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【拝啓、天国のお祖母様へ】この度、貴女のかつて愛した人の孫息子様と恋に落ちました事をご報告致します。  作者: 秘翠 ミツキ


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62話


 いよいよ明日はレンブラントと約束したデートの日だ。

 

「どうしよう……」


 部屋の中は泥棒でも入ったのではないかという程散らかっている。


「絶対、こっちの可愛いドレスが良いに決まってるの!」

「いえ、ティアナ様にはこちらの上品なドレスがお似合いに決まってます!」


 かれこれ同じやり取りを一時間は続けているミアとハナに、ティアナはため息を吐く。

 デートなどするのは生まれて初めてでどうしたら良いのか分からず、ミアやハナに相談したまでは良かったが今は後悔をしている。

 二人はクローゼットをひっくり返し、ティアナが明日着て行くドレスを選び出したが互いに自分の意見を譲らずまるで決まらない。


(こんな時にモニカがいてくれたら……)


『暫くお暇を頂いても宜しいでしょうか』


 ユリウスの件で責任を感じたモニカは、あの後屋敷を出て行ってしまった。


『モニカ……帰って来るよね』

『私の帰る場所はこちらしかありませんから……。ただ少し頭を冷やして参ります』


 彼女がいなくなり、もう一ヶ月半くらいになる。最年長で纏め役だったモニカがいないとしっかり者のハナでさえ急に頼りなく感じてしまい、元々お調子者のミアは更に拍車が掛かっている。

 困ったものだと思うが、それよりもティアナは寂しさを感じていた。


 ティアナはもう一度ため息を吐くとスッと立ち上がり、クローゼットの中から自らドレスを手に取った。


「ティアナ様?」

「明日はこれを着て行くから、もうお仕舞い。遅いから私は先に寝るわ。二人はこの散らかった部屋を片付けてから休んでくれるかしら」


 笑顔でそう話すと、きょとんとするミアとは対照的にハナは不味いという表情で身を縮こませ「申し訳ございません」と消え入りそうな声で謝罪した。





ーー翌朝。


 かなり朝早く起きた筈が、準備に手間取ってしまい時間ギリギリになってしまった。

 ミアが寝坊をしたり、ミアが折角締めたコルセットの紐を緩めてしまったり、更にはお茶の入ったカップをミアが落として割ったりと慌ただしかった。幸いドレスには掛からなかったので胸を撫で下ろしたが、出掛ける前から少し疲れてしまった。



「お待たせ、ティアナ。遅くなってすまない」


 時間丁度にレンブラントが迎えに来た。

 彼は普段とは違いラフな恰好だったが、品があり何時もとはまた違った魅力を感じる。

 

(控えめに言って格好良過ぎる)


「はい、これ君に似合うと思って選んだんだ」

「ありがとうございます」


 赤い薔薇の花束を差し出され、ティアナははにかみながら受け取った。


「さあ、行こうか」

 

 彼はティアナの前に跪き手を取ると、歩き出す。

 二人が馬車に乗り込むと、ゆっくりと動き出した。





◆◆◆



 何時もの清楚でシンプルなデザインの装いではなく、レースやフリルが施された愛らしいドレスの彼女は控えめに言って世界一可愛い。まあ彼女なら何を着ようが可愛いに決まっている。

 ただやはり自分が送った装飾品は身に付けてはいなかった。その事だけは残念でならない。


「何処へ行くんですか」


 本当は彼女の隣に座りたい気持ちを抑え込み、向かい側に腰を下ろしたレンブラントをティアナは小首を傾げて見て来る。その愛らしさに、隣所か自分の膝の上に乗せて抱き締めたいと真面目に思う。


「先ずは美術館へ行こう。その後は国立図書館に行ってから、お昼にする予定だよ。午後は買い物に付き合って欲しいんだけど、良いかな?」


 クラウディウスからの提案で美術館へ、テオフィルからの提案で国立図書館へ、お昼はヘンリックお勧めの店へと行き、午後はロートレック家御用達の宝石店へと行くプランを立てた。

 少し詰め込み過ぎた気もするが、失敗をしたくない。美術館がダメなら図書館、それもダメならお洒落な店で食事と対策はバッチリだ。


「はい、勿論です。私はレンブラント様がご一緒なら何処でも嬉しいです」

「ティアナ……それ分かっててやってるの」

「?」


 ほんのりと頬を染め、上目遣いでそんな台詞をサラリと言ってのける。


「いや、何でもないよ」


(ダメだ……可愛過ぎて今日一日耐えらか分からない。悶え死ぬ……)

 


 




 



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