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【拝啓、天国のお祖母様へ】この度、貴女のかつて愛した人の孫息子様と恋に落ちました事をご報告致します。  作者: 秘翠 ミツキ


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49話


 ティアナを無事に救出した翌日。レンブラントはクラウディウス達と今回の件について執務室にて話し合っていた。


「偽花薬を購入し服用した婦人数名が亡くなったと報告が上がっている」

「冗談だよな」

「残念だが、事実だ。 彼女等は有力貴族の妻ばかりで、複数回に渡り薬を服用したと証言したとされている。 ”永遠の美”という甘美な誘惑に惑わされ手を出したらしいな」


 昨日の時点でユリウスは知っていたのだ。彼がクヌートを極刑と言っていた理由はこれだろう。

 但し有力貴族と言葉を濁すあたり、表向きの死因は病死など別のものに書き換えるのだと直ぐに分かった。そしてかなり上位の身分に違いない。幾ら騙した方が悪いとは言えど、体裁が悪過ぎるからだ。

 更に言えば、ゴーベル伯爵等の罪状が変わってくる。詐欺だけでは極刑にはならない。そうなると表向きは懲役や私財の没収、裏では極刑となり水面下で処分される。


「ゴーベル伯爵の本格的な取り調べはこれからだが、正直期待は出来そうにない」


 拘束したゴーベル伯爵はクヌート・メロー子爵から上手い儲け話があると言われ、場所の提供をしただけで、本当の主犯格はクヌートだったと一点張りで供述しているそうだ。


「仲介屋と呼ばれる人物と接触していたのも、彼だったと話している」

「死人に口無しですからね、実際はどうなんでしょうね。 罪を逃れる為の虚言かも知れません」


 テオフィルの言う通りだと思うが、こればかりはゴーベル伯爵が口を割らない以上真相は闇の中だ。


「ただもしもゴーベル伯爵の証言が事実だとすれば、仲介屋そのものの行方も実態すら掴めない今、これ以上何も出来ないだろう。 ティアナ嬢につけていた護衛も未だに行方が分からないしな。 それに……」


 一度態々言葉を切るとクラウディウスはレンブラントに視線を向けて来た。言いたい事は大体見当はつく。


「ティアナ嬢を攫った明白な理由も知れない」


 レンブラントにとって何より重要な事は、彼女の事だ。あの時クヌートが何か言い掛けたが、それを遮る様にしてユリウスは彼を切り裂いた。

 少なくても彼は何かを知っており、それを隠している。


「不明瞭な事ばかりで非常に不本意ではあるが、今回はこれで手を引かざるを得ない。 後の事は取り調べをしている騎士団が引き受ける事になっている。 以上だ」


 苦虫を潰した様な表情を浮かべ、クラウディウスは話を終わりにさせる。だがこんな曖昧な状態のままで終わらすなど、納得出来る筈がない。


「レンブラント、深追いはするな。 ティアナ嬢の事は気になるかも知れないが、ユリウスが絡んでくるとなると厄介だ。 彼は()()()の人間だからな」


 思いを見透かした様に先に釘を刺され、レンブラントはキツく唇を結ぶ。


「でもさ、ティアナ嬢がまさかあのユリウスの幼馴染なんてなぁ。 世間って狭いよな〜。 それに昨日の彼奴の笑顔見たかよ? 本当薄気味が悪かったな。 俺、全身鳥肌たった」

「彼の笑顔なんて絶滅危惧種並みに貴重ですからね。 天変地異が起こらないか心配になります」


 重苦しい空気を払拭しようと軽口を叩き笑うヘンリックとテオフィルとは裏腹に、レンブラントは顔を顰めた。

 昨日のティアナとユリウスを思い出し、無性に腹が立ってくる。

 二人は幼馴染だと言ったが、微笑む彼女とそれに応えるユリウスはまるで恋仲の様に見えた。当然の様に彼女の腰に手を回し、それを受け入れる彼女に良い知れぬ感情が沸き起こる。

 以前ミハエルに対して嫉妬をした事があったが、そんなものは比にならない。


「クラウディウス。 大丈夫、分かってるよ」


 まるで自分は彼女の一番の理解者であり互いに信頼し合っていると言わんばかりの態度だった。 

 幼馴染か何だかは知らないが、彼女の婚約者はこの自分だ。譲るつもりは微塵もない。

 

 

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