・
美沙:ナオちゃん、今中3だよね。高校卒業するまでってこと・・
ナオミ:うん。そんなに寂しくないよ。リモートで話せるし電話じゃなくなったら
お金かから無くなって、ママの話長いからちょっとうざいぐらい。
夏休みも直が寂しがるから帰って来なくて良いって、言ってたよ。
もう、勉強するから出てって!
リビングで、
美沙:別にいいけど・聞いてた?
直:聞いてない。
美沙:住民登録しないとね。
あっさりと、深いところまでいっきに理解できる家族だ。
学校で、
担任:イスラエル国籍は、持っているからお父さんが認知すればいつでも日本人に
なれますので、本人もそのつもりで日本人として進学して進路も声優が難し
ければ、アニメ制作のアシスタント志望のようです。ナオミは成績優秀で、
学校としてもぜひ進学してほしいですね。それでは、失礼します。
直:担任からは、そういう話で進んでるって。
美沙:わたし・聞いてたわ。ナオちゃんから日本人でいいよねって・・良いよって
言ったわ! 声優デビューも!夢の話だと思って・・そうなんだ、って・・
直:頼みますよ。担任の先生は、もうお父さんって呼んでたから・・・学校には、
ナオミがちゃんと話してるみたいだった。
直:ナオミ、日本人で良いんだな。
ナオミ:うん
直:お父さんで良いんだな。
ナオミ:どうしたの?
直:だから・・
美沙:わたしは、お婆ちゃんはダメ!美沙にしといて!
ナオミ:二人ともどうしたの?元々日本人だし直がお父さんだし、何かあったの?
変なの・・
直:・・あした役所行ってくるわ・・
ナオミ:あ、認知より養子縁組の方が日本の戸籍方だと手続きが簡単だよ。私が、
成人してからなら届け出だけで済むから・・役所行くなら住民登録だけで
いいと思う。
美沙:詳しいんだね・・・
直:そうするわ。
学校も問題ないと言ってくれているし、声優関連の仕事は、ほとんど自営業なので
労働ビザがあれば、直との親子関係の証明も不要。現在のままで問題なし。本人達
が問題なければ、認知しても養子縁組でも変わりはない。戸籍の文字にこだわるの
は、日本人だけなのだ。
ナオミは、高校でも声優課を専攻し、歌や演劇のクラブ活動で活躍した。高校時代
からアルバイトで声優の仕事にも参加するようになり、卒業後も日本で働くつもり
でいる。
Hiliは、アヤラの介護に時間がとれるように自宅マンションンに近い郵便局で事務
の仕事に就いた。演劇の指導や歌唱指導でレッスン料も入ってくるのでクラブの
ショーには出ていない。少しふっくらしてきてもうそろそろ裏方に回るだろう。
直:ナオミ、卒業したら一緒にイスラエルに帰ろう。
ナオミ:そうだね。ママが、クラブに籍があるうちにあそこで歌ってみたい。
ママがねバンドさんも居なくなるんだって、カラオケが増えて、お客さん
が、歌う時間が増えてきて、ショータイムは来年には止めになるんだって
ママも引退だって言ってた。最後に一緒に歌いたいな。
専門学校の授業もほとんど終わり卒業式を残すだけとなった。声優の仕事は、まだ
まだ駆け出しだが、小さな役をときどきもらえるようになった。名古屋の事務所に
所属し、先輩のマネージャーも兼務して撮影や録音について回っている。
豊川の自宅で
直:ナオミ、予定を立てないと卒業してからだと、仕事が忙しくて自由にならない
と思うけど・・
ナオミ:そうなんだけど、もうポチポチと仕事が入っちゃってて、まとまって休む
のは・・・卒業してから・・5月の連休ならレコーディングは予定しない
って言ってた。
美沙:連休なんて、今からチケット取らないと無理だって。
ナオミ:ゴールデンウィークって、何が金色なの?
直:・・?気持ち、サラリーマンの気持ち?
連休明けには帰ることになりそうだ。直斗は、Hiliとナオミと三人で会うのは、
初めてだ。ナオミより直斗のほうが待ち遠しい。写真では見ているが、出会った頃
の面影が残る大人の女性になったHiliと、家族として会うのは、どんなものだろう
と、考えていた。




